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オンラインパーティー
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翌日は何もすることがなく、家族にテレビを繋いだら合格を祝われた。ちょうど私がいないのに昼間からパーティーを開いていたらしい。壁に『俊彦卒検合格おめでとう』と書かれた横断幕が貼られ、ケーキやご馳走がテーブルを彩っている。
『おお俊彦、卒検合格おめでとう! お前ならできると思ってたよ、ようやく肩の荷が降りたろう? コングラチュレーション!』
『おめでとう! 本当に良かったわ、私もあなたを育てた甲斐があった。今までお疲れ様』
パーティーハットを被った両親がクラッカーを鳴らすと、中からカラフルなテープが飛び出した。まるで子どもの誕生日会だと思いつつ胸が温かくなった。
「ありがとう。桃太郎は?」
『桃太郎にも犬用のケーキを買ってやったんだが、半分も食べないで今は台所で湯掻いたササミを食べてるよ』
「そっか、桃太郎にもよろしく伝えといてくれ」
『ちゃんと伝えたわ。あっ、今楓くんが連れてきたわ』
楓に連れられてきた桃太郎の顔が画面にアップになる。ササミを食べ終わるところなのか口をもぐもぐさせている。下痢をしたのが嘘のように元気そうだ。桃太郎の顔を見たらまた明るいエネルギーが漲ってきた。
「桃太郎、元気か? 私は遂に卒検に合格したぞ。教官が気難しい奴で、運転中想定外のことがいくつもあったけど、何とか免許が取れそうだ。辛いことがあるたびお前の顔を思い出して頑張れた。お前のおかげだぞ、桃太郎!」
私の言葉を理解したのか、桃太郎はわんっと力強く鳴いた。桃太郎もおめでとうと言ってくれているような気がして、胸がいっぱいになる。
「あと1週間くらいここで過ごしたら家に帰るからな。それまで楓くんや家族の言うことをよく聞いて、良い子にしてるんだぞ」
わんっ
桃太郎がまた吠える。
そこに燕と南とナンシーが現れて、TV電話の向こうの家族と話し始めた。
「可愛い~桃太郎! わんわんっ」
燕に声をかけられた桃太郎は嬉しそうに舌を出した。
『俊彦、この子たちに変なことしてないでしょうね? あなたが真面目だってことは知ってるけど、警察沙汰になるようなことはやめなさいよ』
「分かってるよ、母さん。彼女たちは仲間だし、そういう間柄ではないから」
親にまで警察というワードを出される私って一体。
遊星はそれから二日間みっちりと運転を練習し、遂に二度目の卒検の日を迎えた。
遊星は上手くやれているだろうか。後ろから煽ってくるような車や、嫌がらせをしてくる車がいないといい。できるなら皆で笑顔でこの島を出たい。
夕方遊星の乗ったマイクロバスが民宿の前に到着した。彼にメールで今帰ってくるとだけ伝えられた私は、他のメンバーにも教えて皆で民宿前で待機していた。
マイクロバスから降りてきた遊星は、暗い顔をして俯いていた。
もしや、また——。
悪い想像をしかけたとき、遊星が顔をあげてにかっと笑い横ピースをした。
「合格したよ~ん!」
「やった、よかった!!」
私たちはその場で遊星を胴上げした。私も高岡も泣いていた。それを見ていた律子さんも泣いていた。他の女子メンバーの目にも涙が浮かんでいた。甲子園で優勝した投手のように胴上げされた遊星は、晴れやかな顔をしていた。
『おお俊彦、卒検合格おめでとう! お前ならできると思ってたよ、ようやく肩の荷が降りたろう? コングラチュレーション!』
『おめでとう! 本当に良かったわ、私もあなたを育てた甲斐があった。今までお疲れ様』
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「ありがとう。桃太郎は?」
『桃太郎にも犬用のケーキを買ってやったんだが、半分も食べないで今は台所で湯掻いたササミを食べてるよ』
「そっか、桃太郎にもよろしく伝えといてくれ」
『ちゃんと伝えたわ。あっ、今楓くんが連れてきたわ』
楓に連れられてきた桃太郎の顔が画面にアップになる。ササミを食べ終わるところなのか口をもぐもぐさせている。下痢をしたのが嘘のように元気そうだ。桃太郎の顔を見たらまた明るいエネルギーが漲ってきた。
「桃太郎、元気か? 私は遂に卒検に合格したぞ。教官が気難しい奴で、運転中想定外のことがいくつもあったけど、何とか免許が取れそうだ。辛いことがあるたびお前の顔を思い出して頑張れた。お前のおかげだぞ、桃太郎!」
私の言葉を理解したのか、桃太郎はわんっと力強く鳴いた。桃太郎もおめでとうと言ってくれているような気がして、胸がいっぱいになる。
「あと1週間くらいここで過ごしたら家に帰るからな。それまで楓くんや家族の言うことをよく聞いて、良い子にしてるんだぞ」
わんっ
桃太郎がまた吠える。
そこに燕と南とナンシーが現れて、TV電話の向こうの家族と話し始めた。
「可愛い~桃太郎! わんわんっ」
燕に声をかけられた桃太郎は嬉しそうに舌を出した。
『俊彦、この子たちに変なことしてないでしょうね? あなたが真面目だってことは知ってるけど、警察沙汰になるようなことはやめなさいよ』
「分かってるよ、母さん。彼女たちは仲間だし、そういう間柄ではないから」
親にまで警察というワードを出される私って一体。
遊星はそれから二日間みっちりと運転を練習し、遂に二度目の卒検の日を迎えた。
遊星は上手くやれているだろうか。後ろから煽ってくるような車や、嫌がらせをしてくる車がいないといい。できるなら皆で笑顔でこの島を出たい。
夕方遊星の乗ったマイクロバスが民宿の前に到着した。彼にメールで今帰ってくるとだけ伝えられた私は、他のメンバーにも教えて皆で民宿前で待機していた。
マイクロバスから降りてきた遊星は、暗い顔をして俯いていた。
もしや、また——。
悪い想像をしかけたとき、遊星が顔をあげてにかっと笑い横ピースをした。
「合格したよ~ん!」
「やった、よかった!!」
私たちはその場で遊星を胴上げした。私も高岡も泣いていた。それを見ていた律子さんも泣いていた。他の女子メンバーの目にも涙が浮かんでいた。甲子園で優勝した投手のように胴上げされた遊星は、晴れやかな顔をしていた。
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