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第一部
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男たちは見るからに柄が悪かった。街を歩いていた人々のようにちゃんとした格好をしているものの、顔と目付きがどうにも好印象を与えてくれない。
こういった連中には耐性のあるナジカが、危険を察知してミアの手を強く引っ張った。
「ミア、戻ろう」
「まあまあ、待ちなよ」
初対面のくせに馴れ馴れしく笑う男にナジカは嫌悪感を抱いたが、ミアも顔を歪めたところを見ると、同じように感じたらしい。世にも珍しい紫の瞳がすっと射抜くように細められていた。
「何のようだ?」
男たちは答えず、ただ平べったい笑みを張り付けたまま近づいた。
「……」
ナジカとミアーシャを囲む男たちの輪が小さくなる。二人は身を寄せあったが、ナジカの目は、どうやって抜け出そうとするか隙間を探っていた。
だから反応が遅れてしまったのだろう、視界がいきなり広くなって、仰天した。
「やっぱりだ。世にも珍しい銀髪。目も緑。こりゃいい」
「返して」
取られた帽子に手を伸ばすと、掴まれた。がさがさしている手で、どんなに動かしてもびくともしない。
男たちに、もはや目的を隠すつもりはないようだった。
「二人か。王都で初仕事にゃ、ずいぶん儲けんじゃねぇ?」
「それも色モノだからな。ちいと幼いが、好事家には受けがいいだろ」
「……なんの話をしてる」
苛立った声を上げるミアにナジカは囁いた。「私たちを売るつもり」。目を見開くミアを放置し、男たちに顔を向けた。
「私を売って、ミアを見逃すことはできないの?」
「なっ」
ミアーシャはぎょっとしたが、ナジカは真剣な目で男たちを見ていた。
「ナジカ!なんて馬鹿なことを!」
「私は孤児だけど、ミアは帰る場所があるんだよ。あなたたちも、探されたら困るでしょ」
男たちは顔を見合わせた。ナジカという少女の言うことには一理ある。何しろ、他領から流れてきたばかりで、王都は馴染みが薄い。もしもの時を考えれば控えめにしておいた方が……なんていう考えは、一瞬で振り払った。
「名を上げるにゃ一人より二人だろ」
流れ者の男たちの目的は王都で一旗揚げること。もちろん悪い方向に、だ。幼い子どもの言い分をまともに聞く気もなければ、聞いたところでならず者の沽券に関わる。
「いやあ、お嬢ちゃんは友達思いなんだねえ」
軽々しくも触ろうとしてくるのを、ナジカはふいと避けた。再度周囲を見渡そうとしたところで、ミアが腰に手を伸ばしているのを見つけ、その手を押さえた。
護身刀ごと意外に強い力で握り込まれて、ミアーシャは静かに激昂した。ナジカを見捨てるつもりは端からなく、ミアーシャは流血沙汰になってもここを切り抜けるつもりであった。
(……ナジカ!)
