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第一部
4-9
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火だ、と叫ぶ声が聞こえた。続くように破裂音が連続して鳴り、会場にいた人々の様子が一変した。仮面を付けているのに顔色がわかってしまうほど。
「逃げろ!」
「なんなの、今の音は!」
「テラスに近寄るな、窓が割れている!」
「落ち着いてください、こちらからーー」
「開かないぞ!?いつから閉まっていた!?」
「どこから出ればいいのよ!?」
とっさに腰元に手をやって、ローナは自分が今帯剣していないことに気づいた。当然だ。パーティーの場で、警備兵でもなければ武装などしているわけがない。その警備兵はどうしたのかと見渡そうとして、視界を遮る仮面に苛立った。
「全員、仮面を外せ!安全な場に逃げるに仮面は役には立たない!」
指示し慣れた人の声が一瞬だけ場を制した。ランファロードの友人の声だった気がする。そうだ仮面を外せばいいと、ローナは喜んでそれを投げ捨てたが、今度は人々の頭が邪魔だ。状況を一望できる場所を探してさまよった目が、会場の奥、両端の緩やかな螺旋を描く階段を向く。その上から、黒いローブに剣を携えた何者かがぞろぞろと現れていた。
「階段から離れて!!」
ローナが思わず声を上げると、また悲鳴が沸き起こった。人々の動揺で一気に場が乱れる。目まぐるしく変化する視界の片隅に黒い影を見た。
トーサだった。
一番早く階下へ降り立とうとしていた者のローブを鷲掴んで引きずり落とし、首を片手で押さえつけていた。どうしたのかびくんと跳ねた体から身を起こして、そのローブをちょいちょいとつつく。
「仰々しい見てくれだけのチンピラか。これなら、こまめに潰した甲斐があったな」
無意識的に集中していたローナの耳に、そう聞こえた。逃げ惑う人々のざわめきの向こう側にいるのに、なぜか鮮明に。次々と駆け下りてくるローブたちを、先に倒した者から奪った剣で淡々と、まるで簡単な作業のように斬り伏せていく。その目がふとローナを振り返った気がした。
トーサもとっくに仮面は脱ぎ捨てていた。眼帯の上から仮面は付けられなかったのだろう、片目に縦に一文字の傷痕が顕になっている。もう片方の黒目はすべての光を弾いていた。たった一瞬だけ、目が合った。
「助けてぇ!」
ローナははっと振り返った。割れ落ちた窓の奥からもローブの者たちが現れていた。まっすぐこの騒乱めがけて駆け寄り、容赦なく剣を振り上げている。すんでで誰かがその貴婦人を引っ張って攻撃を逃れた。
と、凄まじい轟音にまた視線を巡らせる。
「扉を開けた。女性を真ん中に、男性が挟むようにして出なさい。火が廊下にも燃え広がっているので上着をかざして」
「セフィアさま!」
「おお、ランファロード殿が……!」
「敷地の外にダールとハルジアの者が待機しています。焦らず、しかし急いで」
「おう、先導はダール一軍部隊長のこのおれ、デュガル・グレイドがしようぞ!ちょうど飾りの甲冑から槍を頂いたゆえな!」
「グレイドさままでいらっしゃるとは!」
「セフィアさま!私は同じティリベルに所属する者です!ご指示を!」
「武器を調達していないならグレイド殿の支援に。殿は私が務める」
少ないながら勇士が居合わせていたようだが、中でもランファロードの声は張り上げているわけでもないのにりんりんと響いている。その落ち着きっぷりに、全員がほんの少しでも安堵を覚えたようだった。
ローナも考える余裕が出てきた気がしたが、半分は錯覚だ。ローブの男たちは次々に会場へと姿を現し、逃げ道は火に巻かれている。ローナは出入り口に殺到する人々をその場から動かず遠目に見ていた。ローナも下っ端ながらティリベルの一員だ。自分の仕事はなんだろうかと考えて、すぐに決めた。
(逃げ遅れがないようにしよう)
一人ぽつんと立っていたローナの元に一人二人ローブの者が駆け寄ってきていた。素手での捕縛術を学んでいてよかったとこのときほど思ったことはない。人混みの街中で剣を振るうことなく相手を制圧する想定訓練の一環だ。
どうも素人に毛が生えた程度なのか、兵士より動きに冴えがないことも味方した。一人目が切りかかってくるのをかわして、次に襲いかかってきた相手の横へ踏み込んで足を引っかけ、たたらを踏んだ背中に肘を叩き込んだ。相手が床に倒れるのと同時に剣を手放したのが誤算だった。床を滑って離れていくので奪い取る機会がなくなった。
