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婚約は破棄させていただきます
しおりを挟む「貴方との婚約、破棄させてもらうわ」
男は、二人っきりで話したいことがあると言った女性の誘いを受けて行った人気のない静かな湖畔で衝撃的な告白をされた。
「ふざけたことを言うなっ!!一体お前になんの権利があって」
「はい、どうぞ」
男の言葉を聞く耳もたんとばかりに遮り、女性が何かを勢いよく手渡した。
男は無礼極まりないと怒鳴り散らかそうとした。
だが読まないという選択肢は認めないとばかりにグイと押し付けられては、男は受け取らざるを得ない。
「…………一体なん…………んん!?!?」
それは、文字が書かれた分厚い紙の束。
表紙には【浮気調査報告書】と書かれている。
「…………こっ…………これは…………!?」
「見ての通りだけど」
ブルブル震える男へ向けて、女性は絶対零度の如く冷たい眼差しをもって睨みつけた。
「わたしだけじゃない。よくも優しい父様と母様も騙したわね。どれだけ謝ろうが、貴方は絶対に許さないわよ」
「う、うるさいっ! 黙れ黙れええぇっ!!」
男は女性の言葉で追いうちをくらい、更に精神を追い詰められていく。
頭に血が上り、カッとなって女性へ魔法を放った。
なりふり構わずやけくそで殺されてもおかしくはない一撃。
このままであれば、直撃。
死ぬか大怪我はまぬがれない。
「………………」
──────ただしそれは、女性がただのか弱い乙女であったならばであるが──────。
「……はっ」
怒りの精神によって威力が底上げされていたはずの魔法は、軽い嘲笑と共にいとも簡単に女性にはたき落とされた。
肩に乗っていた蝿を追い払うが如く、鬱陶しいものを軽く退ける動作でだ。
「──────えっ?」
「ふんっ!!」
想像外の展開に呆けた男を無視して、女性は反撃へと移る。
一瞬で男の死角へと瞬間移動。
魔力によって強化された肉体を使い、繰り出すのは必殺の蹴り。
それは、的確に顔面へとめり込んだ。
「ぴぎぃっ!?」
肉と骨がひしゃげる音。
奇声じみた悲鳴。
男は鼻から血をダラダラと垂れ流し、白目を剥いて地面へバタンと倒れ込んだ。
「………………」
「…………ふうっ。全く、無駄に手間を取らせないでよね」
死にかけの虫を思わせる嫌な痙攣をしてはいるが、とりあえず死んではいない。
完全に気を失っている。
「それにしても、か弱い乙女を傷つけようとするなんて。──────貴方、最低以下の以下ね」
………………もしも、この場に第三者がいれば前半の言葉にツッコミをいれたであろうことを言いながら男を断罪すべく引き摺って行った。
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