沈黙の怒りは、しかし虚無のように暗く鈍い眼光に鎮められた。何もかも諦めたような顔でそっと首を振られる。その口は音を出さずに言葉を紡いだ。――今は、駄目。
渋々と、ミアーシャは男たちにわからないように腰から手を離した。ベルトではなくズボンに差し込む形なので、シャツに隠れれば男たちはまだその武器の存在に気づいていないようだった。
そして、ナジカはようやく見つけたのだった。後ろの奥の曲がり角に、長い金髪が毛先だけ見えた。一度は錯覚かと思ったが、見慣れた青い瞳がちらりと顔を見せ、確信した。
(……ルア……)
このタイミングで迷子を脱却しても嬉しくない。いや、いいのか。どうせこうなったからにはナジカには帰る場所などなくなる。ミアを巻き込んでしまったのは、甚だ遺憾だが。
ルアはひどく葛藤している様子だった。助けようか逃げようか、そんなところだろうか。焦っているようにも見える。
「ちょっとおじさんたちについてきてもらおうなー」
軽い口調で強く背中を押され、つんのめる。ミアも同じようになっていた。態勢を直すようにしながら、さりげなく背後に顔を向けた。悲壮な顔でいたルアとばちりと目が合う。少し驚いた。この人数相手に単身飛び込むつもりらしい。ミアも同じだが、どこまでも無謀だ。
ナジカは、ルアまで巻き込ませるつもりはなかった。
首をまたそっと振る。最後に目礼して、ナジカはもう振り返らなかった。
別れの挨拶は済ませた。となると、ナジカにやれることは最後に一つだけ。
ぎりぎりとすごい表情で連行されていくミアを見上げる。本当にお嬢様らしくなく、喧嘩っ早い性格らしい。でも、我慢してくれた。今はそう、逃げる一番の機会じゃない。ナジカは、流血沙汰だけは避けたかった。
――ミアは、絶対におうちに帰す。
もう振り返らない小さな背中を忸怩たる思いで見送ったルアは、握りこぶしを開いた。爪が食い込んで、かなり痛い。ずるずるとその場にしゃがみこんで、大きく深呼吸を繰り返した。片手には晩ごはんように買っていた食材を籠に入れて持っている。残った手を額に押しつけ、荒ぶる気持ちを押さえようとした。
(……あの子……)
どうしてあんなに冷静な顔ができたのだ。助けを求めなかったのだ。ルアの方が取り乱して、ナジカに諌められた。……どうして。
(…………立ちなさい、ルア)
またぎゅっと手のひらを握りしめる。
はぐれてしまったり、今助けにいけなかった後悔は、後でいくらでもできる。それ以上に、今しかできないことがある。早く、早く。はやる気持ちをこらえて立ち上がり、男たちが落としていったナジカの帽子を拾って、表通りに飛び出した。
ナジカたちがどこへ拐われていくのかはわからない。けれど、追跡なんて危ない、または時間の無駄になる真似をするつもりは更々なかった。
ナジカの窮状を知るのはルアただ一人。
ごった返す人々を押し退けるように、さながら波に逆らうように、城に向けて走り出したのだった。
訓練の監督を副隊長に任せ、泡を食った様子で訓練場からローナとルアを急き立てたのはアイザスだった。ローナたちの事情を知る数少ない人間であり、だからこそ誘拐というものにたいして思うところがあった。今関係ない人間も大騒ぎさせてはまずいとのことで、第四大隊の執務室に戻っていく。
ルアはその時間すら惜しく、道すがらにざっと事情を説明した。といっても、ルアが語れるのはあの路地裏に入り込んで見聞きしたことだけだ。その後の行く先も誘拐犯の規模もわからない。ルアの話を聞くのに比例して、アイザスとローナの顔はどんどん険しくなった。
「くそ!レイソル殿とは無関係なのか?」
誘拐犯が『王都で初仕事』と言っていたのでその件とは関係ないのかとアイザスは毒づく。
「……監視は何をしてたんだ」
ローナは苛立ちのまま呟いた。ローナが知る監視はアイザス一人のみ。しかし、ナジカを別で監視する人間がいるはずだった。ローナの父の事件に関係がないなら、なぜいまだに姿を見せないのか……。
そんなローナに、ルアはナジカの帽子を押し付けた。
「ローナ、お願い。ナジカを探して」
「わかってる」
「待て待て待て。まさか単身で動くつもりか?危ねぇぞ」
割って入ったアイザスは、敵の規模など事前に知らないと手は打てないだろうと言う。人拐いなら助けにいったところで人質にされる恐れもある。
ここで少し頭が冷えたルアは、そういえば、とこぼした。
「ナジカと一緒に、真っ赤な髪の子がいたの。後ろ姿だったから詳しくはわからないけど……。女の子だったのかしら?」
「どういうことだ?」
「男の子の格好してたのよ。髪は背中で三つ編みで……」
「……男装?」
ここで新たな声が乱入してきた。ここまでの道すがら、ちゃっかり後ろからついてきて、話を全部聞いていたランファロードだった。ちなみにルアはこの美貌を丸無視していたどころか存在に気づいてもいなかったのでぎょっとしていた。
「だ、誰?」
「遮ってすまない。特徴をもう少し詳しく教えてくれないだろうか?」
「え、ええと……」
困惑しながらも決してその美貌に目を眩まされたりせず、必死に記憶をたどる様子は、平素のランファロードならば感心しただろうが、今だけは別だった。なにやら嫌な予感がかなりするのである。そして聞き終えたら確信に近くなった。
(まさか。他人のそら似だと思えば……)
その一縷の望みすら、第四大隊の執務室の前で待ち受ける、顔の知れた女官長の姿に粉々に粉砕された。
「セフィアどの!」
ランファロードは部下に、第四大隊に行くとしか伝えていなかった。つまり女官長は執務室に当たりをつけていたのだろう。ひどく焦った様子で駆け寄ってくる。
「ミアーシャさまが後宮から脱走しました」
ひそりと耳打ちされ、さしものランファロードも一瞬硬直した。
残った三人は構う様子もなく執務室に入っていく。それを横目で確認したランファロードは早口に言った。
「それを知る者は?」
「私と侍女二人です。箝口令はしいておきました。セフィアどの。姫さまは……」
「十中八九街ですね」
顔をひきつらせた女官長を見て、ランファロードは薄く微笑んだ。安心させるように。大事にさせないように手配してくれた女官長を労るように。
「あの方は義兄殿下の少年時代のやんちゃっぷりを聞いてますから、街でもそれなりに馴染むことができるでしょう」
かつてはその従者だったランファロードの言葉に女官長はほっとしていた。しかし大きな問題がある。あの王女、本当に忘れそうになるが病弱なのだ。
「心配なく」
ランファロードは笑顔の種類を変えた。慈愛に満ちたそれは、狩りのような獰猛なものに変わる。
第四大隊の身内ならば彼らだけで対処させようと思ったが、もはやそうはいくまい。
「私が連れ戻します」
この忙しい中で騒動を起こしてくれて。
おてんば姫にはお説教確定である。
こういった連中には耐性のあるナジカが、危険を察知してミアの手を強く引っ張った。
「ミア、戻ろう」
「まあまあ、待ちなよ」
初対面のくせに馴れ馴れしく笑う男にナジカは嫌悪感を抱いたが、ミアも顔を歪めたところを見ると、同じように感じたらしい。世にも珍しい紫の瞳がすっと射抜くように細められていた。
「何のようだ?」
男たちは答えず、ただ平べったい笑みを張り付けたまま近づいた。
「……」
ナジカとミアーシャを囲む男たちの輪が小さくなる。二人は身を寄せあったが、ナジカの目は、どうやって抜け出そうとするか隙間を探っていた。
だから反応が遅れてしまったのだろう、視界がいきなり広くなって、仰天した。
「やっぱりだ。世にも珍しい銀髪。目も緑。こりゃいい」
「返して」
取られた帽子に手を伸ばすと、掴まれた。がさがさしている手で、どんなに動かしてもびくともしない。
男たちに、もはや目的を隠すつもりはないようだった。
「二人か。王都で初仕事にゃ、ずいぶん儲けんじゃねぇ?」
「それも色モノだからな。ちいと幼いが、好事家には受けがいいだろ」
「……なんの話をしてる」
苛立った声を上げるミアにナジカは囁いた。「私たちを売るつもり」。目を見開くミアを放置し、男たちに顔を向けた。
「私を売って、ミアを見逃すことはできないの?」
「なっ」
ミアーシャはぎょっとしたが、ナジカは真剣な目で男たちを見ていた。
「ナジカ!なんて馬鹿なことを!」
「私は孤児だけど、ミアは帰る場所があるんだよ。あなたたちも、探されたら困るでしょ」
男たちは顔を見合わせた。ナジカという少女の言うことには一理ある。何しろ、他領から流れてきたばかりで、王都は馴染みが薄い。もしもの時を考えれば控えめにしておいた方が……なんていう考えは、一瞬で振り払った。
「名を上げるにゃ一人より二人だろ」
流れ者の男たちの目的は王都で一旗揚げること。もちろん悪い方向に、だ。幼い子どもの言い分をまともに聞く気もなければ、聞いたところでならず者の沽券に関わる。
「いやあ、お嬢ちゃんは友達思いなんだねえ」
軽々しくも触ろうとしてくるのを、ナジカはふいと避けた。再度周囲を見渡そうとしたところで、ミアが腰に手を伸ばしているのを見つけ、その手を押さえた。
護身刀ごと意外に強い力で握り込まれて、ミアーシャは静かに激昂した。ナジカを見捨てるつもりは端からなく、ミアーシャは流血沙汰になってもここを切り抜けるつもりであった。
(……ナジカ!)
