有限会社DIUD 物の怪退治をする会社でアルバイトをする事になりました!

川村直樹

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始まり ①

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 突然の電話、母さんからだった。
隼人はいつもの小言だろうと、気にも留めずにスマートフォンを手にした。電話の内容は、彼の想像していたものとは違う。それは、これからの生活だけでなく彼の人生をも変えてしまう切っ掛けにすぎなかった。
「隼人、ごめんね。お父さんの次の仕事が見つかるまで、仕送りが出来なくなったの」
「親父、仕事クビになったのか?」
突然、聞かされる話しに隼人は自分の耳を疑う。
「そうなの、会社の業績悪化による人員削減だそうよ。こんな時に困るわよね」
「母さん、仕送り無しはキツイよ。何とかならないかな?」
「大学の授業料だけでも手いっぱいなのよ」
「でも、・・・・・」
「あなた、今年で20歳になるのでしょう。もう、大人なんだから、しっかりしなさい。自分の生活費ぐらいは、協力してよ!葵だって来年、高校受験だから家には余裕が無いの!」
納得しようがしまいが、畳みかけるような母親の言葉に隼人は、この人にはいくら自分の主張を伝えても勝てないと観念する。家庭の事情は理解できる年齢になっていたが、親に対する甘えは完全に払しょくされている訳では無い。電話越しから切迫した状況が伝わってくる。
ああ、母さんの口調が強くなる。
息子の不甲斐ない言動に怒っているよな。
兄として、中学3年生になる妹の事も考えてやらないと。
「分かったよ。生活費は、バイトして何とかする」
「お願いします。休みの間、帰って来なくて良いから。しっかり稼いでね」
「帰らなくて、良いのかよ?」
「交通費、バカにならないでしょう。その分、そこでバイトしてくれた方が、こっちは助かるから」と、隼人の母親は言いたいことを伝えると電話を切った。

彼の名前は、小坂隼人おさかはやとごく普通の大学生だ。名古屋で生まれ育ち、勉強は常に中の上の成績で可もなく不可もない子供だった。取柄は無いが何とか京都にある私立大学に進学し、現在は大学に通うため京都西陣地区に住み始めて早1年が過ぎる。
6畳クローゼット付きのワンルームの部屋には、ノートパソコンを置いたローテーブルとベッドしかなかった。自炊をしないキッチンには、湯沸かし器と電子レンジしか無い。アパートの一人暮らしや大学生活にも慣れ、多くは無いが大学で親しい友人も出来た所だったのに。
春、友人達が揃って実家に帰ってしまったから、授業が始まるまでの期間あいだを利用して彼も実家に帰ろうかと迷っていた矢先だったが、予定は全てキャンセルになってしまった。
身長175センチの体には少し小さいベッドに横たわり、彼は天井を見つめた。
少し長くなった前髪が気になり触る。
困ったな、バイトするにも今から探さないと。
“しっかりしろよ、馬鹿野郎”
声が聞こえたので、思わず彼は体を起こした。気のせいかと、再びベッドに横たわる。
大きなため息が出る、素直に現実を受け入れるしかない。望まない不幸が圧し掛かってきた様に感じた彼は、腹が立つ。ごく普通の家庭、そこで育ったごく普通の大学生、そんな彼に訪れたごく普通の不幸?
休まず身を粉にして会社に貢献した彼の父親は、あっけなく会社をクビになってしまった。リストラなど自分の家族には無関係だと、彼は考えていた。
来年から就職活動を始めるが、こんな世の中では会社勤めに夢は無い。
いっその事、公務員試験を受けるか?
身を引き締めて勉強に精を出す・・・楽しい大学生活を犠牲にして・・・彼のそんな甘い考えは通用しない。考えれば考えるほど、彼の思いは泥沼に沈んでいく。
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