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言い訳無用!!
しおりを挟む将来、結婚を誓いあっている二人の男女が互いに互いを見つめあっていた。
「………………」
「………………」
広い部屋の中のたった二人だけの空間。
──────だが、そこに甘酸っぱい雰囲気は微塵もない。
何故なら、屋敷の室内は張り詰めた空気で満たされているのだから。
男は、今にも失神するんじゃないかと思う程に真っ青な顔で冷や汗を滝のようにダラダラと垂れ流している。
それとはひどく対照的な少女。
汗一つ無い顔はとても穏やかなれど、笑みを浮かべている目は全くもって笑っておらず。
見るもの全てに絶対なる恐怖を与えるオーラが全身から湯気の如く目に見えて立ちのぼっている。
「………………」
「………………ねえ。コレって、一体全体どういうことなのでしょうか?」
少女が両手に持っている水晶玉。
それは、遠くの光景を録画して映し出す魔法が込められている道具。
透明度の高い球体に投影された光景は、男が見知らぬ女性と高級感溢れる品物だけを扱っている豪奢な店内でイチャついている光景だった。
『ねぇねぇ、伯爵様。この宝石とドレスを買って下さいなっ!』
『はははっ! なんでも買ってやるから遠慮をする必要はいらないぞ。なんなら、もっと高い物でも構わん。世間知らずの阿呆な小娘を騙せたからな、今後も金は使い放題だ』
『きゃ──────! 素敵──────!! じゃあじゃあ! コレもコレも、ぜんぶぜ──────んぶ買って下さいなっ!!』
『いいぞいいぞ!! じゃんじゃん選んでくれ! はっはっはっ! はぁっはっはっはっはっ──────!! 』
「………………」
「………………」
「……………………」
「……………………」
「────────で、この『世間知らずの阿呆な小娘』って誰のことでしょうか?」
どれだけ自ら口を開くのを待っても、男は何一つ発言をしなかった。
そのことに痺れを切らした少女は、自ら口を開いた。
抑揚も感情も無い声。
「ま、待ってくれ! 違う、これは何かの間違いな────────」
男が言い訳を言い切る前に、魔法によって特大の爆発が屋敷に解き放たれた。
消し炭になった元伯爵の屋敷後には、生きているのがおかしいんじゃないかと思う程に真っ黒焦げになった伯爵がピクピクと痙攣を繰り返している。
「安心して、命までは取らないから」
そう言って、ニコリという効果音が鳴りそうなぐらいに微笑む汚れも傷も全く存在していない少女。
笑ってはいるが、満足している様子はない。
男が起きていれば、少女の目は変わらず極寒の冷気を纏っていると。
恐怖の感情を相手から無理矢理にでも引き出すプレッシャーの放出が止まっていないと感じたことだろう。
その後、男の犯した最低な詐欺と浮気が少女の家族のみならず世間その他色々と広く知れ渡った。
婚約は当然ながら破棄。
彼の人生は、一生後ろ指をさされることとなったという。
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