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アイリスの実力!
しおりを挟む朝目覚めると、身体に重さを感じた。
どうせ、いつものやつだろう。
そう思い毛布を捲ると、やはり俺の胸に抱きつく猫獣人のレリムがいた。
「むにゃむにゃ~……すぴぃ~ZZZ」
可愛いらしい寝顔に癒やされる。
ふと左側に温もりを感じ視線を向けると、アイリスが俺の腕を枕にして眠っている。
「ォンンZZZ……おっ……お兄様ひどぃ……使い捨ての女にしないでォン……すぴぃ~」
どんな夢見てんだよ!!!
アイリスは悪夢にうなされ、夢の中の俺は酷い男のようだ。
ニートでヒモのような行動をする俺が、正しい人間かと問われれば、そうではないが、人を使い捨てにしたりはしない。
「ああ、お兄様だめぇ……私はまだ12才ですォン……そんな事したら15才の大人の女になってしまいますぅぅ。。。わぉん♥」
夢の中の俺は何をやってるんだ!?
12才が15才になるって、そんなに変わってないからキスだよな?
頼むからキスだと言ってくれ!
「・・・ポッ♥」
これ以上はいかん!
アイリスを揺すって起こす。
「すぴぃ~……あっ!……あれ?……夢だったォン?……あとちょっとでしたのにぃぃ……くぅん」
ふぅ~危ないところだった。
ぎりぎりセーフで間に合ったみたいだ。
この娘の将来は大丈夫だろうか……一抹の不安を覚えてしまう!
眠っているレリムも起こし皆で朝食をとる。
先程まで悪夢にうなされていたアイリスが食事の手を止めて、俺の方を真剣な眼差しで見つめている。
「お兄様……お願いがありますォン!」
何かを決意したかのような、声に力がある。
「どうしたんだ?」
「武器がほしいですぉん……」
いきなり、どうしたのだろうか。
昨日は冒険者の男達に怯え、戦う意志なんて感じなかったのに。
そんな彼女が、なぜ武器を欲しいなんて、言うんだろうか
「わぉん! わたし……気づいたんです!」
「今のままでは駄目なんですォン!」
「私は弱くて役立たずで、何もできない無能な獣人です。
でも……だけど……このままお兄様に守られているだけじゃ、いつまで経っても変わらないォン……」
話を聞いていると、なぜか分からないないが、俺の目から涙が溢れてくる。
俺だって無能の役立たずだが、アイリスは違った。
自分の弱さに気づいて変わろうとしている。
熱い想いが情熱になって伝わってくる。
分かる! 分かるよアイリス!
お前は変わろうとしてるんだろう……
「私は強くなって、いつしか王様になるお兄様を……」
うんうん王様な……王様???
話の流れ変わってないか?
「守りたいんです! わぉん♥」
途中までは感動的な感じだったが、言葉の中に王様が出てきた辺りで、涙がいっきに引いた。
あ……なんとなく分かった。
俺が昨日助けたから、白馬の王子様か何かと勘違いしてるんだろう!
「ごめんな! 俺は白馬の王子様ではないんだ」
「いま真剣な話しニャ! ふざけちゃ駄目ニャ」
レリムに注意されてしまった。
俺は別にフザケてるつもりは、ないんだが。
「お兄様、お願いしますォン! どうか、わたしに、武器をください」
話は全然分からないが、気持ちは伝わってきた!
今のままでは駄目、変わりたい、強くなりたいという意思に嘘はないはずだ。
「分かった。 ちょっと待っててくれ」
別に武器を与えるのはいい。
アイリスも冒険者ギルドに登録させる予定なので、護身用に持たせておいた方がいいだろう。
問題は手持ちに武器が無く、通販で買えるかどうかだ。
スキルを使い念じる……
・・・ ・・・ 該当なし!
銃とか出てこないか期待したがダメだった。
他にないだろうか、武器になりそうな物。
・・・ ・・・ 工芸品……刀。
頭の中に項目が現れる。
そうか刀は芸術、だから工芸品なのか!
