生意気令息ジゼルくんは幸せ(になりたい)。

西日すがめ

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9.黙っていれば終わるお仕置


 「ジゼル……。」
 怒りを孕んだ声、じっとりと濡れたそれには聞き覚えがあった。お兄様の声だ。どこか懐かしい気持ちになる。
 あれほど嫌だった、消し去りたい記憶が、今はそこまで気にならない。それより兄上が他人と結ばれる方が嫌だ。それなら抱かれる方がいい。いや、はっきりと僕は抱かれたがっている。
 嫌だ嫌だと逃れる度、避ける度思い起こされていた記憶。焦がれた刺激。僕の胸はあつくて、兄上の息がかかるだけで敏感に反応する。可哀想な兄上。これじゃお仕置にならない。僕は既に女に興味なんてないのだ。今興味があるのは、兄上がどんな風に僕を虐めるかだけ。どれだけ僕を痛めつけてくれるのか、大嫌いになった僕とどんな風に繋がってくれるのか、それだけ。
「あっ……!」
 ボタンを外されて、寝間着の前を広げられて、そのまま胸にキスをされる。何度も。それだけで声を上げてしまうのは情けないが、しょうがない。お兄様に散々された記憶が、触れられたことのない僕の身体を敏感にしたのだ。すぐに赤くなり触れてほしがる。なのに兄上はずっと胸のいたるところにキスを落とし、僕の腰はうねる。もどかしい。脇腹のあたりに唇が触れるとまた声を上げてしまう。唇を噛んで漏れ出ないようにすると、兄上が顔を上げる。
「噛むな。」
 ぐっと力を入れていた唇を開かせられる。歯の痕を兄上の親指が撫でる。と、続いて顔を寄せられて、僕の下唇を兄上が舌で舐める。ぞく、ぞく、となにかが、込み上げて、くる。ゆっくり、目を合わせられて、それから、唇が重なる。
 兄上の濡れた唇が何度も僕の唇を食み、いつの間にか舌が侵入してきて、僕をいっぱいにする。ぬるぬると舌が絡み合う。気持ちいい。ああ、と、兄上をこんな風にしてしまったことに、罪の意識が湧いてきて、つ、と涙が睫毛を伝って頬に零れた。
「は、それほどに嫌か、兄からこんなことをされるのが。」
 顔を歪めて兄上が笑う。ぐ、と、喉が詰まって声が出なくて、首を横に振る。
 愛していると言ったところで何になろう。僕からの愛など邪魔でしかないのに。あなたからのキスはなにより幸せなことなのに、こんな形で実現してしまったことが悲しいのです。戯言だ。僕の歪な愛のせいで兄上はこうなっているのに。
「あにうえから、の、キスは……嬉しいです……。」
 涙が止まらなくなってくる。僕のせいで。反省したって僕はきっと同じことを繰り返す。あのベッドの愛おしい時間を僕以外と過ごさないで欲しい。……こんなことになって、僕との思い出も最悪なものになってしまっただろうけど、でも、それでも独り占めできるならそれでいい。
 兄上は僕の言葉に一度目を開いてから、しかし苦しそうに視線を逸らす。
「まだそんなことを言うか。」
 胸に、また唇が触れる。噛みつかれるかと思ったのに、やわらかく触れた唇が吸い付く。舌がぬらぬらと表面を舐め、それで、その、かたくなっているところに、ぬれた舌が、ぬるりと、ふれる。
「……、っう、」
 すぐに吸われて、また舐められて、唇を噛むのを禁止された僕はただ我慢できずに声を漏らし、身体を熱くして口にたまる唾液を飲んだ。もう片方にも指が伸びてくにくにと潰される。あたまがとろけそうなほどきもちよくて、口を結ぶ。また兄上の唇が僕の唇に重ねられる。舌で開かされた口からは情けない喘ぎが次から次上がってしまう。ぬちゅ、ぬちゅ、と舌を絡められ、胸をつままれて、やさしくすりすりこすられて、おかしく、なっちゃう、ような、もう、兄上の触ってるところがあつくて、きもちよくて、兄上はきっと優しいからこんなことになっても酷くなんてできなくて、だから、ん、あ、きもちいい、きもち、むね、すごい、どっちもやだ、やだ、……っ、兄上、あに、うえ、の、指きもち、キス、ごめんなさい、ごめんなさい兄上、大好き、だいすきなのに、こんなことして、気を引いて、あにうえをきずつけてぼくばっかきもちよくなって、ひどい、ひどい弟で、
「あにうえ……、ごめん、なさい」
「謝っても無駄だ。」
「ごめんなさい、ごめんなさい……!」
 兄上を傷付けたのは僕なのだ。謝って楽になろうとしてはいけない。どれだけ反省しようと兄上の心は癒えない。まさに無駄だ。
「兄上、でも、ぼく、あ、ぅ、……ん、ん、や、」
「……まだ言い足りないのか?」
「あの、ぁ、ん……、ぅ、これ、あの、き、きもちいからぁっ、お仕置に、なら、ないです、」
「だから……そんなこと言って逃れようとしても、無駄だと言っている。」