沈黙の怒りは、しかし虚無のように暗く鈍い眼光に鎮められた。何もかも諦めたような顔でそっと首を振られる。その口は音を出さずに言葉を紡いだ。――今は、駄目。
渋々と、ミアーシャは男たちにわからないように腰から手を離した。ベルトではなくズボンに差し込む形なので、シャツに隠れれば男たちはまだその武器の存在に気づいていないようだった。
そして、ナジカはようやく見つけたのだった。後ろの奥の曲がり角に、長い金髪が毛先だけ見えた。一度は錯覚かと思ったが、見慣れた青い瞳がちらりと顔を見せ、確信した。
(……ルア……)
このタイミングで迷子を脱却しても嬉しくない。いや、いいのか。どうせこうなったからにはナジカには帰る場所などなくなる。ミアを巻き込んでしまったのは、甚だ遺憾だが。
ルアはひどく葛藤している様子だった。助けようか逃げようか、そんなところだろうか。焦っているようにも見える。
「ちょっとおじさんたちについてきてもらおうなー」
軽い口調で強く背中を押され、つんのめる。ミアも同じようになっていた。態勢を直すようにしながら、さりげなく背後に顔を向けた。悲壮な顔でいたルアとばちりと目が合う。少し驚いた。この人数相手に単身飛び込むつもりらしい。ミアも同じだが、どこまでも無謀だ。
ナジカは、ルアまで巻き込ませるつもりはなかった。
首をまたそっと振る。最後に目礼して、ナジカはもう振り返らなかった。
別れの挨拶は済ませた。となると、ナジカにやれることは最後に一つだけ。
ぎりぎりとすごい表情で連行されていくミアを見上げる。本当にお嬢様らしくなく、喧嘩っ早い性格らしい。でも、我慢してくれた。今はそう、逃げる一番の機会じゃない。ナジカは、流血沙汰だけは避けたかった。
――ミアは、絶対におうちに帰す。
もう振り返らない小さな背中を忸怩たる思いで見送ったルアは、握りこぶしを開いた。爪が食い込んで、かなり痛い。ずるずるとその場にしゃがみこんで、大きく深呼吸を繰り返した。片手には晩ごはんように買っていた食材を籠に入れて持っている。残った手を額に押しつけ、荒ぶる気持ちを押さえようとした。
(……あの子……)
どうしてあんなに冷静な顔ができたのだ。助けを求めなかったのだ。ルアの方が取り乱して、ナジカに諌められた。……どうして。
(…………立ちなさい、ルア)
またぎゅっと手のひらを握りしめる。
はぐれてしまったり、今助けにいけなかった後悔は、後でいくらでもできる。それ以上に、今しかできないことがある。早く、早く。はやる気持ちをこらえて立ち上がり、男たちが落としていったナジカの帽子を拾って、表通りに飛び出した。
ナジカたちがどこへ拐われていくのかはわからない。けれど、追跡なんて危ない、または時間の無駄になる真似をするつもりは更々なかった。
ナジカの窮状を知るのはルアただ一人。
ごった返す人々を押し退けるように、さながら波に逆らうように、城に向けて走り出したのだった。
訓練の監督を副隊長に任せ、泡を食った様子で訓練場からローナとルアを急き立てたのはアイザスだった。ローナたちの事情を知る数少ない人間であり、だからこそ誘拐というものにたいして思うところがあった。今関係ない人間も大騒ぎさせてはまずいとのことで、第四大隊の執務室に戻っていく。
