111 / 151
第六章 第三次・召喚勇者
111.『暴走』した者たち
しおりを挟む
Sランク六人が死亡。それを覆せるスキルを持った雫川実里と、佐々木千代が投降。残された第三次召喚勇者は、Sランク達の戦線離脱による戦意喪失で、この戦いは幕を閉じた。
しかし、直接的な戦いは終わっても、この事件はまだ終わらない。
***
――戦いの終わった日の夜、リディエ前線基地。その一室で、手足を拘束され、身動きの取れない状態で座る二人がいた。対する、褐色肌の女性、レイン・クディアは――
「さて。戦意は無いという事は理解した。しかし、納得するに値する話は聞けていない。……あの時の話の詳細を聞かせてもらおうか。……ああ、それはもう外そう」
二人は直接的な戦力ではないし、不可視化のスキルは厄介ではあるが、逃げ出そうという素振りもないので拘束具は外すことにした。
そもそも他のSランク達の遺体は、既に二人の知らない場所へと埋めてある。遺体そのものが無ければ蘇生は不可能なのだから、今更拘束を続ける意味はないのだ。
さらに、他の第三次召喚勇者も、前線基地の地下室に身柄を確保している。そもそも、元は役所のこの建物に地下牢なんてあるはずもないので、地下室と言ってもただの倉庫ではあるが、見張りも立たせているので安心だろう。なので、レインはゆっくりと二人から話を聞くことにする。
――ガチャリ! と、レインは一つ一つ鍵を開け、拘束具を外していく。拘束具から解き放たれ、久々の自由の身を手に入れた二人は、逃げる素振りも見せずに話し始める。
「そもそも、こんな騒動を起こそうとしたのも、私以外のSランクたちが暴走した結果です」
――帰る方法が無い事を、うっかり話してしまったドルニア王国は、そこを突き詰められ、やがて混乱に。
『こんな事をしたって、帰れる訳じゃないのに……どうしてこんなひどい事を――』
『アナタは悔しくないのかしら? 勝手に呼び出され、使われて――アタシは許せない。だから復讐する。自分で呼び出した召喚勇者だかに滅ぼされるのはどんな気分なのかしらねぇー?』
『もう決まった事だ。この決まった方針を曲げる事は出来ない』
『めんどくせェ奴だなァ……テメェはSランクだけどよ、他のSランクがいねえと何もできねえんだろ? だったら他の雑魚共と一緒に黙って言う事を聞いてろよ』
『なーに良い子ちゃんぶってんのー? ホント空気壊れるわ~』
『黙って従っておけよ。結局、この世界から帰る手っ取り早い方法はこの力で解決する方法ただ一つだろ』
『結局、この世界で殺したって、こっちには関係のないことでしょー?』
『…………』
――圧倒的な力を得た彼らは、紛れもない現実なのに。この世界をゲーム感覚で。ただ腹が立ったから、その力を振るう。
力を持たない、生き返らせるしか能の無い私は――止める事が出来なかった。
ただ、見ているだけしか。従う事しか出来なかった。
他の、Sランクではないみんなも同じ気持ちだったはず。強大な力を手にした彼らの暴走を、ただ見ている事しか出来なかった。従うしかなかった。――あの力を手にした彼らは、狂っていたからだ。歯向かえば殺されるかもしれない。だから、従うしかなかった。
「そんな、見ている事しか出来なかった私たちにも、チャンスが巡ってきたんです」
今度はスキル『不可視化』を持つ女性、佐々木千代が口を開く。
「暴走したSランクは全滅して、私たちは彼らの圧力から解放された。あなた方が、彼らを止めてくれたから――こうして、私たちは動くことができた。……クラスメートを見殺しにしたっていう罪悪感もあるけれど、実里ちゃんと選んだこの道を私は後悔していません」
レインはあの時の涙と、その言葉を聞いて確信する。そして、彼女は――
「アタシも、アイツの暴走を見ているだけだった。結果、お前達はこの世界に召喚され、巻き込んでしまう事になった。――本当に、申し訳ない」
レインも、ウィッツの暴走――迷走という方が正しいのだろうか。どちらにせよ、彼の独断専行を止める事が出来なかった。彼は決して、悪意をもってした事ではないのだろう。……だが、立場としては――レインも、二人も、そこまで変わりはないのかもしれない。
しかし、直接的な戦いは終わっても、この事件はまだ終わらない。
***
――戦いの終わった日の夜、リディエ前線基地。その一室で、手足を拘束され、身動きの取れない状態で座る二人がいた。対する、褐色肌の女性、レイン・クディアは――
「さて。戦意は無いという事は理解した。しかし、納得するに値する話は聞けていない。……あの時の話の詳細を聞かせてもらおうか。……ああ、それはもう外そう」
二人は直接的な戦力ではないし、不可視化のスキルは厄介ではあるが、逃げ出そうという素振りもないので拘束具は外すことにした。
そもそも他のSランク達の遺体は、既に二人の知らない場所へと埋めてある。遺体そのものが無ければ蘇生は不可能なのだから、今更拘束を続ける意味はないのだ。
さらに、他の第三次召喚勇者も、前線基地の地下室に身柄を確保している。そもそも、元は役所のこの建物に地下牢なんてあるはずもないので、地下室と言ってもただの倉庫ではあるが、見張りも立たせているので安心だろう。なので、レインはゆっくりと二人から話を聞くことにする。