「げっ、ちょ、うわ」
しかも二人で終わりではなく、ローナを逃げ遅れと見て次々と襲いかかってくるとなれば、もう避けるだけで精一杯だ。しかし、ローナ自身が脱出路に向かっては、彼らも引き連れることになるので駄目だ。ランファロードの負担は少しでも軽くしたい。
(……よし)
ローナはこっそり息を吸った。周囲の敵の気配に集中して、隙間を縫うように駆け出した。この際多少の切り傷は仕方ない。層を抜けて、美しく盛られていたはずの軽食が無惨に飛び散ったテーブルの一つに飛び乗り飛び降り、下に潜り込むようにして、ちゃぶ台返しの要領でテーブルをひっくり返した。残っていた皿が落ち割れていくけたたましい音が鳴り響く。転がるテーブルを避けて飛び離れた一人に狙いをつけた。態勢を整わせないうちに、剣を持つ手を掴んで体当りする。衝撃が軽かったのか手が緩まなかったので、手首を捻りながら頭突きをかました。多分顎に当たったが、ローナの方も痛みと衝撃に目が眩んだ。
足が泳ぐのを堪えたのは根性だ。これでまた失敗したら、今度こそ死ぬ。
「っん、の、よこせ!」
やっとのことでもぎ取り、ちかちかする視界の中で勘を頼りに剣の柄で殴り倒した。
「そのまま伏せなさい」
軽く背中を押され、つんのめったローナの頭上を剣風が走った。
「武器がないまま残ったことは感心しないが、半数以上の意識を惹きつけた点は評価する。お陰で多少楽になった」
ランファロードは相変わらず淡々とした声音だったが、その動きは疾風のごとくだった。横を駆け抜けた足音に顔を上げれば、あちこちで赤い雫が飛び散っている。仮面のない容貌はやはり美しく、その白皙についた血すら汚れとは正反対のものに見える。そんな場合ではないのに少しだけ呆けたローナの腕を誰かが掴んだ。
「殿だが先の奴らにあまり離れすぎてちゃいけないからな。君で最後だ、ほら」
「え、え?ロスさま?」
ランファロードの友人は、自身が仮面を外せと言っていなかったか。なんでまだ仮面を付けているのか。
というかこの状況、ローナが逃げ遅れになっているのでは。
「思ったより火の回りが早い。出られなくなるぞ」
確かに、もう最後尾らしき人の裾が翻る扉の奥に赤い光と黒い煙が見えた。会場内に敵で起き上がっている者はほとんどいない。テラスからも階段からも侵入してくるのは打ち止めになっていた。
ロスも一つ剣を拾い上げながらローナの視線を追うようにちらりとそれらを見渡して、皮肉げに笑った。
「囮としては上々か?」
「いずれにせよこの程度の腕前ならデュガル殿でも充分です。行きますよ」
駆け出した二人に倣ってローナも剣を持ったまま会場を飛び出したが、廊下が思った以上に火に巻かれていて、思わずたじろいだ。熱気がびりびりと肌を焦がしていくようだ。油の匂いはしなかったのに、こんなに勢いよく燃えるものなのだろうか。
「剣は抜き身でも腰に差した方がいいな。姿勢は低く。いつ崩れるかわかったもんじゃないぞ」
「ローナ君、道筋は覚えているか」
「い、いえ、すみません」
「では私が先頭を」
ローナは背後となった会場――数多の死体と気絶した者たちの転がる惨劇の場を振り返る。参加者の一人も殺されず、全員が襲撃者でも、見捨てていくことにためらいがないわけではない。特に生きている者は。仕事柄修羅場には慣れはじめていても、まだまだ未熟だった。人を斬った経験があっても、殺したことまではない。でもいつかは、いやじきに、そういう場面も出てくるだろう。その時、ナジカの前でうまく笑えるだろうか。血を怖がる義妹に。
ふとローナは記憶になにかが掠めた気がしたが、辿る前にはっとした。ランファロードとロスに完全に置いていかれる形になっていた。慌てて、燃え盛る火の道へ飛び込んだ。
ナジカは遠目からその景色を目にして、頭の芯が熱くなったような冷えたような、全部の音が消えてしまったような、意味のわからない感覚に落とされた。
カイトたちの家ほどではないが大きな屋敷が、ぼうぼうに燃えている。
ルアにしがみついたのは無意識だった。つむじにルアの吐息がかかっていて、気づいたら抱きしめ返されていた。
「……セナトさま。まさかあそこのお宅で、今夜のパーティーが開かれているわけじゃないですよね?」
