滅んでしまった王国の元騎士は自由気ままな暮らしを満喫したい

川村直樹

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ダンディルグ王国 4

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 ダンディルグ城の謁見の間では、円卓の上座に座る若き王ラングス一世がクリスの到着を待っていた。若くして亡くなった先王の後を継いだラングス一世は、クリスと同世代である。

 そんな王は、魔獣討伐で活躍した年の近いクリスの話を聞き、興味を持ったのだ。
ソワソワとしながらクリスを待つ王は、黒く細い前髪を何度もかき上げながら、息苦しいのか詰襟シャツの第一ボタンを外す。

 王のお目当てのクリスが謁見の間に通されると、彼は立ち上がり笑顔で迎え入れた。

「さあ、座ってくれ」と、王がクリスに話しかけると使用人は、王と対面の席を引いた。

「お初にお目にかかります。私は、アルフェリアで冒険者をしておりますクリス・アラートです。この度は、ご招きいただき有難く存じます」

「堅苦しい挨拶は、無用だ。同席しているのは私の側近だ、気にする事は無い。君は私の部下では無いのだから、今日は無礼講でお願いするよ」

 王は、順番に同席する人達の紹介をする。

 王の左に座るのは、騎士団長カース・ロイド。

 無骨な武人をイメージさせる彼は、口ひげを携えた三十代半ばの魔族の男性。金色の刺繍が施された黒色の帽子をかぶり、黒の上着とグレーのパンツ姿は軍人を彷彿とさせる。

 彼の隣に座るカレンも同じ軍服を着ているが、彼女はショートパンツスカートをはいている。

 王の右に並んで座るカースと同じ服装をしている男性二人は、英雄ルシアス・デルナードとレオ・デルナードだ。二十代半ばの二人は兄弟であり、騎士団で唯一赤い鎧を身に付ける事が許されている。

 一通り紹介と挨拶を済ませると、王は熱く期待に満ちた眼差しをクリスに向けた。

「クリス、君が魔獣を倒したと彼らから聞いたが、本当か?」

「はい、私が倒しました」

「我が国の勇者と英雄が苦戦を強いられた魔獣を君は現れて直ぐに倒してしまったと聞いた。一人で戦果を挙げたとは、見事だな」

「いいえ。勇者カレンと英雄の二人、そして騎士達や冒険者達が勇敢に戦ってくれたからこそ、弱った魔獣に止めを刺す事が出来たのです。彼らの働きがあってこその成果ですよ」

「謙遜しなくて良い、クリス殿。一緒に戦って感じたが、あなたの強さは本物だ」と、ルシアスは、隣に座るレオと目を合わせ同意を求めた。

 レオは軽く頷き、「私を踏み台にしてジャンプしたと思ったら、魔獣に飛び掛かり腕を切り落としてしまった。あれは、圧巻でしたよ」

「ああ、私もその戦いぶりを見たかった。立場上、有事の際は城から出してくれないからな」

「ふっ、王よもしかしたらご覧になれるかも知れませんよ」と、騎士団長のカースは顎髭を触りながら王に進言した。

「カース、教えてくれどういう事だ」

「模擬戦をしては、どうでしょうか。もちろん、クリス殿が引き受けてくれたらの話しですが」

「その模擬戦、我らと手合わせをお願いしたい」と、ルシアスとレオは声を揃えた。

 魔族の英雄は、自分達より強いと称されるクリスと、戦いたくてうずうずしていた。そんな二人の姿にクリスは、魔族は武を愛する人が多いと聞いていたが本当だなと感心する。

「どうだ、クリス。引き受けてくれないか」

「弱りましたね。お見せできるような腕では、ありませんよ」

「そこを頼む、久しぶりに模擬戦を見たい」と、手を合わせて頭を下げる王は、年相応の若者だった。純粋に見たいと、願っている様だ。

「もちろん手合わせをしてくれなくても、魔獣討伐の褒美は用意するから」

「うーん、褒美も要らないので、手合わせは無しに出来ませんか?」

「そんな、褒美も要らないのか。どうすれば、良いのだ」と、王は残念そうな顔を見せた。

「仕方ないですね。これならどうですか、褒美として私の友達になってくれませんか。そうすれば、王の願いを友人として引き受けましょう」

「そんな事で良いのか? しかも私と友人になってくれるとは、凄く嬉しいぞ」

 若き王ラングスは、立場故に幼い頃から心許せる友人は、一人も居なかった。もちろん、友達になって欲しいなどと言われた経験など皆目無い。クリスの申し出は、王にとって新鮮で心を揺さぶる言葉だった。

「じゃあ、今から私とあなたは友達です」と、クリスは王の横に立ち手を差し伸べた。

「今から私と君は、友人だ。私の事は、呼び捨てで良い」、ラングスはクリスと握手をした。

「ええ、立場をわきまえないといけない場面もあると思うけど。改めてよろしく、ラングス」

「クリスとは、何でも話せる仲になれそうだな」

「それでは、円形闘技場で模擬戦をしましょうか」と、カースはまるで自分も参加しそうな勢いで部屋から出て行った。

 同席していたカレンは終始黙ったままで、何処か御淑やかにしていた。

 下を向きながらモジモジとしていたカレンの頭をクリスは優しく撫でる。彼女が見上げると、クリスはウインクした。
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