66 / 133
第5章 自宅謹慎編
1
しおりを挟む
杜補佐が王宮の廊下を歩いているとき、前を歩く二人の男の会話が耳に入ってきた。
「聞いたか、あの伯 秀英と容 景雲。
二階級昇進で、王から直々に特別恩賞を賜ったらしいぞ」
「ああ。なんでも人身売買の現場を抑えたらしいな」
「で、その特別恩賞は望む物を何でも贈与されるってことだったらしいんだが、二人は何を望んだと思う?」
「何だったんだ?」
「金だと。しかも大金。二人とも貴族のくせにやっぱり金が欲しいみたいだな」
「へぇ~、涼しい顔して卑しいんだな」
「お言葉ですが」
杜補佐は二人の会話のキリが良い所で話しかけた。
二人はまさか話しかけられると思っていなかったので、目を見開いて杜補佐を見た。
「二人が大金を望んだ理由はそのお金で人攫いに遭った人達をそれぞれの場所に帰すためです。また二人はそのお金で足らないようであれば、自分達の資金を出すとも言ってしました。真実を知ってもまだ卑しいと思いますか?」
「…」
秀英と景雲の上司から聞かされたとあっては真実であると思わざるをえない。
二人はぐうの音もでなかった。
この話を杜補佐自身が聞いたのはつい三日前だった。
王との謁見を終えたあと、二人はいつもの仕事場に戻ってきていた。
二人のもとへと、仕事に行くついでに杜補佐は寄った。
「お疲れ様。二人は王に何を望んだんだい?」
「お疲れ様です。金を望みました」
「え?」
秀英がさらっと答えたので、つい杜補佐は聞き返してしまった。
「お金を望んだのかい?なんでまた…他にも色々あっただろうに」
「人攫いに遭った人達を元の場所に戻すために必要だったんすよ。せっかく解放されたのに路頭に迷って命を落とすか、結局奴隷になるかしか選択肢がないから。それじゃ意味がない」
「もし王から資金をもらえなければ、自分達で出すつもりでした」
「そうだったのか。それは無粋なことを聞いてしまったね。でもどうしてそこまでしようと思ったんだ?」
杜補佐が尋ねると二人は少しの間考え、秀英が答えた。
「晏寿がもしこの仕事に携わっていたら、きっとこうしていたと思うんです」
「そうだな。あいつなら、金がなくてもどうにかしようとしたはず」
二人のふっとした笑みを見て、杜補佐は目を見開いた。だが穏やかな気持ちになり目を細める。
秀英と景雲にとって晏寿の存在は絶大で、互いに影響を受けていることを感じた。
そしてその晏寿はというと。
仕事の内容を京雅に話してしまった罰として、自宅謹慎を受けていた。
「聞いたか、あの伯 秀英と容 景雲。
二階級昇進で、王から直々に特別恩賞を賜ったらしいぞ」
「ああ。なんでも人身売買の現場を抑えたらしいな」
「で、その特別恩賞は望む物を何でも贈与されるってことだったらしいんだが、二人は何を望んだと思う?」
「何だったんだ?」
「金だと。しかも大金。二人とも貴族のくせにやっぱり金が欲しいみたいだな」
「へぇ~、涼しい顔して卑しいんだな」
「お言葉ですが」
杜補佐は二人の会話のキリが良い所で話しかけた。
二人はまさか話しかけられると思っていなかったので、目を見開いて杜補佐を見た。
「二人が大金を望んだ理由はそのお金で人攫いに遭った人達をそれぞれの場所に帰すためです。また二人はそのお金で足らないようであれば、自分達の資金を出すとも言ってしました。真実を知ってもまだ卑しいと思いますか?」
「…」
秀英と景雲の上司から聞かされたとあっては真実であると思わざるをえない。
二人はぐうの音もでなかった。
この話を杜補佐自身が聞いたのはつい三日前だった。
王との謁見を終えたあと、二人はいつもの仕事場に戻ってきていた。
二人のもとへと、仕事に行くついでに杜補佐は寄った。
「お疲れ様。二人は王に何を望んだんだい?」
「お疲れ様です。金を望みました」
「え?」
秀英がさらっと答えたので、つい杜補佐は聞き返してしまった。
「お金を望んだのかい?なんでまた…他にも色々あっただろうに」
「人攫いに遭った人達を元の場所に戻すために必要だったんすよ。せっかく解放されたのに路頭に迷って命を落とすか、結局奴隷になるかしか選択肢がないから。それじゃ意味がない」
「もし王から資金をもらえなければ、自分達で出すつもりでした」
「そうだったのか。それは無粋なことを聞いてしまったね。でもどうしてそこまでしようと思ったんだ?」