――ガチャリ! と、レインは一つ一つ鍵を開け、拘束具を外していく。拘束具から解き放たれ、久々の自由の身を手に入れた二人は、逃げる素振りも見せずに話し始める。
「そもそも、こんな騒動を起こそうとしたのも、私以外のSランクたちが暴走した結果です」
――帰る方法が無い事を、うっかり話してしまったドルニア王国は、そこを突き詰められ、やがて混乱に。
『こんな事をしたって、帰れる訳じゃないのに……どうしてこんなひどい事を――』
『アナタは悔しくないのかしら? 勝手に呼び出され、使われて――アタシは許せない。だから復讐する。自分で呼び出した召喚勇者だかに滅ぼされるのはどんな気分なのかしらねぇー?』
『もう決まった事だ。この決まった方針を曲げる事は出来ない』
『めんどくせェ奴だなァ……テメェはSランクだけどよ、他のSランクがいねえと何もできねえんだろ? だったら他の雑魚共と一緒に黙って言う事を聞いてろよ』
『なーに良い子ちゃんぶってんのー? ホント空気壊れるわ~』
『黙って従っておけよ。結局、この世界から帰る手っ取り早い方法はこの力で解決する方法ただ一つだろ』
『結局、この世界で殺したって、こっちには関係のないことでしょー?』
『…………』
――圧倒的な力を得た彼らは、紛れもない現実なのに。この世界をゲーム感覚で。ただ腹が立ったから、その力を振るう。
力を持たない、生き返らせるしか能の無い私は――止める事が出来なかった。
ただ、見ているだけしか。従う事しか出来なかった。
他の、Sランクではないみんなも同じ気持ちだったはず。強大な力を手にした彼らの暴走を、ただ見ている事しか出来なかった。従うしかなかった。――あの力を手にした彼らは、狂っていたからだ。歯向かえば殺されるかもしれない。だから、従うしかなかった。
「そんな、見ている事しか出来なかった私たちにも、チャンスが巡ってきたんです」
今度はスキル『不可視化』を持つ女性、佐々木千代が口を開く。
「暴走したSランクは全滅して、私たちは彼らの圧力から解放された。あなた方が、彼らを止めてくれたから――こうして、私たちは動くことができた。……クラスメートを見殺しにしたっていう罪悪感もあるけれど、実里ちゃんと選んだこの道を私は後悔していません」
レインはあの時の涙と、その言葉を聞いて確信する。そして、彼女は――
「アタシも、アイツの暴走を見ているだけだった。結果、お前達はこの世界に召喚され、巻き込んでしまう事になった。――本当に、申し訳ない」
レインも、ウィッツの暴走――迷走という方が正しいのだろうか。どちらにせよ、彼の独断専行を止める事が出来なかった。彼は決して、悪意をもってした事ではないのだろう。……だが、立場としては――レインも、二人も、そこまで変わりはないのかもしれない。
0
あなたにおすすめの小説
防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました
かにくくり
ファンタジー
魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。
しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。
しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。
勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。
そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。
相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。
※小説家になろうにも掲載しています。
二人分働いてたのに、「聖女はもう時代遅れ。これからはヒーラーの時代」と言われてクビにされました。でも、ヒーラーは防御魔法を使えませんよ?
小平ニコ
ファンタジー
「ディーナ。お前には今日で、俺たちのパーティーを抜けてもらう。異論は受け付けない」
勇者ラジアスはそう言い、私をパーティーから追放した。……異論がないわけではなかったが、もうずっと前に僧侶と戦士がパーティーを離脱し、必死になって彼らの抜けた穴を埋めていた私としては、自分から頭を下げてまでパーティーに残りたいとは思わなかった。
ほとんど喧嘩別れのような形で勇者パーティーを脱退した私は、故郷には帰らず、戦闘もこなせる武闘派聖女としての力を活かし、賞金首狩りをして生活費を稼いでいた。
そんなある日のこと。
何気なく見た新聞の一面に、驚くべき記事が載っていた。
『勇者パーティー、またも敗走! 魔王軍四天王の前に、なすすべなし!』
どうやら、私がいなくなった後の勇者パーティーは、うまく機能していないらしい。最新の回復職である『ヒーラー』を仲間に加えるって言ってたから、心配ないと思ってたのに。
……あれ、もしかして『ヒーラー』って、完全に回復に特化した職業で、聖女みたいに、防御の結界を張ることはできないのかしら?
