滅んでしまった王国の元騎士は自由気ままな暮らしを満喫したい

川村直樹

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抵抗勢力 3

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 スライブとクリスの会話を聞いていたサーシャとシルクの顔が引きつる。それを見ていたミツヤは、どうして二人揃って怯える様な表情を浮かべるのか理解していなかった。

「サーシャさんもシルクさんも怯えているようですが、どうしたんですか?」

「それは・・・、師匠から聞いたのですが、三年前にあったフリント王国とグランベルノ王国の戦争で前線に居た数千もの兵士達が光に包まれて消滅したの。その時、もの凄い力の波動を感じた師匠は、ただ事では無いと思ったと話していました。その力は、まるで神が人間族の争いに関与した様でもあったと」

「私も所属していた部隊で嫌と言うほど何度も聞いた話です。前線の兵士達の消滅・・・」

「えっ、それじゃあ、その力を使ったのはクリスさんと言う事になるのか」

 クリスは、スライブとの会話に夢中になり過ぎて仲間が一緒に居たのを忘れていた。ハッとした表情を見せると、パンと膝を叩いた。

「仲間に隠し事をしたら駄目だな! しょうがない、正直に話す。創造神の力で前線に居た敵味方を消滅させたのは、紛れもなく俺だ。俺が、力の意味を理解しないままやらかしたんだ」

「そ、そうだったんですか・・・」と、ミツヤとサーシャ、シルクの三人は声を揃えて答えた。

「ああ、だからずっと自分を責めてた。大勢の仲間の命を奪ってしまった愚か者だとな」

「クリスさんは、愚か者では無いと思います。それに仲間が生きてて良かったじゃないですか」

「良かった、本当に良かった」、笑顔を見せるクリスの右目から涙が流れた。

「お前達が参戦すれば、カルラシアの黒騎士とフリントのレジスタンスに挟まれるグランベルノ王は、国の存亡の危機に立たされるな」と、成り行き次第では面白くなりそうだとスライブは感じていた。

 これで勇者の武具を手に入れるまでの道筋が出来た。

 後は、真っすぐフリントへ向かうだけだ。アルフェリアにもう少し滞在したい気持ちはあったが、善は急げと翌日に出発を決めたクリス達は館長室を出た。

 宿屋で合流する約束をしたクリスは、ミツヤとサーシャの二人と別れたのだが、シルクはクリスの後ろをついて来た。

「なあ、シルク。ミツヤ達と一緒に街の散策に行ってくれて良いんだけど」

「いえ、奴隷である私は主と共にいます」

「あと、言葉遣いが随分と変わってしまったけど。普通に話してはくれないのか」

「これは、罪を償うものとしての私の戒めです。今までと同じでは駄目なのです」

「戒めね、自分に納得してやってるんだったらもう何も言わないよ」

「はい、有り難うございます」

 クリスが訪れたのは、セリナの居る孤児院だった。

 友人以上の関係だったのにお互いに気持ちを確かめ合う恋人にはなれなかった二人。

 アルフェリアを出る前に二人で交わした約束をクリスは思い出していた。

 もし、セリナが良い人を見つけて結婚したら必ず祝福する。

 そう言い残して旅だったのに、ドアの前まで来ると何て声を掛けたら良いのか悩んでしまう。

「今からプライベートな話をするから、ちょっと席を外してくれないか?」

 言葉だけでなくクリスの何時もと違う態度にシルクは、無言で頷くとその場から姿を消した。

 ドアをノックすると、「はーい!」と子供の元気な声が聞こえて来た。

「おおおお、クリス兄さんだ。帰って来たんだ」と、孤児院では年長になる女の子のマリーがビックリした顔でクリスを迎えた。

「ただいま。久しぶりだな、マリー、元気にしてたか?」

「うん! みんな元気だよ」

「それは良かった。ところで、セリナは居るのか」

「あっ・・・、うーん、居るけど・・・」、クリスを前にマリアは気まずそうな態度をする。

 子供ながらセリナがランドと結婚した事を気遣っているのだろう。もう、孤児院にはクリスの居場所が無いのだ。

「ははは、女の子だな。俺の事を気にしてくれているのか。ありがとう、セリナがランドと結婚したのは聞いてるから大丈夫だよ」と、マリーの頭を撫でた。

「お客さんなの?」と、奥からセリナが顔を覗かせる。

「やあ、元気だったか?」と、クリスはいつもと変わらない素振りでセリナに声を掛けた。

「えっ、クリス。もう戻らないと思っていたのに、いつ帰って来たの?」

「今日、帰った」

 赤い三角巾をかぶるエプロン姿のセリナは、マリーに台所仕事をお願いする。

「立ち話も何だから、中に入って」

「いや、遠慮しておくよ。もう、今までとは状況が違うからな」

「・・・うん?」と、セリナは首を傾げた。

「えっと、結婚おめでとう。相手は、ランドと聞いたからちょっとびっくりしたけど」

「うん、有り難う。齢は離れてるけど、良い人よ」

「そうか、幸せそうだな。何か、安心した」

「それだけ? 何か言いたいことがあるんじゃないの。顔に書いてるわよ」

「うっ・・・実は、俺も結婚したんだ」

「そうなんだ・・・、相手の方は一緒じゃないの?」

「ダンディルグ王国に居る。向こうも仕事があるから、一緒じゃないんだよ」

「そっか、それでクリスは幸せなの?」

「ああ、幸せだよ」と、照れくさそうに顎を触りながら視線を逸らした。

「それなら、良いんじゃない。お互い、幸せになったんだし」と、セリナは両手をクリスの頬に当てて自分へ顔を向けさせた。

「まだ、旅の途中でな、明日にはフリントに向かうから挨拶だけでもと思って。あと、これは結婚祝いだ。セリナのへそくりにでもしてくれ」

 クリスは、懐から金貨の入った袋をセリナに手渡した。

「今までの事、気にしているの? こんな大金貰えないわ」

「気にしていないと言ってしまうと、・・・嘘だな。フラフラしていた身勝手な男のけじめみたいなものだ、受け取ってくれたら助かるよ」

「ふーん、じゃあ遠慮なくもらっておくね。ありがとう」

「じゃあ、俺は仲間と合流しないといけないから。元気でな」

「クリスも元気で、無理しないでね」

 胸につっかえていた物が無くなり幾分か気持ちの晴れたクリスは、一度振り向き手を振った。

 別れを告げられたセリナは、過去を全く気にしていなかったし、クリスとの関係も後悔していなかった。女性は男性より気持ちの切り替えが早い。女性の方が過去は過去と割り切れるのだ。いつまでも過去に引きずられやすいのは、残念ながら男の方なのである。
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