杜補佐が尋ねると二人は少しの間考え、秀英が答えた。
「晏寿がもしこの仕事に携わっていたら、きっとこうしていたと思うんです」
「そうだな。あいつなら、金がなくてもどうにかしようとしたはず」
二人のふっとした笑みを見て、杜補佐は目を見開いた。だが穏やかな気持ちになり目を細める。
秀英と景雲にとって晏寿の存在は絶大で、互いに影響を受けていることを感じた。
そしてその晏寿はというと。
仕事の内容を京雅に話してしまった罰として、自宅謹慎を受けていた。
0
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
無能妃候補は辞退したい
水綴(ミツヅリ)
ファンタジー
貴族の嗜み・教養がとにかく身に付かず、社交会にも出してもらえない無能侯爵令嬢メイヴィス・ラングラーは、死んだ姉の代わりに15歳で王太子妃候補として王宮へ迎え入れられる。
しかし王太子サイラスには周囲から正妃最有力候補と囁かれる公爵令嬢クリスタがおり、王太子妃候補とは名ばかりの茶番レース。
帰る場所のないメイヴィスは、サイラスとクリスタが正式に婚約を発表する3年後までひっそりと王宮で過ごすことに。
誰もが不出来な自分を見下す中、誰とも関わりたくないメイヴィスはサイラスとも他の王太子妃候補たちとも距離を取るが……。
果たしてメイヴィスは王宮を出られるのか?
誰にも愛されないひとりぼっちの無気力令嬢が愛を得るまでの話。
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」にも掲載しています。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
老聖女の政略結婚
那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。
六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。
しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。
相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。
子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。
穏やかな余生か、嵐の老後か――
四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。
自由を愛する妖精姫と、番にすべてを捧げた竜人王子〜すれ違いと絆の先に、恋を知る〜
来栖れいな
ファンタジー
妖精女王と精霊王の間に生まれた特別な存在――セレスティア。
自由を愛し、気ままに生きる彼女のもとに現れたのは、竜人族の王子・サイファルト。
「お前は俺の番だ」
番という名の誓いにすべてを捧げた彼は、王族の地位も未来も捨てて森に現れた。
一方のセレスティアは、まだ“番”の意味すら知らない。
執着と守護。すれ違いと絆。
――これは、ひとりの妖精姫が“特別”に気づいていく物語。
甘さ控えめ、でも確かに溺愛。
異種族の距離を越えて紡がれる、成長と守護のファンタジー。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
三歩先行くサンタさん ~トレジャーハンターは幼女にごまをする~
杵築しゅん
ファンタジー
戦争で父を亡くしたサンタナリア2歳は、母や兄と一緒に父の家から追い出され、母の実家であるファイト子爵家に身を寄せる。でも、そこも安住の地ではなかった。
3歳の職業選別で【過去】という奇怪な職業を授かったサンタナリアは、失われた超古代高度文明紀に生きた守護霊である魔法使いの能力を受け継ぐ。
家族には内緒で魔法の練習をし、古代遺跡でトレジャーハンターとして活躍することを夢見る。
そして、新たな家門を興し母と兄を養うと決心し奮闘する。
こっそり古代遺跡に潜っては、ピンチになったトレジャーハンターを助けるサンタさん。
身分差も授かった能力の偏見も投げ飛ばし、今日も元気に三歩先を行く。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる