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押し付けるなら、貴方がどうぞ
しおりを挟む「────────どうして、太ってくれないんだ!!」
「僕は太った女性が好みなのに!!」
「君は、僕好みに太ってくれそうだから婚約したんだ! だというのに!!」
「痩せている君なんてゴミだ! 価値なんて全くない!!」
「もう我慢できない! 婚約は破棄だ!! この駄目女!!」
婚約した女性へと一方的に喚き散らした男は、荒い息を吐いて息の調子を整える。
「────────最低ね、貴方」
「………………あっ?………………」
「あら、自分に酔ってて聞こえなかった? だったら、もう一度だけ言ってあげる。相手を無理矢理にでも自分好みに変えようなんて。最低ね、貴方」
毎日、毎日。
有り得ない量の食事をさせようとするので、流石におかしいと感じて思い問い質せば。
初めは適当に誤魔化していたが、いきなり逆上しだすなり本音を怒鳴り散らしてきた。
太りやすくて痩せにくい自分が今の体型を維持し続けるのに、どれだけ心血注いで努力しているのか。
こんな奴に理解してほしいとは思わないが────────無価値だとなじられるのは許せないし、許さない。
「そんなに太った方がお好きでしたら、貴方がなればいいじゃないの」
「………………はぁ? 君は馬鹿なのか? 大体、僕の言う事をちゃんと理解して」
相手の言葉に聞く意味なしと掻き消すように、女性は指をパチンと鳴らす。
そうすると、溢れんばかりの筋肉を身に纏った黒い服の下におさめている屈強な執事達が現れる。
「彼はふっくらとした太めの肉体が好きらしいの。だから、思う存分に肥えらせてあげてね」
「分かりやした! お嬢様!!」
「…………っ!? ちっ、違う! 自分がそうなるのは違う! 嫌だ! それだけは絶対に嫌だ!? 止めてくれ!? 頼む!!」
「──────はぁっ? 呆れた。散々わたしを太らせようとしておいて、自分だったら嫌? ………………尚更、許せない」
元から許す気は毛頭ない。
だが、さらなる怒りが心の底から沸々と湧き出してくる。
「………………執事、注文を追加するわ。存分に太りきった後で痩せさせてあげて。………………とびっきり、厳しい方法でね」
「はいっ! 了解でさぁ!!」
「ヒイィッ!?」
男は、必死の抵抗虚しく悲鳴を上げながら連れて行かれていく。
その姿は、ドラゴンに咥えられて巣に持ち帰られる哀れな獲物によく似ていた。
「頼む! 一生のお願いだ!! 助けてくれ! もう太ってほしいなんて二度と言わない! なんなら謝罪だってしてやるから!! なっ! なっ!!」
女性の返答は、大きな溜息を一つ吐いただけ。
その場から、動くことはなかった。
「その場しのぎの誠意の無い謝罪に意味があると思っているの? バイバイ、痩せるのがどれだけ大変なのか。しっかりと体験してきてね」
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