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【第4章】 三日月峠の戦い
41 相容れぬ2人②
しおりを挟む「ふざけるなよ! お前がこの男と面識があることは今お前が口にしてマリアンヌ様に伝わった、なぜそれを先に言わなかった!?」
「不可能だ。このムンガルが知っているシェリーという御仁、持っていたのは黒槍だった。それに甲冑も着ていなかった、同一人物とあの時分かりようもない」
「声なら分かるんじゃないのか?それは伝えたのか?それとも先の戦いでは逃げるのに必死で錫杖を持つこいつの声も聞こえなかったか?」
連れてきた兵士たちは完全に押し黙った、それは触れてはいけないパンドラの箱だと全員が理解していたから…
しかしカーナはその境界線を簡単に超えて来た。
普段は温厚なムンガルの表情が鋭くなる
「女、たとえお前がマリアンヌ様のお気に入りといえども、これ以上このムンガルに無礼な口を利くとただでは済まさんぞ」
睨むムンガルにゆっくりとカーナは口を開く
「私なら…今回同様、逃げはしなかった」
その発言にその場にいた兵士達の動きが止まった
明らかにムンガルの目が険しくなる
カーナは更に続ける
「大した結果も出さずに爵位を振りかざす、私はお前のような者を騎士とは認めない。私は今回、死にかけたがマリアンヌ様の為に成果を出した」
その言葉にムンガルは鼻で笑う
「運よく不意打ちが成功したからといって調子に乗るな。女が1人で暗殺まがいな出すぎた行動をして死にかけるのは当たり前だ。大方、色仕掛けでもしたんだろ?そしてそのような暗殺まがいな戦法、いかに結果を出そうが、成果とは決して言えん。 それに300人殺した言ったな? 馬鹿は休み休み言え、そんなこと魔道具を持っていたとしても困難だ。お前程度の女に出来るとは思えん。マリアンヌ皇女殿下に気に入られたくてサバを読んだんだろうが、やるならもっと上手くやるんだな」
カーナの手はそっとふくらはぎに忍ばせていたナイフの柄に触れる。
そして無表情で言った。
「取り消せ」
しかしムンガルはもう一度、今度は明らかな挑発を含ませるように鼻で笑う
「しがない女の頼みを聞く耳はこのムンガル、持ち合わせていない」
その瞬間、カーナの脳は目の前の巨体の男を敵として完全に認識した。
別に自分自身がどう思われていてもいい。
しかし主君に対して気に入られたくて嘘をつくなど、あの夜にもうしないと誓ったことだから
その忠誠心を愚弄したムンガルが敵以外のなんだというのだ?
「……もう取り消さなくても結構です」
カーナはムンガルに対して見上げていた顔を逸らしてため息のよう静かに空気を吐き出した。
そしてもう一度ムンガルに顔を向ける、その瞳は冷たい深海の海底のように黒く感情がまるで感じ取れなかった。
「お前のような傲慢で独善的な人間がマリアンヌ様の側をうろつくのはもう我慢ならない」
そしてナイフの柄に完全に掴むカーナ
「お前をこの場で殺す」
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