セナト以外が暗い色のレースのついた頭巾を被っているのは、防犯のためとか出かけに説明された。セナトは三人の乗った馬車の馬を操作して近くの通りまで来て、そこからみんなで歩いてこの屋敷の門前まで着いたところだった。真っ赤に燃え上がる屋敷があって、周囲に広い庭があって、格子の門があって。その門に沿うようにぐるりと兵士の人たちが立ち並んでいる。あちこちでカンテラの灯りが灯っていて明るく、騒がしい。
「うん、これは私も予想外。思ったより派手に……とりあえず中に入ろうか」
「入るって」
「大丈夫。門の内側にってだけ。迎えなんだから外でうろうろしてたら気づかれないよ。ローナ君にも、幽霊にもね」
セナトが門扉の側の人となにかやり取りをして、すぐに開いた隙間からするりと入り込む。入ってみて、庭にも人がいることに気づいた。みんな燃え上がる屋敷の方を気にしているようだった。
「……これはまた。セナト君。公爵殿はどこにいるかな」
「ああ、うちの上司なら反対側で逃走者の捕縛の指揮をしてますけど。どうしました?」
「クラウスさま?」
ルアの声で、ナジカは食い入るように見ていた屋敷からルアの体越しにクラウスを振り返った。頭巾を取って首を振っているところだった。
「ルア、ナジカ。セナト君から離れないように。私は少し用事ができたので、公爵殿にお会いしてくるよ。セナト君、もしローナが一人で出てきたらこれを渡してやって。おまじない程度でも多少はましになるだろうから」
「はあ……って、まじない?あの火が?そんな感じは――」
「詳しいことは後で」
「クラウス」
すぐにでも行ってしまいそうなクラウスを、ナジカもとっさに呼び止めた。
クラウスは立ち止まってくれた。ルアに片手でしがみつきながら、もう片手で縋りつこうとしたら、その手を握って、頭巾越しに頭を撫でてくれた。ナジカが今なにを思っているか、どんな記憶を今と重ねているか、全部わかってるような顔だった。
「私もローナも、ここに戻ってくる。君とルアのいるところ。だから、ここで待っていてくれるかな?」
「……ほんとうに?」
「本当に」
いつもの優しい微笑みが降ってきて、クラウスにやんわり握られた指から温かさが移ってきた。生きている人の温もりだった。
死んでない。まだ、みんな生きている。
「大丈夫」
大丈夫。ナジカは震えながらも大きく息を吸い込んで、頷いた。
「……わかった。行ってらっしゃい」
「うん。ルアも、任せたよ」
「わかりました。待っています」
しがみついているルアの体も呼吸に大きく上下したことに気づいた。ルアの声はきっぱりとしていて、ナジカをぎゅっと抱きしめる腕に力がこもる。
クラウスはルアのことも撫でて、また門を出て行った。
セナトさま、とルアが呟いた。
「私とナジカの役目はなんですか」
「役目はないよ。これはただのお節介で、余計なお世話で、賭けだ。安全は絶対だから、君たちの仕事は待つだけ。我慢してね」
「ローナと、幽霊を、ですね」
二人の会話をよそに、ナジカは燃え盛る屋敷の方に視線を戻していた。背中を包む温もりに正気を浸らせながら、火の粉や黒い煙が舞う光景をひたりと見つめている。玄関らしきところが動いた気がして身動ぎすると、ルアの腕の囲いが強くなった。
「誰かいる」
ナジカが呟いたように気づいた人々もいて、数人が用心しながら寄っていった。玄関が跳ね飛ばされるように開かれて、勢いよく誰かが飛び出してきた。ローナかと思ったら違った。もっと大きくて、長い棒みたいなものを持っていた。逆光で影になってるけど多分ローナじゃない。後ろから次々に人が出てきて、今さらローナ以外の人もいたということに気づいた。セナトが近づけさせないように腕を伸ばして通せんぼするので、その場でルアと二人で、ローナの姿を探した。
だけど、まだ出てきていない。多分。
「ローナ!」
ルアが叫ぶように呼んだ。そうだ、呼べばいいんだ。絶対に帰ってくるんだから、呼んだら出てくる。だってローナは前に、いなくならないって約束してくれた。
「ローナ!」
ナジカも声を上げるけれど、出てきた人たちのところに人が集まってきて騒がしくなっている。聞こえないかもしれないと思った。だったら、何度でも呼ぶしかない。
わいわいがやがや、怒鳴り声も悲鳴も聞こえてくる。怪我人はこちらへ、水を早く、閣下どこへ、うるさい後ろに回って少しでも喋れる賊を叩くのだ!無茶はやめてくださいってば!
