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【第4章】 三日月峠の戦い

43 手に入れた拠点①

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「ゴホッ!ゴホッ! オエッ」
「マリアンヌ様、大丈夫ですか!?」

 荒れた岩肌の中腹に掘られた大穴からは、今まさにといった具合に黒い煙がまるで狼煙のようにモクモクと外に湧き出ていた。
 マリアンヌは何ともいえないコゲたにおいにむせ返りながら顔を背ける

「何だ、この臭いは?」

 少し吸っただけで吐き気を催す様な臭いが山からの吹き降ろす風と共にマリアンヌの一団を通過していく
 その問いにムンガルが手をパタパタと散らしながら答える

「これは色々な物が燃えているにおいですな」
「色々なにおい? 暈した言い方はよせ人間だろ」

 ほんの300人ほどのな

「いえ、それだけとは思えません。原油…とは違うようですが、この煙の色を見る限り何か油のような物も混ざっているかと」

 人の血は理解できるがなぜ油?
 まさか…

「カーナ、お前、まさか!300人を殺すために火を放ったのか!?」
「いえ!そんな!まさか!」

 ブンブンと音を切るようにカーナの首は左右に揺れる

「じゃあこれは弁明するのだ?」
「えっ!…え~と、ちょっとした手違いによって引火した薬品とか、あと諸々です」
「薬品?」
「それが、なんと言いますか…火の回りが速い、そして消えにくい薬品だったのかも?」

 パチパチという音は聞こえないが、今なおモクモクと湧き出てくる黒い煙
 マリアンヌは恐る恐る横穴を指差した

「…もしかして、まだ燃えてたりするのか?」

 チラッと洞窟の入り口を見たカーナ

「おそらく」

 その答えに

「それ、もうボヤレベルじゃないよな?」
「…はい」
「いやいやいや! 早く消そうよ!?」
「マリアンヌ皇女殿下、危のうございます。 念のために私の部下を確認に出しましょう」
「う、うむ」

 数名の兵士がムンガルの命令で横穴の中に入って行った。
 そして少しして出てきた兵たち

「どうだった?」
「大災害だそうです」
「マジかぁ~、外からはそんなに燃えているように見えないが、、、大災害レベルなのか」
「はい、いかがいたしますか?」
「すぐ消せ、兵を何人使ってもよい」
「了解いたしました」
「マリアンヌ様お茶をどうぞ」
「いらない」


 ――1時間その場にて待機

「マリアンヌ皇女殿下、消化完了いたしました!」

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