私がその可能性に思い至った頃。
勇者ラジアスもまた、自分の判断が間違っていたことに気がついた。
そして勇者ラジアスは、再び私の前に姿を現したのだった……
転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。
克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位
転生者のブルーノは絶大な力を持っていたが、その力を隠してダンジョンの荷役として暮らしていた。だが、教会の力で勇者を騙る卑怯下劣な連中に、レットドラゴンから逃げるための生贄として、ボス部屋に放置された。腐敗した教会と冒険者ギルドが結託て偽の勇者パーティーを作り、ぼろ儲けしているのだ。ブルーノは誰が何をしていても気にしないし、自分で狩った美味しいドラゴンを食べて暮らせればよかったのだが、殺されたブルーノの為に教会や冒険者ギルドのマスターを敵対した受付嬢が殺されるのを見過ごせなくて・・・・・・
【完結】魔物をテイムしたので忌み子と呼ばれ一族から追放された最弱テイマー~今頃、お前の力が必要だと言われても魔王の息子になったのでもう遅い~
柊彼方
ファンタジー
「一族から出ていけ!」「お前は忌み子だ! 俺たちの子じゃない!」
テイマーのエリート一族に生まれた俺は一族の中で最弱だった。
この一族は十二歳になると獣と契約を交わさないといけない。
誰にも期待されていなかった俺は自分で獣を見つけて契約を交わすことに成功した。
しかし、一族のみんなに見せるとそれは『獣』ではなく『魔物』だった。
その瞬間俺は全ての関係を失い、一族、そして村から追放され、野原に捨てられてしまう。
だが、急な展開過ぎて追いつけなくなった俺は最初は夢だと思って行動することに。
「やっと来たか勇者! …………ん、子供?」
「貴方がマオウさんですね! これからお世話になります!」
これは魔物、魔族、そして魔王と一緒に暮らし、いずれ世界最強のテイマー、冒険者として名をとどろかせる俺の物語
2月28日HOTランキング9位!
3月1日HOTランキング6位!
本当にありがとうございます!
チートスキル【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得&スローライフ!?
桜井正宗
ファンタジー
「アウルム・キルクルスお前は勇者ではない、追放だ!!」
その後、第二勇者・セクンドスが召喚され、彼が魔王を倒した。俺はその日に聖女フルクと出会い、レベル0ながらも【レベル投げ】を習得した。レベル0だから投げても魔力(MP)が減らないし、無限なのだ。
影響するステータスは『運』。
聖女フルクさえいれば運が向上され、俺は幸運に恵まれ、スキルの威力も倍増した。
第二勇者が魔王を倒すとエンディングと共に『EXダンジョン』が出現する。その隙を狙い、フルクと共にダンジョンの所有権をゲット、独占する。ダンジョンのレアアイテムを入手しまくり売却、やがて莫大な富を手に入れ、最強にもなる。
すると、第二勇者がEXダンジョンを返せとやって来る。しかし、先に侵入した者が所有権を持つため譲渡は不可能。第二勇者を拒絶する。
より強くなった俺は元ギルドメンバーや世界の国中から戻ってこいとせがまれるが、もう遅い!!
真の仲間と共にダンジョン攻略スローライフを送る。
【簡単な流れ】
勇者がボコボコにされます→元勇者として活動→聖女と出会います→レベル投げを習得→EXダンジョンゲット→レア装備ゲットしまくり→元パーティざまぁ
【原題】
『お前は勇者ではないとギルドを追放され、第二勇者が魔王を倒しエンディングの最中レベル0の俺は出現したEXダンジョンを独占~【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得~戻って来いと言われても、もう遅いんだが』
【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』
ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。
全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。
「私と、パーティを組んでくれませんか?」
これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!
竜騎士の俺は勇者達によって無能者とされて王国から追放されました、俺にこんな事をしてきた勇者達はしっかりお返しをしてやります
しまうま弁当
ファンタジー
ホルキス王家に仕えていた竜騎士のジャンはある日大勇者クレシーと大賢者ラズバーによって追放を言い渡されたのだった。
納得できないジャンは必死に勇者クレシーに訴えたが、ジャンの意見は聞き入れられずにそのまま国外追放となってしまう。
ジャンは必ずクレシーとラズバーにこのお返しをすると誓ったのだった。
そしてジャンは国外にでるために国境の町カリーナに向かったのだが、国境の町カリーナが攻撃されてジャンも巻き込まれてしまったのだった。
竜騎士ジャンの無双活劇が今始まります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる