16 / 55
7匹のいない家
しおりを挟む
昼過ぎに家に帰り外猫たちにご飯をあげ、仔猫たちと遊んでいたとき保護猫ボランティアの酒井さんから連絡が来た。
「ああ、凪砂ちゃん! どうも~真琴です! 例の盛岡の先生と連絡とれたのね。で、今家にいる猫ちゃんたちだけ先に手術しようと思うんだけど、どう?」
廊下で道子さんがぶつぶつ文句を言いながら片付けをしていたので、ドア越しに聞いてみたら「いいんじゃない? 早くやっちゃったほうが」と返事が来た。
「善二さんには確認取らなくていいでしょうか?」
「ジジイは今ワカメ仕事中だから声かけないほうがいいよ、あいつ仕事中はピリピリしてるから」
「いつもピリピリしてる気が……」
「反対はしないでしょ、こんな沢山タマが……いや、猫がいるんだから、一気にやるより小分けにしたほうがいいわよ」
というわけで、家にいるサンコ+仔猫たちとクリームツインズのみひと足先に避妊去勢手術をすることになった。
翌朝何も知らない仔猫4匹+サンコ+パステルツインズの2匹を、道子さんと善二さんと三人で手分けをして別々にキャリーに入れた。大半の子はちゅーるに釣られてあっさりはいってくれるが、抱っこなれしていないあさやけだけは唸って抵抗し逃げ回り、なかなか捕まらなかった。
「洗濯ネットに入れますか」
「ジジイはそんな繊細なものもってないから、家から持ってくるわ」
道子さんが大急ぎで洗濯ネットを持ってきてくれ、道子さんが本棚に上ったあさやけの身体をガシッと掴み、固定しているうちに素早くネットの中に入れた。あさやけはびゃ~、びゃ~と鳴いてばたついている。
あさやけをキャリーに入れ、猫たちの入ったキャリーを一階の居間に移動させる。仔猫たちとさんこはあまり重くないが、雄たちは重いし、キャリー内部で動くため階段を下りながら運ぶのが大変だ。
居間に移動させ少しして、真琴さんが迎えに来た。私と道子さん、善二さんの三人で、大声で鳴く猫たちをバケツリレーのように手渡しして車に乗せた。
「手術が失敗することはあるのか。つまり、死んでしまうようなことは?」
善二さんが神妙な顔で尋ねると、真琴さんは言葉を選びながら答えた。
「中には、麻酔が身体に合わないなどの理由で死んでしまう子もいますが、ごくわずかな確率です。少なくとも、盛岡の獣医さんに預けた子たちは皆無事に帰ってきていますよ」
「そうか……分かった。手間をかけてすまんが、よろしく頼む」
善二さんが頭を下げるのに合わせて、私たちも礼をした。善二さんが渡したお礼の入った封筒を真琴さんは最初受け取らなかったが、善二さんの強引さに負け申し訳なさそうに受け取った。
やがて7匹の乗った車は遠ざかって見えなくなった。
「ああ、凪砂ちゃん! どうも~真琴です! 例の盛岡の先生と連絡とれたのね。で、今家にいる猫ちゃんたちだけ先に手術しようと思うんだけど、どう?」
廊下で道子さんがぶつぶつ文句を言いながら片付けをしていたので、ドア越しに聞いてみたら「いいんじゃない? 早くやっちゃったほうが」と返事が来た。
「善二さんには確認取らなくていいでしょうか?」
「ジジイは今ワカメ仕事中だから声かけないほうがいいよ、あいつ仕事中はピリピリしてるから」
「いつもピリピリしてる気が……」
「反対はしないでしょ、こんな沢山タマが……いや、猫がいるんだから、一気にやるより小分けにしたほうがいいわよ」
というわけで、家にいるサンコ+仔猫たちとクリームツインズのみひと足先に避妊去勢手術をすることになった。
翌朝何も知らない仔猫4匹+サンコ+パステルツインズの2匹を、道子さんと善二さんと三人で手分けをして別々にキャリーに入れた。大半の子はちゅーるに釣られてあっさりはいってくれるが、抱っこなれしていないあさやけだけは唸って抵抗し逃げ回り、なかなか捕まらなかった。
「洗濯ネットに入れますか」
「ジジイはそんな繊細なものもってないから、家から持ってくるわ」
道子さんが大急ぎで洗濯ネットを持ってきてくれ、道子さんが本棚に上ったあさやけの身体をガシッと掴み、固定しているうちに素早くネットの中に入れた。あさやけはびゃ~、びゃ~と鳴いてばたついている。
あさやけをキャリーに入れ、猫たちの入ったキャリーを一階の居間に移動させる。仔猫たちとさんこはあまり重くないが、雄たちは重いし、キャリー内部で動くため階段を下りながら運ぶのが大変だ。
居間に移動させ少しして、真琴さんが迎えに来た。私と道子さん、善二さんの三人で、大声で鳴く猫たちをバケツリレーのように手渡しして車に乗せた。
「手術が失敗することはあるのか。つまり、死んでしまうようなことは?」
善二さんが神妙な顔で尋ねると、真琴さんは言葉を選びながら答えた。
「中には、麻酔が身体に合わないなどの理由で死んでしまう子もいますが、ごくわずかな確率です。少なくとも、盛岡の獣医さんに預けた子たちは皆無事に帰ってきていますよ」