「ローナ!」
玄関から出てくるのが止まった。もうみんな出てきた?でもローナはこっちに来ない。どこにいるんだろう。ナジカはルアと身を寄せ合いながら必死に名前を繰り返した。
するとこれで最後、というように玄関から三人ぽっと飛び出てきた。全力で叫ぶと最後の一人が、進路を変えてまっすぐこちらめがけてやって来た。
「ローナ」
本当に出てきた。ほっとして、嬉しくて、ローナにぶんぶん手を振った。
「ルア!ナジカ!なんでここに……」
赤く光る剣を持って近寄ってきたローナは、途中でなにか思い出したように足を緩めて、一度、屋敷を振り返った。
そしてまたこっちを見た。すごい勢いだった。
「トーサは!?」
え、とナジカは固まった。ルアはきょとんとして、セナトが「一人で出てこないよ、彼は」と返している。
ローナの足が完全に止まっていた。肩が息に合わせて揺れている。顔色は影でわからない。けれど、また動き始めるのは早かった。
「あんの馬鹿!そんでおれも馬鹿だった!!」
「ちょっと、ローナ!?どこ行ってるの!?」
「うわ、クラウスさまの言った通りになった。ローナ君、これもらって!」
また屋敷に向かって駆け出したローナの背中に、セナトがなにかを放り投げた。ローナは見もせずにそれを掴みとってなお、止まらない。セナトの声がそれを追いかけた。
「まじない程度なら効くって。多分火に撒けばいいよ」
ローナはちゃんと聞こえているのだろうか。わからない。わからないまま、人ががやがやしている間を一直線に走り抜けて、玄関の形の火の輪の奥に消えていってしまった。みんなぎょっとして玄関を振り返っていた。
「ええ……まさか躊躇なく戻ってくなんて思ってなかった」
「セナトさま、一体どういう……何なんですか。ローナは何をしてるんですか」
「幽霊を引きずり戻しにってところかな」
「あの火の中を!?」
「おいセナ」
「ケイ。君も今の見てた?」
ひらりと門を飛び越えるように出てきたケイトは「ああ」と頷いて、呆れたように眩しそうに目を細めて屋敷を見つめていた。
「勝算は?」
「私もさすがにちょっとわからない。あれ、本物の火だよね」
「まやかしなら火傷なんてしねえだろ。あいつわかってて逆戻りしたのか」
「私も行きます!」
「やめろ、金。お前じゃ無理だ」
「髪色で人を呼ぶのやめてくれます!?」
「銀チビ、おい、生きてるか」
ケイトがナジカの肩を強めに揺さぶって、我に返った。息を忘れていた。必死に吸い込んで吐いた空気は熱い。灰っぽいなにかが喉に引っかかる。
「トーサ、って、言った?」
震えた掠れ声は、ケイトにしっかり聞こえたようだった。ケイトはナジカと目を合わせて、すぐに逸らした。それだけでも充分だった。
「トーサ、が」
あの、ぼうぼうに燃えている屋敷に、ローナとトーサがいる。ナジカの二人の兄が。
「クラウスさまがカイトに会いに行ったから、術師は確実にいると思う。今からでも探す?」
「そうだな。少しはましになるだろ。――銀チビ、止まれ」
確かめないと。踏み出した足はひょいっと浮いて、そのままルアにぶつけられた。ルア。そうだ、ルアがここにいる。
行けない。ルアが独りぼっちになってしまう。
ナジカはどうしようもなくなって、行き場のない手でルアに抱きついた。ルアも、きついくらいナジカの背中を抱きしめた。
そうして二人で、ローナの消えていった炎の先を、じっと見つめ続けた。
「逃げろ!」
「なんなの、今の音は!」
「テラスに近寄るな、窓が割れている!」
「落ち着いてください、こちらからーー」
「開かないぞ!?いつから閉まっていた!?」
「どこから出ればいいのよ!?」
とっさに腰元に手をやって、ローナは自分が今帯剣していないことに気づいた。当然だ。パーティーの場で、警備兵でもなければ武装などしているわけがない。その警備兵はどうしたのかと見渡そうとして、視界を遮る仮面に苛立った。
「全員、仮面を外せ!安全な場に逃げるに仮面は役には立たない!」
