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第5章 自宅謹慎編
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晏寿は謹慎期間中、ほとんど秀英からの縁談のことを考えていた。
しかし良い結論は出ず、ほとほと困っていた。
そしていつまでも保留にしておくわけにもいかず、今の現状を文にするという方法を思いついたのだった。
その文は晏寿の謹慎が解ける前日に秀英のもとへ届いた。
秀英は自室でそれを緊張しながらも、読み解いていった。
『秀英へ
先日の私への求婚は、とても嬉しく思っています。
私のような落ちぶれた家の娘など喜んで嫁に迎え入れてくれる人はいないと思っていたから尚更です。
けれど、この間も言ったとおり簡単には気持ちを受け取ることはできません。
理由は二つ。
一つ目は、仕事をまだ続けたい。
最初は縁談から逃げるために官吏を受けたけれど、その官吏という仕事が楽しくて、辞めるのが惜しいです。
二つ目は、私自身、あなたのことをどう思っているかわからないからです。
勿論、秀英のことは尊敬もしているし、とても大事な人だと思っています。
けれど景雲とどこが違うかと問われれば、答える自信がありません。
私の我儘に秀英を振り回したくない。
あなたなら、私でなければならない理由はないはずです。
だから、もっと良い縁談があるのならそちらを優先してください。
私のことを好いてくれてありがとう。
晏寿』
読み終えると秀英はいてもたってもいられず、夕刻であるにも関わらず、屋敷を飛び出した。
晏寿の家まで形振り構わず、走る。
途中、道行く人達が不思議そうに秀英を見ていたが、全く気づかなかった。
そして、晏寿の家に着くと、門の所から叫んだ。
「晏寿!」
夕餉の用意をしていた晏寿はその声に驚き、持っていた箸を落とした。
玄関先へと急いで向かい、肩で息をしている秀英に晏寿は更に驚く。
「秀英っ、どうし」
「俺はっ」
晏寿の言葉を遮って喋り出す秀英。
その気迫に負けて、晏寿は黙り込んでしまった。
「俺は、晏寿以外を娶る気はない!
それが何年経っても、何十年経っても、変わりはない。たとえ歳が六十、七十となっていても、その時に晏寿が嫁になる気になったのなら娶る!」
いつも、物事を顔色一つ変えずに淡々とこなす秀英が、額から汗を流し、荒い呼吸をし、大声をあげている。
普段と違う秀英に晏寿は絶句する。
しかし、自分のためにここまでしてくれる秀英に対して、じわりと胸が熱くなる。
ここまでされて心が動かないほど、晏寿は冷めてはいなかった。
「…っ」
晏寿の瞳からポロポロと涙が溢れる。
晏寿の涙を見て、秀英はようやく冷静さを取り戻して晏寿に近づく。
「晏寿…?泣くほど嫌だったか…?」
「違うの…秀英、優柔不断で勝手に断ろうとしてごめんね。ちゃんと、秀英の気持ちに応えられるよう頑張るから」
「頑張らなくていい。晏寿はそのままでいい。振り向いてもらえるよう俺が努力するだけだ」
頑張らなくてもいいと言われたが、秀英の気持ちに応えたいと晏寿は強く思った。
時間はかかるかもしれないが、一つ一つ解決していこうと決めたのだった。
しかし良い結論は出ず、ほとほと困っていた。
そしていつまでも保留にしておくわけにもいかず、今の現状を文にするという方法を思いついたのだった。
その文は晏寿の謹慎が解ける前日に秀英のもとへ届いた。
秀英は自室でそれを緊張しながらも、読み解いていった。
『秀英へ
先日の私への求婚は、とても嬉しく思っています。
私のような落ちぶれた家の娘など喜んで嫁に迎え入れてくれる人はいないと思っていたから尚更です。
けれど、この間も言ったとおり簡単には気持ちを受け取ることはできません。
理由は二つ。
一つ目は、仕事をまだ続けたい。
最初は縁談から逃げるために官吏を受けたけれど、その官吏という仕事が楽しくて、辞めるのが惜しいです。
二つ目は、私自身、あなたのことをどう思っているかわからないからです。
勿論、秀英のことは尊敬もしているし、とても大事な人だと思っています。
けれど景雲とどこが違うかと問われれば、答える自信がありません。
私の我儘に秀英を振り回したくない。
あなたなら、私でなければならない理由はないはずです。
だから、もっと良い縁談があるのならそちらを優先してください。
私のことを好いてくれてありがとう。
晏寿』
読み終えると秀英はいてもたってもいられず、夕刻であるにも関わらず、屋敷を飛び出した。
晏寿の家まで形振り構わず、走る。
途中、道行く人達が不思議そうに秀英を見ていたが、全く気づかなかった。
そして、晏寿の家に着くと、門の所から叫んだ。
「晏寿!」
夕餉の用意をしていた晏寿はその声に驚き、持っていた箸を落とした。
玄関先へと急いで向かい、肩で息をしている秀英に晏寿は更に驚く。
「秀英っ、どうし」
「俺はっ」
晏寿の言葉を遮って喋り出す秀英。
その気迫に負けて、晏寿は黙り込んでしまった。
「俺は、晏寿以外を娶る気はない!
それが何年経っても、何十年経っても、変わりはない。たとえ歳が六十、七十となっていても、その時に晏寿が嫁になる気になったのなら娶る!」
いつも、物事を顔色一つ変えずに淡々とこなす秀英が、額から汗を流し、荒い呼吸をし、大声をあげている。
普段と違う秀英に晏寿は絶句する。
しかし、自分のためにここまでしてくれる秀英に対して、じわりと胸が熱くなる。
ここまでされて心が動かないほど、晏寿は冷めてはいなかった。
「…っ」
晏寿の瞳からポロポロと涙が溢れる。
晏寿の涙を見て、秀英はようやく冷静さを取り戻して晏寿に近づく。
「晏寿…?泣くほど嫌だったか…?」
「違うの…秀英、優柔不断で勝手に断ろうとしてごめんね。ちゃんと、秀英の気持ちに応えられるよう頑張るから」
「頑張らなくていい。晏寿はそのままでいい。振り向いてもらえるよう俺が努力するだけだ」
頑張らなくてもいいと言われたが、秀英の気持ちに応えたいと晏寿は強く思った。
時間はかかるかもしれないが、一つ一つ解決していこうと決めたのだった。
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