《無名の小太刀》 400,000
無名の職人が打った刀。
値段は高いが無難だろう。
普通の刀より少し短く、幼いアイリスにピッタリの大きさだ。
手持ちのお金ほとんどを使う事になるが構わない。
せっかく戦う気になった彼女のためだ!
全財産を使い購入した《無名の小太刀》をアイリスに渡す。
「ほわぁ~!!! お兄様からいただいて、しまいましたォン」
「わぉん! これでモンスターにも勝てます」
意気込むアイリスは鞘から刀を抜き、嬉しいそうに尻尾を振っている。
銀狼獣人は己の強さを信じ、素手で戦うのが誇りのようだが。
非力で弱い彼女はプライドを捨て、武器を使うことにした。
「獣人が武器を使って戦えば、めちゃくちゃ強いはずだ!」
俺が強くなる事はない、だけど仲間達は違う。
サポートできるように、頑張らないといけない。
スーシーロへ向かう道中で、現れたモンスターはアイリスに始末させる。
彼女に戦闘経験を積ませるため、レリムには控えてもらい、ヤバそうなモンスターが出てきた時だけ活躍してもらう。
「ニャ! いるニャ」
索敵能力の高いレリムが、敵の存在を感知したようだ。
少し先の方から歩いてくる猪のモンスターに、内股で震えながら刀を構えるアイリス。
「お兄様ぁぁ……怖いですぅぅぅ……ぉん」
先程の決意表明は何だったのか……怯えて俺に抱きつく。
いきなり戦わせるのは無理だった、あとはレリムに頼るしかないようだ。
「ふにゃ~しかたないニャ」
まったくヤル気のないレリム。
彼女から言わせれば雑魚で、本気を出すまでもないのだろう。
「ビッグボアは美味しいニャ!」
ビッグボアと呼ばれた猪のモンスターは俺達の存在に気づき、豚声をあげながら猪突猛進してくる。
レリムは避けずに真正面から攻撃を受け、ボアの牙を両手で掴んで動きを止めてしまう。
「ブヒィブヒイイイィィィ……ブヒィ?」
必死に足を動かすが一向に前に進まない。
レリムが完全にパワーで勝っているようだ。
「危ないから牙と足はへし折るニャ!」
蹴りで前脚を一本、両手で獰猛な牙を破壊する。
レリムなら楽勝で倒せるはずなのに、なぜかトドメを刺さずに敵の攻撃力だけを削いだ。
「そうか、分かったぞ!
アイリスにトドメを刺させるつもりだな」
呼ばれたアイリスは、まだ怖いのか震えている。
ビッグボアが倒れている今がチャンスなんだが……
「やれるかアイリス」
「やりますォン!」
力強い返事とともに、ゆっくりと近づいていく。
大丈夫だろうか……頭に不安がチラつく。
「わぉん……お兄様のため! えいえい」
アイリスは両手で刀を握り、一生懸命ビッグボアの首を叩いているが、そんなにダメージを与えられていない。
刀は叩くものではなく、切るのを目的とした武器だ。
その事を彼女に伝える。
「叩くではなく、切る! やってみますォン」
「わたしは強くなるって決めたォン! えい! やぁー」
どうにか、こうにかモンスターを倒した。
滅多切りにしたため服が汚れている、町に着いたら新しい服を買ってあげよう。
引き続きモンスターが現れたらアイリスに戦闘を任せる。
結果ゴブリンと、蟻のモンスターであるキラーアントには1人でも勝てるぐらいまで成長した。
「はぁ……はぁ……お、お兄様やりました! わぉん」
「ああ! よく頑張ったな。 偉いぞアイリス」
始めの方はビビっていたが、今日1日でゴブリンを倒せるようになったのは上出来だろう。
基礎体力が低いのか息が荒い、そろそろ休ませよう。
「お疲れさん! 今日はもう戦わなくていい」
「ほわぁ~ つ、疲れましたォン」
「よく頑張ったニャ! あとは任せるニャ!」
ここからは全部レリムが引き受けてくれる。
普通ならモンスターに出会おうと思っても、なかなか会えないものだが、彼女なら何処にいるか分かる。
「ニャニャ! 見つけたニャ!」
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