指示し慣れた人の声が一瞬だけ場を制した。ランファロードの友人の声だった気がする。そうだ仮面を外せばいいと、ローナは喜んでそれを投げ捨てたが、今度は人々の頭が邪魔だ。状況を一望できる場所を探してさまよった目が、会場の奥、両端の緩やかな螺旋を描く階段を向く。その上から、黒いローブに剣を携えた何者かがぞろぞろと現れていた。
「階段から離れて!!」
ローナが思わず声を上げると、また悲鳴が沸き起こった。人々の動揺で一気に場が乱れる。目まぐるしく変化する視界の片隅に黒い影を見た。
トーサだった。
一番早く階下へ降り立とうとしていた者のローブを鷲掴んで引きずり落とし、首を片手で押さえつけていた。どうしたのかびくんと跳ねた体から身を起こして、そのローブをちょいちょいとつつく。
「仰々しい見てくれだけのチンピラか。これなら、こまめに潰した甲斐があったな」
無意識的に集中していたローナの耳に、そう聞こえた。逃げ惑う人々のざわめきの向こう側にいるのに、なぜか鮮明に。次々と駆け下りてくるローブたちを、先に倒した者から奪った剣で淡々と、まるで簡単な作業のように斬り伏せていく。その目がふとローナを振り返った気がした。
トーサもとっくに仮面は脱ぎ捨てていた。眼帯の上から仮面は付けられなかったのだろう、片目に縦に一文字の傷痕が顕になっている。もう片方の黒目はすべての光を弾いていた。たった一瞬だけ、目が合った。
「助けてぇ!」
ローナははっと振り返った。割れ落ちた窓の奥からもローブの者たちが現れていた。まっすぐこの騒乱めがけて駆け寄り、容赦なく剣を振り上げている。すんでで誰かがその貴婦人を引っ張って攻撃を逃れた。
と、凄まじい轟音にまた視線を巡らせる。
「扉を開けた。女性を真ん中に、男性が挟むようにして出なさい。火が廊下にも燃え広がっているので上着をかざして」
「セフィアさま!」
「おお、ランファロード殿が……!」
「敷地の外にダールとハルジアの者が待機しています。焦らず、しかし急いで」
「おう、先導はダール一軍部隊長のこのおれ、デュガル・グレイドがしようぞ!ちょうど飾りの甲冑から槍を頂いたゆえな!」
「グレイドさままでいらっしゃるとは!」
「セフィアさま!私は同じティリベルに所属する者です!ご指示を!」
「武器を調達していないならグレイド殿の支援に。殿は私が務める」
少ないながら勇士が居合わせていたようだが、中でもランファロードの声は張り上げているわけでもないのにりんりんと響いている。その落ち着きっぷりに、全員がほんの少しでも安堵を覚えたようだった。
ローナも考える余裕が出てきた気がしたが、半分は錯覚だ。ローブの男たちは次々に会場へと姿を現し、逃げ道は火に巻かれている。ローナは出入り口に殺到する人々をその場から動かず遠目に見ていた。ローナも下っ端ながらティリベルの一員だ。自分の仕事はなんだろうかと考えて、すぐに決めた。
(逃げ遅れがないようにしよう)
一人ぽつんと立っていたローナの元に一人二人ローブの者が駆け寄ってきていた。素手での捕縛術を学んでいてよかったとこのときほど思ったことはない。人混みの街中で剣を振るうことなく相手を制圧する想定訓練の一環だ。
どうも素人に毛が生えた程度なのか、兵士より動きに冴えがないことも味方した。一人目が切りかかってくるのをかわして、次に襲いかかってきた相手の横へ踏み込んで足を引っかけ、たたらを踏んだ背中に肘を叩き込んだ。相手が床に倒れるのと同時に剣を手放したのが誤算だった。床を滑って離れていくので奪い取る機会がなくなった。
「げっ、ちょ、うわ」
しかも二人で終わりではなく、ローナを逃げ遅れと見て次々と襲いかかってくるとなれば、もう避けるだけで精一杯だ。しかし、ローナ自身が脱出路に向かっては、彼らも引き連れることになるので駄目だ。ランファロードの負担は少しでも軽くしたい。
(……よし)
ローナはこっそり息を吸った。周囲の敵の気配に集中して、隙間を縫うように駆け出した。この際多少の切り傷は仕方ない。層を抜けて、美しく盛られていたはずの軽食が無惨に飛び散ったテーブルの一つに飛び乗り飛び降り、下に潜り込むようにして、ちゃぶ台返しの要領でテーブルをひっくり返した。残っていた皿が落ち割れていくけたたましい音が鳴り響く。転がるテーブルを避けて飛び離れた一人に狙いをつけた。態勢を整わせないうちに、剣を持つ手を掴んで体当りする。衝撃が軽かったのか手が緩まなかったので、手首を捻りながら頭突きをかました。多分顎に当たったが、ローナの方も痛みと衝撃に目が眩んだ。
足が泳ぐのを堪えたのは根性だ。これでまた失敗したら、今度こそ死ぬ。
「っん、の、よこせ!」
やっとのことでもぎ取り、ちかちかする視界の中で勘を頼りに剣の柄で殴り倒した。
「そのまま伏せなさい」
軽く背中を押され、つんのめったローナの頭上を剣風が走った。
「武器がないまま残ったことは感心しないが、半数以上の意識を惹きつけた点は評価する。お陰で多少楽になった」
ランファロードは相変わらず淡々とした声音だったが、その動きは疾風のごとくだった。横を駆け抜けた足音に顔を上げれば、あちこちで赤い雫が飛び散っている。仮面のない容貌はやはり美しく、その白皙についた血すら汚れとは正反対のものに見える。そんな場合ではないのに少しだけ呆けたローナの腕を誰かが掴んだ。
「殿だが先の奴らにあまり離れすぎてちゃいけないからな。君で最後だ、ほら」
「え、え?ロスさま?」
ランファロードの友人は、自身が仮面を外せと言っていなかったか。なんでまだ仮面を付けているのか。
というかこの状況、ローナが逃げ遅れになっているのでは。
「思ったより火の回りが早い。出られなくなるぞ」
確かに、もう最後尾らしき人の裾が翻る扉の奥に赤い光と黒い煙が見えた。会場内に敵で起き上がっている者はほとんどいない。テラスからも階段からも侵入してくるのは打ち止めになっていた。
ロスも一つ剣を拾い上げながらローナの視線を追うようにちらりとそれらを見渡して、皮肉げに笑った。
「囮としては上々か?」
「いずれにせよこの程度の腕前ならデュガル殿でも充分です。行きますよ」
駆け出した二人に倣ってローナも剣を持ったまま会場を飛び出したが、廊下が思った以上に火に巻かれていて、思わずたじろいだ。熱気がびりびりと肌を焦がしていくようだ。油の匂いはしなかったのに、こんなに勢いよく燃えるものなのだろうか。
「剣は抜き身でも腰に差した方がいいな。姿勢は低く。いつ崩れるかわかったもんじゃないぞ」
「ローナ君、道筋は覚えているか」
「い、いえ、すみません」
「では私が先頭を」
ローナは背後となった会場――数多の死体と気絶した者たちの転がる惨劇の場を振り返る。参加者の一人も殺されず、全員が襲撃者でも、見捨てていくことにためらいがないわけではない。特に生きている者は。仕事柄修羅場には慣れはじめていても、まだまだ未熟だった。人を斬った経験があっても、殺したことまではない。でもいつかは、いやじきに、そういう場面も出てくるだろう。その時、ナジカの前でうまく笑えるだろうか。血を怖がる義妹に。
ふとローナは記憶になにかが掠めた気がしたが、辿る前にはっとした。ランファロードとロスに完全に置いていかれる形になっていた。慌てて、燃え盛る火の道へ飛び込んだ。
ナジカは遠目からその景色を目にして、頭の芯が熱くなったような冷えたような、全部の音が消えてしまったような、意味のわからない感覚に落とされた。
カイトたちの家ほどではないが大きな屋敷が、ぼうぼうに燃えている。
ルアにしがみついたのは無意識だった。つむじにルアの吐息がかかっていて、気づいたら抱きしめ返されていた。
「……セナトさま。まさかあそこのお宅で、今夜のパーティーが開かれているわけじゃないですよね?」
セナト以外が暗い色のレースのついた頭巾を被っているのは、防犯のためとか出かけに説明された。セナトは三人の乗った馬車の馬を操作して近くの通りまで来て、そこからみんなで歩いてこの屋敷の門前まで着いたところだった。真っ赤に燃え上がる屋敷があって、周囲に広い庭があって、格子の門があって。その門に沿うようにぐるりと兵士の人たちが立ち並んでいる。あちこちでカンテラの灯りが灯っていて明るく、騒がしい。