ルアはその時間すら惜しく、道すがらにざっと事情を説明した。といっても、ルアが語れるのはあの路地裏に入り込んで見聞きしたことだけだ。その後の行く先も誘拐犯の規模もわからない。ルアの話を聞くのに比例して、アイザスとローナの顔はどんどん険しくなった。
「くそ!レイソル殿とは無関係なのか?」
誘拐犯が『王都で初仕事』と言っていたのでその件とは関係ないのかとアイザスは毒づく。
「……監視は何をしてたんだ」
ローナは苛立ちのまま呟いた。ローナが知る監視はアイザス一人のみ。しかし、ナジカを別で監視する人間がいるはずだった。ローナの父の事件に関係がないなら、なぜいまだに姿を見せないのか……。
そんなローナに、ルアはナジカの帽子を押し付けた。
「ローナ、お願い。ナジカを探して」
「わかってる」
「待て待て待て。まさか単身で動くつもりか?危ねぇぞ」
割って入ったアイザスは、敵の規模など事前に知らないと手は打てないだろうと言う。人拐いなら助けにいったところで人質にされる恐れもある。
ここで少し頭が冷えたルアは、そういえば、とこぼした。
「ナジカと一緒に、真っ赤な髪の子がいたの。後ろ姿だったから詳しくはわからないけど……。女の子だったのかしら?」
「どういうことだ?」
「男の子の格好してたのよ。髪は背中で三つ編みで……」
「……男装?」
ここで新たな声が乱入してきた。ここまでの道すがら、ちゃっかり後ろからついてきて、話を全部聞いていたランファロードだった。ちなみにルアはこの美貌を丸無視していたどころか存在に気づいてもいなかったのでぎょっとしていた。
「だ、誰?」
「遮ってすまない。特徴をもう少し詳しく教えてくれないだろうか?」
「え、ええと……」
困惑しながらも決してその美貌に目を眩まされたりせず、必死に記憶をたどる様子は、平素のランファロードならば感心しただろうが、今だけは別だった。なにやら嫌な予感がかなりするのである。そして聞き終えたら確信に近くなった。
(まさか。他人のそら似だと思えば……)
その一縷の望みすら、第四大隊の執務室の前で待ち受ける、顔の知れた女官長の姿に粉々に粉砕された。
「セフィアどの!」
ランファロードは部下に、第四大隊に行くとしか伝えていなかった。つまり女官長は執務室に当たりをつけていたのだろう。ひどく焦った様子で駆け寄ってくる。
「ミアーシャさまが後宮から脱走しました」
ひそりと耳打ちされ、さしものランファロードも一瞬硬直した。
残った三人は構う様子もなく執務室に入っていく。それを横目で確認したランファロードは早口に言った。
「それを知る者は?」
「私と侍女二人です。箝口令はしいておきました。セフィアどの。姫さまは……」
「十中八九街ですね」
顔をひきつらせた女官長を見て、ランファロードは薄く微笑んだ。安心させるように。大事にさせないように手配してくれた女官長を労るように。
「あの方は義兄殿下の少年時代のやんちゃっぷりを聞いてますから、街でもそれなりに馴染むことができるでしょう」
かつてはその従者だったランファロードの言葉に女官長はほっとしていた。しかし大きな問題がある。あの王女、本当に忘れそうになるが病弱なのだ。
「心配なく」
ランファロードは笑顔の種類を変えた。慈愛に満ちたそれは、狩りのような獰猛なものに変わる。
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