地獄をどうぞ

谷川ベルノー

文字の大きさ
1 / 1

地獄をどうぞ

しおりを挟む

「たっ……助けてくれ! 頼む!」
「──────お前が殺したのは、俺と共に幸せな未来を歩もうと誓いあった女性だった! 」
「お願いだ! 許してくれ!!」
「将来、俺の妻となる筈だったんだ。それを、お前が!!」
「殺さないでくれ!」
「お前の都合など………………知ったことかっ!!」
「ヒィッ」


 命乞いだけを繰り返す復讐の相手に、男は怒りで吠える。


「死んだ彼女はとても優しかった。お前の命を奪うことに、あの世で心を痛めるだろう」
「……じゃっ! ……じゃあ!! 許してくれるのかよっ!?」
「────────何を愚かな勘違いをしている。例え彼女の心を痛めようとも、復讐は止めん。だが、お前をただ殺したのでは意味はない」
「……………………へっ? そっ、それはどういう意味で?」
「それは────────」


 男はそこで言葉を区切り、杖を振るった。

 すると、女を殺した男は魔法によって小さな蜥蜴へと変化したではないか。


「…………ッ!! …………ッ!?」
「────────こういうことだ。その身体で今後の人生を生きられるものなら生きてみろ。それが俺の復讐だ」


 ここの森には肉食の生物が多く、蜥蜴が食べられるものがこの森にはないも同然なほどに少ない。


 生き残るのは確実に絶望的。


 仮にどうにかして生き残り続けられたとしても、見た目の気色悪い虫を食べながら地べたを這いずりまわる未来は地獄の生活を約束されていると言っても過言ではない。




「────────じゃあな、もう二度と会うことはないだろう」

 そう言い捨てた男は、昼でも暗い森を後にして立ち去った。



 男が振り返ることは二度となかった。


しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢は手加減無しに復讐する

田舎の沼
恋愛
公爵令嬢イザベラ・フォックストーンは、王太子アレクサンドルの婚約者として完璧な人生を送っていたはずだった。しかし、華やかな誕生日パーティーで突然の婚約破棄を宣告される。 理由は、聖女の力を持つ男爵令嬢エマ・リンドンへの愛。イザベラは「嫉妬深く陰険な悪役令嬢」として糾弾され、名誉を失う。 婚約破棄をされたことで彼女の心の中で何かが弾けた。彼女の心に燃え上がるのは、容赦のない復讐の炎。フォックストーン家の膨大なネットワークと経済力を武器に、裏切り者たちを次々と追い詰めていく。アレクサンドルとエマの秘密を暴き、貴族社会を揺るがす陰謀を巡らせ、手加減なしの報復を繰り広げる。

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

ある辺境伯の後悔

だましだまし
恋愛
妻セディナを愛する辺境伯ルブラン・レイナーラ。 父親似だが目元が妻によく似た長女と 目元は自分譲りだが母親似の長男。 愛する妻と妻の容姿を受け継いだ可愛い子供たちに囲まれ彼は誰よりも幸せだと思っていた。 愛しい妻が次女を産んで亡くなるまでは…。

サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします

二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位! ※この物語はフィクションです 流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。 当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。

この離婚は契約違反です【一話完結】

鏑木 うりこ
恋愛
突然離婚を言い渡されたディーネは静かに消えるのでした。

好きな人ができたなら仕方ない、お別れしましょう

四季
恋愛
フルエリーゼとハインツは婚約者同士。 親同士は知り合いで、年が近いということもあってそこそこ親しくしていた。最初のうちは良かったのだ。 しかし、ハインツが段々、心ここに在らずのような目をするようになって……。

黒の聖女、白の聖女に復讐したい

夜桜
恋愛
婚約破棄だ。 その言葉を口にした瞬間、婚約者は死ぬ。 黒の聖女・エイトは伯爵と婚約していた。 だが、伯爵は白の聖女として有名なエイトの妹と関係をもっていた。 だから、言ってはならない“あの言葉”を口にした瞬間、伯爵は罰を受けるのだった。 ※イラストは登場人物の『アインス』です

笑う令嬢は毒の杯を傾ける

無色
恋愛
 その笑顔は、甘い毒の味がした。  父親に虐げられ、義妹によって婚約者を奪われた令嬢は復讐のために毒を喰む。

処理中です...