「うん、これは私も予想外。思ったより派手に……とりあえず中に入ろうか」
「入るって」
「大丈夫。門の内側にってだけ。迎えなんだから外でうろうろしてたら気づかれないよ。ローナ君にも、幽霊にもね」
セナトが門扉の側の人となにかやり取りをして、すぐに開いた隙間からするりと入り込む。入ってみて、庭にも人がいることに気づいた。みんな燃え上がる屋敷の方を気にしているようだった。
「……これはまた。セナト君。公爵殿はどこにいるかな」
「ああ、うちの上司なら反対側で逃走者の捕縛の指揮をしてますけど。どうしました?」
「クラウスさま?」
ルアの声で、ナジカは食い入るように見ていた屋敷からルアの体越しにクラウスを振り返った。頭巾を取って首を振っているところだった。
「ルア、ナジカ。セナト君から離れないように。私は少し用事ができたので、公爵殿にお会いしてくるよ。セナト君、もしローナが一人で出てきたらこれを渡してやって。おまじない程度でも多少はましになるだろうから」
「はあ……って、まじない?あの火が?そんな感じは――」
「詳しいことは後で」
「クラウス」
すぐにでも行ってしまいそうなクラウスを、ナジカもとっさに呼び止めた。
クラウスは立ち止まってくれた。ルアに片手でしがみつきながら、もう片手で縋りつこうとしたら、その手を握って、頭巾越しに頭を撫でてくれた。ナジカが今なにを思っているか、どんな記憶を今と重ねているか、全部わかってるような顔だった。
「私もローナも、ここに戻ってくる。君とルアのいるところ。だから、ここで待っていてくれるかな?」
「……ほんとうに?」
「本当に」
いつもの優しい微笑みが降ってきて、クラウスにやんわり握られた指から温かさが移ってきた。生きている人の温もりだった。
死んでない。まだ、みんな生きている。
「大丈夫」
大丈夫。ナジカは震えながらも大きく息を吸い込んで、頷いた。
「……わかった。行ってらっしゃい」
「うん。ルアも、任せたよ」
「わかりました。待っています」
しがみついているルアの体も呼吸に大きく上下したことに気づいた。ルアの声はきっぱりとしていて、ナジカをぎゅっと抱きしめる腕に力がこもる。
クラウスはルアのことも撫でて、また門を出て行った。
セナトさま、とルアが呟いた。
「私とナジカの役目はなんですか」
「役目はないよ。これはただのお節介で、余計なお世話で、賭けだ。安全は絶対だから、君たちの仕事は待つだけ。我慢してね」
「ローナと、幽霊を、ですね」
二人の会話をよそに、ナジカは燃え盛る屋敷の方に視線を戻していた。背中を包む温もりに正気を浸らせながら、火の粉や黒い煙が舞う光景をひたりと見つめている。玄関らしきところが動いた気がして身動ぎすると、ルアの腕の囲いが強くなった。
「誰かいる」
ナジカが呟いたように気づいた人々もいて、数人が用心しながら寄っていった。玄関が跳ね飛ばされるように開かれて、勢いよく誰かが飛び出してきた。ローナかと思ったら違った。もっと大きくて、長い棒みたいなものを持っていた。逆光で影になってるけど多分ローナじゃない。後ろから次々に人が出てきて、今さらローナ以外の人もいたということに気づいた。セナトが近づけさせないように腕を伸ばして通せんぼするので、その場でルアと二人で、ローナの姿を探した。
だけど、まだ出てきていない。多分。
「ローナ!」
ルアが叫ぶように呼んだ。そうだ、呼べばいいんだ。絶対に帰ってくるんだから、呼んだら出てくる。だってローナは前に、いなくならないって約束してくれた。
「ローナ!」
ナジカも声を上げるけれど、出てきた人たちのところに人が集まってきて騒がしくなっている。聞こえないかもしれないと思った。だったら、何度でも呼ぶしかない。
わいわいがやがや、怒鳴り声も悲鳴も聞こえてくる。怪我人はこちらへ、水を早く、閣下どこへ、うるさい後ろに回って少しでも喋れる賊を叩くのだ!無茶はやめてくださいってば!
