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地獄をどうぞ
しおりを挟む「たっ……助けてくれ! 頼む!」
「──────お前が殺したのは、俺と共に幸せな未来を歩もうと誓いあった女性だった! 」
「お願いだ! 許してくれ!!」
「将来、俺の妻となる筈だったんだ。それを、お前が!!」
「殺さないでくれ!」
「お前の都合など………………知ったことかっ!!」
「ヒィッ」
命乞いだけを繰り返す復讐の相手に、男は怒りで吠える。
「死んだ彼女はとても優しかった。お前の命を奪うことに、あの世で心を痛めるだろう」
「……じゃっ! ……じゃあ!! 許してくれるのかよっ!?」
「────────何を愚かな勘違いをしている。例え彼女の心を痛めようとも、復讐は止めん。だが、お前をただ殺したのでは意味はない」
「……………………へっ? そっ、それはどういう意味で?」
「それは────────」
男はそこで言葉を区切り、杖を振るった。
すると、女を殺した男は魔法によって小さな蜥蜴へと変化したではないか。
「…………ッ!! …………ッ!?」
「────────こういうことだ。その身体で今後の人生を生きられるものなら生きてみろ。それが俺の復讐だ」
ここの森には肉食の生物が多く、蜥蜴が食べられるものがこの森にはないも同然なほどに少ない。
生き残るのは確実に絶望的。
仮にどうにかして生き残り続けられたとしても、見た目の気色悪い虫を食べながら地べたを這いずりまわる未来は地獄の生活を約束されていると言っても過言ではない。
「────────じゃあな、もう二度と会うことはないだろう」
そう言い捨てた男は、昼でも暗い森を後にして立ち去った。
男が振り返ることは二度となかった。
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