滅んでしまった王国の元騎士は自由気ままな暮らしを満喫したい

川村直樹

文字の大きさ
43 / 66

北の遺跡 8

しおりを挟む
 最後の試練が待つ十三階に到達したカレンを女神マテーナが待っていた。

 自分以外は、誰も部屋に来ていない。仲間達の事が心配になったが、カレンにはそんな事を考えている余裕は無かった。目の前で不穏なオーラを漂わす女神マテーナから目を離せなかったからだ。何か仕掛けて来るのは、間違いない。

「ようやく、辿り着いたわね。これからが、勇者の為に用意した試練よ」

「分かりました。いつでもどうぞ」と、カレンは聖剣を構えた。

「楽しいわ、この試練を乗り越えて、さあ、この伝説の防具を手に入れなさい」

「・・・えっ?!」、女神が手にする防具を見たカレンは、目を白黒させた。

 カレンが驚くのも無理はない、マテーナの手にする伝説の防具は、なんとビキニアーマーだったからだ。まさか、試練を乗り越えて手に入れるアイテムが、そんな恥ずかしい物だとは思いもよらなかった。

「あ、あのー、女神様」、恐る恐るカレンはビキニアーマーを指さす。

「何よ、なんか問題でもあるの」

「そのー、ちょっと、言いづらいのですが・・・」

「もう、勿体ぶらないで早く話しなさいよ!」

「私、その防具は嫌です! いくら勇者でも、そんな露出の高い防具を着るのは、恥ずかしいです。だ、だ、だから、試練を辞退します!」

「そ、そんなの、ダメに決まってるじゃない。このビキニアーマーを着て、颯爽と活躍する美少女勇者を思い描いていたのに・・・。私の趣味、いえ、楽しみ、いやいや、せっかく最強の防具を準備したのよ」

「それでも、それを着て戦うのは、ちょっと」と、女神から目を逸らした。

「じゃあ、このミニスカートを付けるから。ヒラヒラしているけど、お尻が見えなくなるし、可愛いでしょ。後ね物理体制と魔法耐性に効果プラス20%を付けるから、だから、お願い」と、手を合わせてお願いしてきた。

「いくら強力でも、やっぱり」

「もう、しょうがないわね。バスト20%アップ機能を付けてあげるわ。それでどう、了承してくれないかしら。それに自動脱着機能付きだから、戦う時以外は、着なくて良い」

 バストアップ機能と自動脱着機能は、カレンの耳に魅力的なワードとして響いた。特にバストアップ機能は、たまらなく欲しい。最近大きくならず悩んでいた自分の胸を触った。

 顔を真っ赤にしながら頷いた彼女は、黒のビキニアーマーと白いミニスカートを身に付けた自分を想像する。胸が大きくなるのなら、それでも恥ずかしさから、彼女はプルプルと小刻みに震えていた。

「ふうー、危なかったけど、問題解決ね。じゃあ、試練を始めましょうか」と、マテーナはパチンと指を鳴らした。

 女神の前に中年の男性と女性が現れた。初めて見る男女に、カレンは首を傾げる。

「誰ですか、その人達?」

 カレンの姿を見た二人は突然泣き出し、両手を広げ彼女を抱きしめようと近づいて来た。

「おお、カレン。私達の娘、カレン、立派に成長したな」

 彼等から距離を取るために、カレンは後退りした。全く記憶にない人、自分を娘と呼ぶ二人に対して警戒心を強めた彼女は、剣を前に出し近づく彼等を制止する。

「彼等は、あなたの両親よ。懐かしいでしょ、でもね、勇者は身内であっても倒さなければならない時もあるの。悲しいけどこれが試練なのよね、自分の両親をその聖剣で切る覚悟はある?」

 両親だと紹介された二人は、涙しながらカレンの名を呼んでいたが、突如黒いオーラを漂わせ苦しみ始めた。

「うっ、があー、く、苦しい!」、二人の目がグルっと回転し白目をむく。

「どうしたの、何で苦しむの」

「だ、ダメだー、ウッ、ウッ、ギャー」、両親と名乗る二人は魔人化してしまった。

 額から角が現れ、口からは鋭い牙が生えてきた。苦しみ悶える二人は、大きく成長する体で服が引きちぎられ、肌の色が黒く変色した。

「ちょっと、これって魔人化?」

驚くカレンにマテーナは平然と、「そうよ、流行り病の様に魔人化した者達が、時々あなた達の世界で暴れるでしょ」

 原因は定かではないが、必ず数十年に一度は伝染病が蔓延する様に、この世界の住人が魔人化し暴れるのを繰り返していた。 

「ハア、ハア、グルグルグル」、魔人化した二人は理性を失い、口から涎を流していた。

「どうする? 自分の両親を倒せるかしら」、マテーナが不敵に笑った。

 静かに深呼吸したカレンは、「そりゃぁぁぁ・・・」と、いきなりトップスピードで走り出すと、ためらう事無く両親と名乗る二人の首を聖剣で切り落とした。

 首が地面に転がり魔人の二人が倒れると、何事も無かったかのように霧散した。

「もう、もう、もう! どうして、そんなに簡単に切り捨てられるのよ。あなたには、良心の呵責は無いの。あなたの親よ、お父さんとお母さんなのよ」

「えーと、私、両親の顔を知らないの。生まれて直ぐに勇者と判明した私を僅かなお金で、彼等はダンディルグ王国の先王に売ったの。貧しかったのかも知れないけど、私は捨てられたのよ。だから、私に両親は居ないも同然なの」

「むー、そうだった。もっと、乙女チックに顔の分からない両親と会いたいと思ったのに。それじゃあ、現在進行中のあなたの大切な人ならどうかな」

 再び指を鳴らしたマテーナの前に、今度はクリスが現れた。さっきまで一緒に塔を登っていた彼をここに呼び出したのかと思ったが、カレンは何か違和感を覚えた。

「カレン、ここに居たのか。無事でよかった」

「んっ、誰、あなた?」、急に目を細めたカレンは身構えた。

「何言ってんだよ、カレン。俺だよ、クリスに決まってるだろ」

「うーん、なんか変な感じがするんだけど」

 向き合う二人を嬉しそうに見つめるマテーナは、床に自身の剣を突き刺し両手を広げて戦いのゴングを鳴らした。

「さあ、カレン。クリスと戦いなさい。彼は、強いから勇者のあなたでも勝てないかしら?」

 挑発するような口ぶりでマテーナは、カレンを煽った。

 勝気な彼女は、強者と剣を交わす事に喜びを感じる性格だ。何度手合わせしても勝てないクリスが相手なら、彼女の本気を引き出す切っ掛けになると、女神は決めつけていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから―― ※ 他サイトでも投稿中

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。

秋田ノ介
ファンタジー
  88歳の爺さんが、異世界に転生して農業の知識を駆使して建国をする話。  異世界では、戦乱が絶えず、土地が荒廃し、人心は乱れ、国家が崩壊している。そんな世界を司る女神から、世界を救うように懇願される。爺は、耳が遠いせいで、村長になって村人が飢えないようにしてほしいと頼まれたと勘違いする。  その願いを叶えるために、農業で村人の飢えをなくすことを目標にして、生活していく。それが、次第に輪が広がり世界の人々に希望を与え始める。戦争で成人男性が極端に少ない世界で、13歳のロッシュという若者に転生した爺の周りには、ハーレムが出来上がっていく。徐々にその地に、流浪をしている者たちや様々な種族の者たちが様々な思惑で集まり、国家が出来上がっていく。  飢えを乗り越えた『村』は、王国から狙われることとなる。強大な軍事力を誇る王国に対して、ロッシュは知恵と知識、そして魔法や仲間たちと協力して、その脅威を乗り越えていくオリジナル戦記。  完結済み。全400話、150万字程度程度になります。元は他のサイトで掲載していたものを加筆修正して、掲載します。一日、少なくとも二話は更新します。  

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

処理中です...