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【第4章】 三日月峠の戦い
25 カーナvs魔道具使い②
しおりを挟む木の幹の上でカーナは自分でも分かるほどに激しく混乱して焦っていた。
激痛に耐えるように頭を押さえる。
”どっちだ!?”
2人の内のどちらかだ
それは分かっているんだ
だって甲冑を着ているのはあの2人だけなのだから
自分自身の心を安心させるように静かに空気を吐き出す。
今出来ることは考えること
どんな小さなことでも注意深く観察して見逃さないこと
そして落ち着いてカーナは分析する
まず甲冑を着ていない他の2人は普通の兵士の格好
鎧と言っても心臓を守る胸当てや、足を守るグリーブ、手や手首を守るガンドレット、見るからに軽装備、実力にもよるが殺すのは容易いだろう。
だがしかし全身を銀色の甲冑を着た2人は別だ、巨大な岩石を着込んでいるようなムンガルほどとは言わないまでも、体のほとんどが守られている。
唯一守られていないのは首部分ぐらいか。
本来ならあの位置にはラッパーと呼ばれる喉を守る防具が取り付けられるのだが…
しばらくは戦闘が無いと高をくくってすぐにフルフェイスのヘルムを脱げるようにしているといった所だろう。
あの2人を殺すのならば喉部分、首が手っ取り早いだろう。
不意打ちならばなお簡単だ。
そう、あとはどっちが魔道具使いか
それが問題だ
一度本陣へ帰ってムンガルに更に詳しい人相を聞くべきか?
いや、マリアンヌ様の私を送り出したときの急かし方を考えると、一度戻るという行動こそが一番の愚考。
何かヒントは無いのか?
カーナは目を凝らす
そして聴覚を尖らせる
今こそ全神経をかけるとき
体格、声から2人とも男。
年齢は全身の甲冑から不明、しかし声質から若いだろう。
2人とも顔まで隠れる甲冑を着けている。
だがムンガルが普段着けている物よりも数倍強度は低そう、しかしその分動きやすそう。
カーナの中にふつふつと怒りの感情が湧いてくる。
あのムンガルのおっさんめ!
何がフルアーマーの甲冑だ!
2人いるじゃないか!
しかも同じ甲冑で背格好もほぼ一緒!
こんな間違え探しがあるなんて聞いてなかった!
今、目の前にムンガルが居たら切り刻んでいたであろう衝動を抑えるように、再び大きく息を吐く。
いや、ダメだ、落ち着こう。
ここで今、居もしないおっさんのことをとやかく言ったところで仕方ないのだ。
でもこれ以上情報なんて…
歩き方は2人とも慣れている、足運びから実力を測ろうにも甲冑を着ているから分かりづらい。
2人は比較的、敬語を周りから使われている。
比較的とぼかしたのは、1人、軽装備の若い兵士の存在があったから。
若い兵士は全員に対してタメ口だった。
まぁそもそも、位が高い=魔道具使い、というわけではないのでこの考察にも意味は無いか。
利き手は1人は不明だが、もう1人は右手に錫杖を持っていることから右利きの可能性があり…ん?
「っ!?」
そこでカーナはとんでもないことに気付いた
そうか!魔道具を持っている方に決まっているじゃないか!
なんでこんな簡単な事に気付かなかったんだ
よかった~
こんなことで帰っていたらマリアンヌ様を失望させてしまうところだった。
ホッと胸を撫で下ろすカーナ
よし、そうと分かれば…
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