「そうか……分かった。手間をかけてすまんが、よろしく頼む」
善二さんが頭を下げるのに合わせて、私たちも礼をした。善二さんが渡したお礼の入った封筒を真琴さんは最初受け取らなかったが、善二さんの強引さに負け申し訳なさそうに受け取った。
やがて7匹の乗った車は遠ざかって見えなくなった。
10
あなたにおすすめの小説
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
冷遇王妃はときめかない
あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。
だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
✿ 私は彼のことが好きなのに、彼は私なんかよりずっと若くてきれいでスタイルの良い女が好きらしい
設楽理沙
ライト文芸
累計ポイント110万ポイント超えました。皆さま、ありがとうございます。❀
結婚後、2か月足らずで夫の心変わりを知ることに。
結婚前から他の女性と付き合っていたんだって。
それならそうと、ちゃんと話してくれていれば、結婚なんて
しなかった。
呆れた私はすぐに家を出て自立の道を探すことにした。
それなのに、私と別れたくないなんて信じられない
世迷言を言ってくる夫。
だめだめ、信用できないからね~。
さようなら。
*******.✿..✿.*******
◇|日比野滉星《ひびのこうせい》32才 会社員
◇ 日比野ひまり 32才
◇ 石田唯 29才 滉星の同僚
◇新堂冬也 25才 ひまりの転職先の先輩(鉄道会社)
2025.4.11 完結 25649字
雨上がりの虹と
瀬崎由美
ライト文芸
大学受験が終わってすぐ、父が再婚したいと言い出した。
相手の連れ子は小学生の女の子。新しくできた妹は、おとなしくて人見知り。
まだ家族としてイマイチ打ち解けられないでいるのに、父に転勤の話が出てくる。
新しい母はついていくつもりで自分も移動願いを出し、まだ幼い妹を含めた三人で引っ越すつもりでいたが……。
2年間限定で始まった、血の繋がらない妹との二人暮らし。
気を使い過ぎて何でも我慢してしまう妹と、まだ十代なのに面倒見の良すぎる姉。
一人っ子同士でぎこちないながらも、少しずつ縮まっていく姉妹の距離。
★第7回ライト文芸大賞で奨励賞をいただきました。
靴屋の娘と三人のお兄様
こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!?
※小説家になろうにも投稿しています。
🥕おしどり夫婦として12年間の結婚生活を過ごしてきたが一波乱あり、妻は夫を誰かに譲りたくなるのだった。
設楽理沙
ライト文芸
☘ 累計ポイント/ 190万pt 超えました。ありがとうございます。
―― 備忘録 ――
第8回ライト文芸大賞では大賞2位ではじまり2位で終了。 最高 57,392 pt
〃 24h/pt-1位ではじまり2位で終了。 最高 89,034 pt
◇ ◇ ◇ ◇
紳士的でいつだって私や私の両親にやさしくしてくれる
素敵な旦那さま・・だと思ってきたのに。
隠された夫の一面を知った日から、眞奈の苦悩が
始まる。
苦しくて、悲しくてもののすごく惨めで・・
消えてしまいたいと思う眞奈は小さな子供のように
大きな声で泣いた。
泣きながらも、よろけながらも、気がつけば
大地をしっかりと踏みしめていた。
そう、立ち止まってなんていられない。
☆-★-☆-★+☆-★-☆-★+☆-★-☆-★
2025.4.19☑~
さようならの定型文~身勝手なあなたへ
宵森みなと
恋愛
「好きな女がいる。君とは“白い結婚”を——」
――それは、夢にまで見た結婚式の初夜。
額に誓いのキスを受けた“その夜”、彼はそう言った。
涙すら出なかった。
なぜなら私は、その直前に“前世の記憶”を思い出したから。
……よりによって、元・男の人生を。
夫には白い結婚宣言、恋も砕け、初夜で絶望と救済で、目覚めたのは皮肉にも、“現実”と“前世”の自分だった。
「さようなら」
だって、もう誰かに振り回されるなんて嫌。
慰謝料もらって悠々自適なシングルライフ。
別居、自立して、左団扇の人生送ってみせますわ。
だけど元・夫も、従兄も、世間も――私を放ってはくれないみたい?
「……何それ、私の人生、まだ波乱あるの?」
はい、あります。盛りだくさんで。
元・男、今・女。
“白い結婚からの離縁”から始まる、人生劇場ここに開幕。
-----『白い結婚の行方』シリーズ -----
『白い結婚の行方』の物語が始まる、前のお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる