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ダンディルグ王国 6
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模擬戦は終わり全員が闘技場から出ようとすると、薄暗い通路の中からカレンが現れた。
剣と盾を持つ彼女の顔は、意を決した戦士の顔つきをしていた。
「英雄の二人が負けたままでは、終われませんよ。私がお相手します!」
「はぁ、カレンも戦いたいの?」
「私は、あなたの実力が知りたい。あなたは、勇者と英雄が倒せなかった魔獣を倒した。模擬戦でも英雄の二人が、あなたに全く歯が立たないなんて。一体、どうなっているの」
「それはだな、あれだ、そう、・・・あれだ」と、誤魔化したくても言葉が出ないクリスは指で鼻先を掻いた。
「見て! 見物に来た民衆達は、声も出ず呆然としているじゃない」
クリスはカレンの言葉を聞いて、闘技場で見物する民衆に気が付いた。
知らない内に闘技場の半分ぐらいの席が、観衆で埋まっていた。普段から自由に出入り出来るように解放されている場所だから仕方が無いのだが、何処で聞きつけたのか模擬戦を見た観客たちは、興奮して盛り上がっていた。
「じゃあ、民に見せるようなものでは無いから、また今度と言う事で」と、クリスは手を振って闘技場を後にしようとした。
「ダメ! 王は、勇者とあなたの模擬戦を見たいの」
嫌々ながら正面の席を見ると、ラングスは立ち上がりしきりに拍手している。
見物客も自分達の王につられて、手を叩き始めた。
「しょうがないな。さっきまで、御淑やかだったのに」
「そ、それは関係ないでしょ。さあ、始めましょう」
クリスとカレンとの模擬戦が始まる。クリスは、この展開に頭を悩ます。もし、自国の勇者がよそ者に倒されたら、民衆はどう思うのか。場合によっては、国の威厳を貶める可能性だってあるのに。そんなクリスの思いを理解しているほど、残念ながらカレンの頭の中は大人になっていなかった。
クリスの考えとは裏腹に、純粋に彼の実力を知りたいと思い模擬戦を挑んできたカレンは、勇者の立場や威厳など関係無かった。闘技場の真ん中でクリスと互いの剣を合わせる彼女は、仕合する相手の事だけを考え勝つつもりでいる。
二人とも間合いを取りつつ、暫く静止したまま動かない。
固唾を飲む観衆は、静かに彼らを見守った。
意を決し走り出したカレンは、クリスに向けて剣を突き出す。
後ろに下がりながらクリスは、カレンの剣を避けた。涼し気な表情の彼は、最小限の動きで難なくカレンの攻撃を見切ってしまう。
「はあー、剣技スピニングクラッシュ!」と、カレンは勇者の力と技を繰り出してきた。
彼女は剣を回しながら突くスピードを上げると、風切り音と共に残像で無数の剣が現れた。
「これが勇者の力か。凄いね、人外だよ」と、クリスはカレンの突きをヒョイヒョイ避ける。
「これを避けるあなたの方こそ人外よ」
後ろに下がっていたクリスは、剣を避けながら前に出る。
あっと言う間に距離を縮められてしまった。ニヤリとしたクリスに剣の柄を握られ動きを止められたカレンは、あり得ない光景と思いで顔を背けてしまう。
「クリス、顔が近いわよ」
「顔が近いと、やり難いか? でもな、模擬戦なんだぞ。怪我するから油断するなよ!」と、クリスはカレンの足を払った。
ドスンと地面に尻もちをついたカレンは、悔しさと恥ずかしさからクリスを睨みつけた。勝つつもりで挑んでいるのに、まるで手も足も出ない新人騎士の様にあしらわれた事が、気に入らなかった。
剣と剣がぶつかり合う音が響く、何時しか二人とも盾を捨て、剣だけを握りしめていた。
カレンの動きや太刀筋は幼少から訓練を重ね、多くの実戦を経験して来たものだと、交える剣から伝わってくる。
異世界から呼び出され召喚された人族の勇者ミツヤ・タカハシとは、同じ勇者でも明らかカレンの方が実力は上である。
カレンと剣を交えるのが、楽しくなって来たクリスは、ダンスしている時の様な気分になって行く。にこのまま時間を忘れて、彼女と一緒に戦っていたいとすら思える。だが、そんな悠長に楽しんでいる時間はもう無いと、激しいぶつかり合いで削られていく剣が悲鳴をあげ知らせる。
そろそろフィナーレにしようかと、クリスは剣を振りかざし飛び上がった。
カレンが頭上を見上げると、クリスは自分に向けて手をかざす。
ボンと、衝撃波が襲い掛かると土煙が上がった。
カレンはジャンプして土煙から出ると、クリスが目の前に現れる。
宙で互いの剣が重なると、クリスはカレンの腰に手を伸ばしクルリと回転した。
背中を地面に向けたクリスは、カレンを抱きそのまま落下して行く。
「ドーン」と、闘技場に音が響き渡り二人の姿は土煙で見えなくなった。
土煙が消えると、馬乗りになったカレンの剣先がクリスの顔に向けられていた。
クリスは剣を捨てると、両手を上げ降参のポーズを取った。
「勇者カレンは強い、ダンディルグ王国には素晴らしい勇者が居る!」
大声で叫んだクリスの言葉に、見物客達は歓声を上げ答えた。
クリスの行動にラングスは、口角を上げる。我々に恥をかかせないように、気を使ってくれた人族の青年に人知れず感謝していた。
魔獣討伐の事も気になっていたので、大勢の観衆の前で強い勇者を見せれば、変な噂も立たないだろうと、クリスの考えた結末で模擬戦は終わった。
日も暮れて盛り上がりを見せる酒場では、無理矢理城を連れ出されたラングスが、クリスと一緒に奥のテーブル席に座った。
顔を隠していたマントのフードを取ると、「本当に大丈夫なのか、クリス」、不安気な表情のラングスは、隣に座ったクリスに問いかけた。
「大丈夫、心配するなよ。絶対にバレないって」
「本当かな、あんな人形で皆を騙せるのか」
城に忍び込んだクリスは、ラングスにそっくりな等身大の人形を抱えて、王の間の窓から入ってきた。承認を待つ大量の申請書に目を通していたラングスに、飲みに行こうと誘いに来たのだ。王の席に人形を置いて、二人はそのまま城から姿を消した。
「クリス殿、本当に王を連れて来るとは、正直半信半疑でした」
そう答えるルシアスは、レオと一緒に先に酒場で、ラングスとクリスの二人を待っていた。
「じゃあ、みんな揃ったから乾杯しよう。同世代が集まって無駄話をしながら、酒を楽しむのは大切な仕事だよ」
店のウエイトレスが運んで来た酒の入ったジョッキで、彼らは乾杯をする。
次々に運ばれてくる料理にラングスは、興味津々だった。
「庶民が口にする料理を食べるのは、初めてだよ」
「美味いぜ、俺もここに来てからハマっている料理だ。それに美味い酒も多い」
「王よ、毒見しましょうか」と、レオが真剣な顔でフォークを手にした。
あー、面倒くさいことするなよと、クリスはテーブルに並ぶ料理を一切れずつ全て口に頬張り、酒で胃の中へと流し込んだ。
「ほら、毒なんて入っていないよ。もし、毒が入っていれば俺が何とかするよ」
滑稽に笑うクリスを見ていると、ラングスは自分の立場を忘れる。
彼の分け隔て無い態度が、清々しく感じられた。
「クリスの言う通り、毒が入っていればその時何とかすれば良い。そんな事は気にせず、今を一緒に楽しもう」、ラングスはフォークでワイルドボアの香草焼きを一切れ取り口に入れた。
「う、美味いじゃないか。香ばしさと焼き具合が最高だ。さあ、ルシアスとレオも遠慮なく食べなさい」
四人の宴会が、始まった。種族や立場に関係無く、友人として食事と酒を楽しみながら雑談で盛り上がる。
剣と盾を持つ彼女の顔は、意を決した戦士の顔つきをしていた。
「英雄の二人が負けたままでは、終われませんよ。私がお相手します!」
「はぁ、カレンも戦いたいの?」
「私は、あなたの実力が知りたい。あなたは、勇者と英雄が倒せなかった魔獣を倒した。模擬戦でも英雄の二人が、あなたに全く歯が立たないなんて。一体、どうなっているの」
「それはだな、あれだ、そう、・・・あれだ」と、誤魔化したくても言葉が出ないクリスは指で鼻先を掻いた。
「見て! 見物に来た民衆達は、声も出ず呆然としているじゃない」
クリスはカレンの言葉を聞いて、闘技場で見物する民衆に気が付いた。
知らない内に闘技場の半分ぐらいの席が、観衆で埋まっていた。普段から自由に出入り出来るように解放されている場所だから仕方が無いのだが、何処で聞きつけたのか模擬戦を見た観客たちは、興奮して盛り上がっていた。
「じゃあ、民に見せるようなものでは無いから、また今度と言う事で」と、クリスは手を振って闘技場を後にしようとした。
「ダメ! 王は、勇者とあなたの模擬戦を見たいの」
嫌々ながら正面の席を見ると、ラングスは立ち上がりしきりに拍手している。
見物客も自分達の王につられて、手を叩き始めた。
「しょうがないな。さっきまで、御淑やかだったのに」
「そ、それは関係ないでしょ。さあ、始めましょう」
クリスとカレンとの模擬戦が始まる。クリスは、この展開に頭を悩ます。もし、自国の勇者がよそ者に倒されたら、民衆はどう思うのか。場合によっては、国の威厳を貶める可能性だってあるのに。そんなクリスの思いを理解しているほど、残念ながらカレンの頭の中は大人になっていなかった。
クリスの考えとは裏腹に、純粋に彼の実力を知りたいと思い模擬戦を挑んできたカレンは、勇者の立場や威厳など関係無かった。闘技場の真ん中でクリスと互いの剣を合わせる彼女は、仕合する相手の事だけを考え勝つつもりでいる。
二人とも間合いを取りつつ、暫く静止したまま動かない。
固唾を飲む観衆は、静かに彼らを見守った。
意を決し走り出したカレンは、クリスに向けて剣を突き出す。
後ろに下がりながらクリスは、カレンの剣を避けた。涼し気な表情の彼は、最小限の動きで難なくカレンの攻撃を見切ってしまう。
「はあー、剣技スピニングクラッシュ!」と、カレンは勇者の力と技を繰り出してきた。
彼女は剣を回しながら突くスピードを上げると、風切り音と共に残像で無数の剣が現れた。
「これが勇者の力か。凄いね、人外だよ」と、クリスはカレンの突きをヒョイヒョイ避ける。
「これを避けるあなたの方こそ人外よ」
後ろに下がっていたクリスは、剣を避けながら前に出る。
あっと言う間に距離を縮められてしまった。ニヤリとしたクリスに剣の柄を握られ動きを止められたカレンは、あり得ない光景と思いで顔を背けてしまう。
「クリス、顔が近いわよ」
「顔が近いと、やり難いか? でもな、模擬戦なんだぞ。怪我するから油断するなよ!」と、クリスはカレンの足を払った。
ドスンと地面に尻もちをついたカレンは、悔しさと恥ずかしさからクリスを睨みつけた。勝つつもりで挑んでいるのに、まるで手も足も出ない新人騎士の様にあしらわれた事が、気に入らなかった。
剣と剣がぶつかり合う音が響く、何時しか二人とも盾を捨て、剣だけを握りしめていた。
カレンの動きや太刀筋は幼少から訓練を重ね、多くの実戦を経験して来たものだと、交える剣から伝わってくる。
