断罪のアベル

都沢むくどり

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上弦の章 帝国内乱

ノスタルジア家の雑用係 四

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回想は終わり。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
 肉団子をお皿に移して蓋をする。

 カエデさんの所へ持って行くが、こちらに見向きもしないので置いて退散する事にした。

 それから俺は寝泊まりしている馬小屋へ向かった。

 後の事はカエデさんが何とかしてくれるだろう。

 俺は俺でこれからやることがある。

 何かって?

「クーン」

 さっきから俺の後に付いてくるクラリーチェのブラッシングだよ。

「ハッハッ」

 俺が藁にローブを敷いてあぐらをかくと、すかさず俺の上に乗っかるクラリーチェ。ここが彼女の特等席のようだ。

「よしよし」

「クゥン」

 何だかんだ言って俺の事を何度も助けてくれたクラリーチェ。

 始めから俺に好感を抱いてるのは未だ謎だが、俺が彼女に愛着を抱くのも無理はない。

「それにしてもクラリーチェ。お前、いったいいくつ魔術を使えるんだ?」

 俺は彼女の前足を軽く握って抱き抱える。

「ワン!」

 彼女はただ一度吠えると俺に抱かれるがままゆったりしだした。

 さすがにそこまでは無理か。

 櫛でブラッシングを開始すると、彼女の目はうっとりと眠そうになっている。

 ふむ、いつも手入れをしてると櫛が滑らかに動かせるな。

 ん? 足音が入口付近から聞こえた。

 カレンか?

「アベル、ちょっといいかしら」

「どうぞ」

 予想は的中。

 我が主、カレン・ノスタルジア様だ。

 今日の服装はいつも俺が見ている青が基調の服では無く、純白だった。

 そう、まるでノアのような…………。

「折り入って話があ…………」

 カレンは俺に話があるようだが、固まった。

 何だろう?

「ふんっ!」

 急に不機嫌になったようだ。

 そのまま来た道を戻っていく。

「何だったんだ? なぁ、クラリーチェ」

「zzzzzzzzzzzz…………」

 クラリーチェは既に眠っていた。

「まぁ、カレンもこれからの事を考えるとイライラしたりするよな」

 収入面の問題、領地の管理。

 彼女にはやることが山積みだ。

 俺はあくまで部外者なので、こちらからお節介を焼くことはしない。

 助けを求められたら状況次第で応じないこともないが。

 俺はクラリーチェを撫でながら、そう思うのだった。

🌓🌓🌓🌓🌓🌓🌓🌓🌓🌓🌓

「アベルのバカッ…………」

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