叶わぬ願い

谷川ベルノー

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叶わぬ願い

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 頼む、壊れないでくれ。
 ────そう思うのは、これで何度目になるだろうか?

 成功を願う度に、期待は裏切られ続けていた。

 だが、今回だけは暫く待っていても何の異変も起こらない。

「──────っ!!」

(よしっ! ワシ等は、ついに完成させたぞいっ!!)

 何も起こらない嬉しさから、思わずガッツポーズ。
 成功した嬉しさから、身体が勝手に喜びを表現していた。

 このまま、何も起こらなければ男は幸福に浸ったままだった。

 だが、神様は残酷。
 そして、無慈悲で意地悪。
 彼の願いは叶えられなかった。



 完成したばかりの家からピシッという嫌な音がして、皹が入ったと気付いた時にはガ ラガラと激しく崩れ始めていた。

「ああぁ────っ! せっかく完成したお菓子の家があああああぁぁぁぁ──────!?」

 思わず、手を伸ばす。
 もちろん、それでどうにかなるなんてことはない。
 どうすることも出来ないまま、目の前で盛大に崩壊していった。

「……また……一から……建て直し……ははっ……」

 疲労のこもった乾いた笑いが、男の口から漏れた。
 今度こそはと成功を確信していただけに、今回受けたショックはかなり大きかったようだ。

「……親方。次の柱のクッキーは、もう少し硬めに焼きましょう……」

 ガックリと肩を落とした親方に向けて、弟子はポツリと呟いた。

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