ネックレスとブレスレット【改】 魔法少女に召喚された青年は彼女を守る事になりました!

川村直樹

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砂漠を越えて 1

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ベシニーロウカ平原を抜けたリリカは、不機嫌そうにブツブツ呟きながらテラダモルテ砂漠を歩いていた。些細なことから春馬と喧嘩してしまったのだ。

「あー、もう、分からず屋なんだから。春馬なんか嫌い、嫌いよ!」

砂漠の中で彼女は、怒りに満ちた思いを吐き出した。

最後に立ち寄った村まで、二人は一緒だったのに。

サリ達と別れてから自分の世界へ帰ろうとしない春馬に、リリカはもう一人で大丈夫だからと、何度も伝えた。過保護になられるのは嫌だったから。

一緒に居てくれると何かと安心出来るし、年上だから頼りにもなる。

ただ、長時間一緒に過ごすのは、しんどく感じてしまう。それに春馬の会話の大半が、勉強を教える先生そのもので楽しくなかった。

さすがのリリカもそんな春馬は、ウザくなる。

せっかく元気になったのに、勉強以外の話は出来ないの?
サリの所で、ずっと看病をしてくれたから疲れていないか心配したのに!

本当に人の言う事は、聞かないんだから。そう考えると腹立たしい気持ちがぶり返す。
 
一人で砂漠に入ったリリカは、頭の中を空っぽにしながら、何も考えず無心を心掛けた。

―――あー、徐々に気持ちが落ち着き冷静になる。

日が暮れるまで歩き続けると、行商から聞いた通り廃村に辿り着いた。

放置されてから随分と時間が経ったのだろう。木造住宅の屋根は落ち、まともな姿を残す建物は皆無だった。

それでも、雨風をしのげそうな場所を見つけ一晩過ごす。

薪をくべながら呟いた、「ダメだなあ」

イライラしていたから春馬にきつく当たってしまったのだろうか。
それにしてもどうしてだろう、私の事を知って欲しいと思うのは?

ヤキモキする気持ちは相手に好意があるからだと、気が付いているのにリリカは認めたく無かった。

自分の気持ちに素直になれず、否定してしまう。

「やっぱり、春馬のバカ―!」

納得できないリリカの叫び声が、夜の廃村に響き渡った。

乾燥した大地を歩くのは、想像以上に体力がいる。

日中は40度近い気温になり、日が沈むと気温は5度とジェットコースターの様に急降下する寒暖差。

それに暑さで消耗した体力を回復させようにも、夜は寒くて眠れない。

日増しに蓄積される疲労で、リリカの足取りは重くなっていた。

「ふうー、疲れたよ。でも、もう少しで砂漠を抜けられるから、頑張らなくちゃ」と、疲れている自分を鼓舞した。

ひょこひょこと歩くリリカの後ろから、体長3メートルはある巨大なサソリ五匹が群れを成して付いて来る。サソリは、気配を消し音を立てず、彼女に忍び寄る。

本能的にリリカを弱った獲物として狙いを定めたのだ。

気付かれないように、鋭い毒針のある尻尾を上に上げ、後ろから襲い掛かろうとする。

カサカサと虫の足音が聞こえたと思った瞬間、後ろから振り下ろされたサソリの毒針が、リリカの足元に突き刺さった。

青ざめた顔で振り向くと、四匹の巨大なサソリが自分を狙っている。

逃げようと思っているのに、足が地面から離れない。

震える声で魔法を唱えるが、「水と風よ、我に、し、した、従え・・・」と、言葉が続かず上手く詠唱できなかった。

それでも何とか魔法で氷を出し、目の前の1匹に氷の塊をぶつけたが、堅い表皮に覆われている体には無意味だった。

呆気なく粉々に砕ける氷に、これが駄目なら違う魔法でサソリを倒そうと思い、勇気を振り絞り身構えた。

「我に従え、火よ、風の力によって全てを焼き尽くす炎となり・・・」

カサカサと動き回るサソリに囲まれた。気持ちを落ち着かせながら詠唱を唱えていたが、魔法を放つ前にサソリの毒針が目の前に迫りくる。

―――ひっ、もう駄目かと思ったが、幸いにもサソリの狙いが狂ったのか、リリカに毒針は刺さらなかった。

恐怖から涙がこぼれてくる、「こ、怖いよ、お願いだから助けてよ」

春馬の助けを望んでいるのに、いつものように光が、魔法陣が現れない。

パートナーを召喚しているのに、何も起こらないのだ。

「え、どうして? 呼んでいるのに、来てくれない・・・」

何が原因で春馬の召喚が出来ないのか分からず、頭の中が混乱する。

死にたくなという思いは強くあるのに、どうしても身体が動かせない。

自分を取り囲むサソリは、二匹、三匹と順番に毒針を空に掲げ、今にも振り下ろしてきそうな雰囲気なのに。

―――おばあちゃん助けてと、心の中で叫んだ。

「自分のパートナーは、嫌いになってはいけないよ!」と、祖母が話したのを思い出した。

「そうよ、嫌いじゃないの。私は、春馬が好きなのよ!」

意識しすぎて自分の本当の気持ちから目を背けていた。

始めは兄のように思っていたけど、一緒に旅をする内に異性として好きになっていた。サリに言われなくても、その気持ちに気が付いていたのだ。

彼を好きな気持ちは嘘じゃないと、ネックレスを握りしめた。

いつもより強く念じたからなのか、眩い光に包まれ春馬は現れた。

今日は、異常に身体が軽い。そんな異変を感じながら周りを見渡すと、サソリに囲まれている。危険を感じた春馬は、咄嗟に隣に居たリリカを抱きかかえて、サソリの包囲網を飛び越えた。

「大丈夫だったか、怪我は?」と、リリカの顔に触れた。

もう来てくれないかも知れないと、心のどこかで思っていたリリカは、安心したのか春馬に抱きつき大声を出して泣いている。

「うっ、ひっく、戻ってきてくれたの。ごめんなさい、嫌いだなんて嘘だから」

「動揺している様だけど、何かあったのか? もう、安心しろ」

喧嘩した事など、とうに忘れた春馬は、いつもと様子の違うリリカを気遣った。痴話げんかだったと思っていたのに、春馬はリリカが我儘を言っていたぐらいにしか思っていなかった。
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