異世界から呼び出され召喚された人族の勇者ミツヤ・タカハシとは、同じ勇者でも明らかカレンの方が実力は上である。
カレンと剣を交えるのが、楽しくなって来たクリスは、ダンスしている時の様な気分になって行く。にこのまま時間を忘れて、彼女と一緒に戦っていたいとすら思える。だが、そんな悠長に楽しんでいる時間はもう無いと、激しいぶつかり合いで削られていく剣が悲鳴をあげ知らせる。
そろそろフィナーレにしようかと、クリスは剣を振りかざし飛び上がった。
カレンが頭上を見上げると、クリスは自分に向けて手をかざす。
ボンと、衝撃波が襲い掛かると土煙が上がった。
カレンはジャンプして土煙から出ると、クリスが目の前に現れる。
宙で互いの剣が重なると、クリスはカレンの腰に手を伸ばしクルリと回転した。
背中を地面に向けたクリスは、カレンを抱きそのまま落下して行く。
「ドーン」と、闘技場に音が響き渡り二人の姿は土煙で見えなくなった。
土煙が消えると、馬乗りになったカレンの剣先がクリスの顔に向けられていた。
クリスは剣を捨てると、両手を上げ降参のポーズを取った。
「勇者カレンは強い、ダンディルグ王国には素晴らしい勇者が居る!」
大声で叫んだクリスの言葉に、見物客達は歓声を上げ答えた。
クリスの行動にラングスは、口角を上げる。我々に恥をかかせないように、気を使ってくれた人族の青年に人知れず感謝していた。
魔獣討伐の事も気になっていたので、大勢の観衆の前で強い勇者を見せれば、変な噂も立たないだろうと、クリスの考えた結末で模擬戦は終わった。
日も暮れて盛り上がりを見せる酒場では、無理矢理城を連れ出されたラングスが、クリスと一緒に奥のテーブル席に座った。
顔を隠していたマントのフードを取ると、「本当に大丈夫なのか、クリス」、不安気な表情のラングスは、隣に座ったクリスに問いかけた。
「大丈夫、心配するなよ。絶対にバレないって」
「本当かな、あんな人形で皆を騙せるのか」
城に忍び込んだクリスは、ラングスにそっくりな等身大の人形を抱えて、王の間の窓から入ってきた。承認を待つ大量の申請書に目を通していたラングスに、飲みに行こうと誘いに来たのだ。王の席に人形を置いて、二人はそのまま城から姿を消した。
「クリス殿、本当に王を連れて来るとは、正直半信半疑でした」
そう答えるルシアスは、レオと一緒に先に酒場で、ラングスとクリスの二人を待っていた。
「じゃあ、みんな揃ったから乾杯しよう。同世代が集まって無駄話をしながら、酒を楽しむのは大切な仕事だよ」
店のウエイトレスが運んで来た酒の入ったジョッキで、彼らは乾杯をする。
次々に運ばれてくる料理にラングスは、興味津々だった。
「庶民が口にする料理を食べるのは、初めてだよ」
「美味いぜ、俺もここに来てからハマっている料理だ。それに美味い酒も多い」
「王よ、毒見しましょうか」と、レオが真剣な顔でフォークを手にした。
あー、面倒くさいことするなよと、クリスはテーブルに並ぶ料理を一切れずつ全て口に頬張り、酒で胃の中へと流し込んだ。
「ほら、毒なんて入っていないよ。もし、毒が入っていれば俺が何とかするよ」
滑稽に笑うクリスを見ていると、ラングスは自分の立場を忘れる。
彼の分け隔て無い態度が、清々しく感じられた。
「クリスの言う通り、毒が入っていればその時何とかすれば良い。そんな事は気にせず、今を一緒に楽しもう」、ラングスはフォークでワイルドボアの香草焼きを一切れ取り口に入れた。
「う、美味いじゃないか。香ばしさと焼き具合が最高だ。さあ、ルシアスとレオも遠慮なく食べなさい」
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