「ちが、あ、あ!ぅ、……っあ!あ!」
 押し寄せる罪悪感に駆られて言ってみたけど、だめだった、胸をまたつねられて、でもきもちいいばっかり。こんな変態で、最悪の、僕の身体をよろこばせるだけだ。また唇が重なる。触れるだけで嬉しくなってしまう。きもちいい。兄上の身体ぜんぶに触れたい。そんな欲を満たすようなことはしてはいけないのに。
「ん……、あっ、あにうえ、」
 胸がじんじん、あつくなってきたころ、兄上の手が下の方へ伸びる。胸を舐めてキスして僕をびくびくさせながら兄上の指が、ゆっくりとそれを、なぞる。
「ああ……!!」
 触れられたことのないそこが初めての刺激に打ち震える。形を確かめるように指が上から下、下から上へと移動していき、それから、やんわりと握られる。布越しに兄上の指の形が分かる。あつくなった僕は腰が引けて、兄上に、触られているだけで、むねだってずっときもちいいのに、兄上はゆっくりと下着を脱がせて、僕の、それ、を、にぎった。それだけで、もう、達してしまいそうな、くらくらして、あたまが、おかしくなる、ような、こんな悲しい行為なのに手つきの優しさや触れ方のやわらかさのせいで胸が甘い気持ちでいっぱいになって、もう、もう、はじけてしまいそうになる。
「あっあっ、兄上、っあに、うえ、……!」
 もがく僕に兄上が口付けをする。にゅる、にゅる、兄上の舌が、僕の中を通る度僕は張り詰めていって、体温が上がって、すこし唇が離れると唾液が糸を引いて、また重なると粘着質な音を立てる。ちゅう、と舌に吸い付かれたとき、僕は、それ、から、初めて、吐精してしまった。
「握られただけで果てたか?」
 意地悪に揶揄されて俯く。僕を受け止めた兄上の手がぬるりと離れていって、兄上の顔に近づけられる。
「ごめんなさい、手、汚れてしまっ……兄上!」
 まじまじとそれを見た兄上が、それから、ゆっくり、その、それがついた、自分の手を、舐め……て、僕はそれを見て、また、なんだか、お、おかしくなってしまって、もじもじと脚をすり合わせる。
「そんなの、きたない、です……。」
「そうか?でもこっちは悦んでいる。」
 ぴん、と出したばかりの敏感なそれを、人差し指で弾かれて、情けなく鳴く。兄上は面白そうに指先でぬるぬると弄ぶ。
「あぅ、あ、あ、……っ」
 しぼんだそれは、あっけなくまた硬さを取り戻してしまう。僕は腰をくねらせて中途半端な快感に耐える。
「丁度いい。」
 そう言うと兄上は僕の脚を掴んで開かせ、太ももの内側にキスを落とす。唇が触れる度びくんびくんと身体が跳ねる。おしりの割れ目にそってぬる、ぬる、と自分の精液を塗り付けられ、また声が漏れる。くぼんでいるそこを指先で揉まれて、まだそんなところで快感を得たことがないのに、そこが、なんだか、気持ちよくて、兄上の指が少しだけ潜り込んで、ゆっくりと押し広げるように、そこをやわらかくするようにマッサージをされて、いつの間にかクリームのようなものを手に取って、たっぷりと塗られ、馴染ませるようにそこばかり、くるくると指を滑らされて、さっき出したばかりなのに僕はもう我慢できないくらいに気持ちよくなってしまって、うう、とか、あう、とか、呻いて、指が中に入ってくると違和感でそれがしゅんとしてきて、耐えながら兄上の指を受け入れる。
「余裕だな。」
 視線を逸らして息を止めてこらえていると、兄上が僕に顔を寄せる。全然余裕じゃない。気持ちいいばかりだったのがやっと少し弱まっただけだ。
「そうやって抵抗せずやり過ごしていれば終わると思ったか?」
 首を振る。抵抗しないのは嫌じゃないからだ。兄上の指を受け入れて、これに耐えておしりを解されたら、兄上が僕に入ってくることを知っているから。兄上と繋がれるのを待っている。
 ゆっくりと指が出入りして、クリームを足されて、指も増えて、兄上の長い指が僕の中を突き進む。息が上がってくる。質量が増していくたび、僕が兄上の指を受け入れる度、期待に胸が膨らんで、だんだんと、僕を開く兄上の指に、伏せた目に、視線が行ってしまう。
「兄上……。」
 強請るような声になってしまった。どうして呼んだのか分からない。胸がいっぱいで苦しい。
 ぱち、と顔を上げた兄上の目と、目が合う。深い琥珀色の瞳に僕が映っている。心臓がばくばくと大きく鳴って、縛られている手の、指先まで揺らす。
 唇を重ねられる。心臓の音はもっと大きくなる。終わって欲しいなんて微塵も思わなかった。兄上に苦しい思いをさせながら、僕はこの夜がずっと、ずっと、続けばいいと、身勝手に願っている。








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