柔よく剛を制す

薬袋 藍(ミナイ ラン)

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第5章 自宅謹慎編

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杜補佐が王宮の廊下を歩いているとき、前を歩く二人の男の会話が耳に入ってきた。

「聞いたか、あの伯 秀英と容 景雲。
二階級昇進で、王から直々に特別恩賞を賜ったらしいぞ」
「ああ。なんでも人身売買の現場を抑えたらしいな」
「で、その特別恩賞は望む物を何でも贈与されるってことだったらしいんだが、二人は何を望んだと思う?」
「何だったんだ?」
「金だと。しかも大金。二人とも貴族のくせにやっぱり金が欲しいみたいだな」
「へぇ~、涼しい顔して卑しいんだな」

「お言葉ですが」

杜補佐は二人の会話のキリが良い所で話しかけた。
二人はまさか話しかけられると思っていなかったので、目を見開いて杜補佐を見た。

「二人が大金を望んだ理由はそのお金で人攫いに遭った人達をそれぞれの場所に帰すためです。また二人はそのお金で足らないようであれば、自分達の資金を出すとも言ってしました。真実を知ってもまだ卑しいと思いますか?」
「…」

秀英と景雲の上司から聞かされたとあっては真実であると思わざるをえない。
二人はぐうの音もでなかった。


この話を杜補佐自身が聞いたのはつい三日前だった。
王との謁見を終えたあと、二人はいつもの仕事場に戻ってきていた。
二人のもとへと、仕事に行くついでに杜補佐は寄った。

「お疲れ様。二人は王に何を望んだんだい?」
「お疲れ様です。金を望みました」
「え?」

秀英がさらっと答えたので、つい杜補佐は聞き返してしまった。

「お金を望んだのかい?なんでまた…他にも色々あっただろうに」
「人攫いに遭った人達を元の場所に戻すために必要だったんすよ。せっかく解放されたのに路頭に迷って命を落とすか、結局奴隷になるかしか選択肢がないから。それじゃ意味がない」
「もし王から資金をもらえなければ、自分達で出すつもりでした」
「そうだったのか。それは無粋なことを聞いてしまったね。でもどうしてそこまでしようと思ったんだ?」

杜補佐が尋ねると二人は少しの間考え、秀英が答えた。

「晏寿がもしこの仕事に携わっていたら、きっとこうしていたと思うんです」
「そうだな。あいつなら、金がなくてもどうにかしようとしたはず」

二人のふっとした笑みを見て、杜補佐は目を見開いた。だが穏やかな気持ちになり目を細める。
秀英と景雲にとって晏寿の存在は絶大で、互いに影響を受けていることを感じた。

そしてその晏寿はというと。
仕事の内容を京雅に話してしまった罰として、自宅謹慎を受けていた。
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