「ローナ!」
玄関から出てくるのが止まった。もうみんな出てきた?でもローナはこっちに来ない。どこにいるんだろう。ナジカはルアと身を寄せ合いながら必死に名前を繰り返した。
するとこれで最後、というように玄関から三人ぽっと飛び出てきた。全力で叫ぶと最後の一人が、進路を変えてまっすぐこちらめがけてやって来た。
「ローナ」
本当に出てきた。ほっとして、嬉しくて、ローナにぶんぶん手を振った。
「ルア!ナジカ!なんでここに……」
赤く光る剣を持って近寄ってきたローナは、途中でなにか思い出したように足を緩めて、一度、屋敷を振り返った。
そしてまたこっちを見た。すごい勢いだった。
「トーサは!?」
え、とナジカは固まった。ルアはきょとんとして、セナトが「一人で出てこないよ、彼は」と返している。
ローナの足が完全に止まっていた。肩が息に合わせて揺れている。顔色は影でわからない。けれど、また動き始めるのは早かった。
「あんの馬鹿!そんでおれも馬鹿だった!!」
「ちょっと、ローナ!?どこ行ってるの!?」
「うわ、クラウスさまの言った通りになった。ローナ君、これもらって!」
また屋敷に向かって駆け出したローナの背中に、セナトがなにかを放り投げた。ローナは見もせずにそれを掴みとってなお、止まらない。セナトの声がそれを追いかけた。
「まじない程度なら効くって。多分火に撒けばいいよ」
ローナはちゃんと聞こえているのだろうか。わからない。わからないまま、人ががやがやしている間を一直線に走り抜けて、玄関の形の火の輪の奥に消えていってしまった。みんなぎょっとして玄関を振り返っていた。
「ええ……まさか躊躇なく戻ってくなんて思ってなかった」
「セナトさま、一体どういう……何なんですか。ローナは何をしてるんですか」
「幽霊を引きずり戻しにってところかな」
「あの火の中を!?」
「おいセナ」
「ケイ。君も今の見てた?」
ひらりと門を飛び越えるように出てきたケイトは「ああ」と頷いて、呆れたように眩しそうに目を細めて屋敷を見つめていた。
「勝算は?」
「私もさすがにちょっとわからない。あれ、本物の火だよね」
「まやかしなら火傷なんてしねえだろ。あいつわかってて逆戻りしたのか」
「私も行きます!」
「やめろ、金。お前じゃ無理だ」
「髪色で人を呼ぶのやめてくれます!?」
「銀チビ、おい、生きてるか」
ケイトがナジカの肩を強めに揺さぶって、我に返った。息を忘れていた。必死に吸い込んで吐いた空気は熱い。灰っぽいなにかが喉に引っかかる。
「トーサ、って、言った?」
震えた掠れ声は、ケイトにしっかり聞こえたようだった。ケイトはナジカと目を合わせて、すぐに逸らした。それだけでも充分だった。
「トーサ、が」
あの、ぼうぼうに燃えている屋敷に、ローナとトーサがいる。ナジカの二人の兄が。
「クラウスさまがカイトに会いに行ったから、術師は確実にいると思う。今からでも探す?」
「そうだな。少しはましになるだろ。――銀チビ、止まれ」
確かめないと。踏み出した足はひょいっと浮いて、そのままルアにぶつけられた。ルア。そうだ、ルアがここにいる。
行けない。ルアが独りぼっちになってしまう。
ナジカはどうしようもなくなって、行き場のない手でルアに抱きついた。ルアも、きついくらいナジカの背中を抱きしめた。
そうして二人で、ローナの消えていった炎の先を、じっと見つめ続けた。
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