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十七話
レオンの喉が、ひくりと動いた。
周囲の騎士たちも、誰一人として声を出さない。
いま王都を包んでいる光が、誰の手によるものか――全員が理解していた。
「……用意してある」
絞り出すような声だった。
私は静かに首を傾ける。
「書面で確認します」
一瞬、レオンの眉が歪む。
だが反論はできない。
彼は後ろの側近に顎で指示を出した。
すぐに差し出されたのは、王家の紋章入りの正式文書。
私はそれを受け取り、ゆっくりと目を通す。
王都結界の再構築に関する全面委任。
聖女権限の国外独立承認。
隣国との不可侵条約締結。
そして――
旧聖女位の永久放棄と、王家からの不当処遇の公式謝罪。
……ようやく、ここまで来た。
紙を閉じる。
「問題ありません」
その一言で、周囲の空気がわずかに緩んだ。
だが。
「ただし」
私は顔を上げる。
レオンの肩が、びくりと揺れた。
「これは“前払い分”です」
ぴしり、と空気が凍る。
「……何?」
低い声。
私は穏やかに微笑む。
「王都結界の完全再構築には、段階契約が必要です」
指先で、城壁の方を示す。
「先ほどのは、あくまで暫定封鎖」
レオンの顔色が、みるみる変わっていく。
「七日後、再調整を行います」
一歩、静かに踏み出す。
「その時点で、第二段階の対価をいただきます」
「……エルサ」
低く、かすれた声。
私は止まらない。
「なお」
にこり、と微笑む。
「契約不履行の場合、結界の維持保証はいたしかねます」
周囲の騎士たちが、一斉に息を呑んだ。
レオンの拳が、ぎり、と鳴る。
だが――
反論できない。
いま王都の命綱は、完全にこちらの手の中だ。
長い沈黙のあと。
彼は、深く息を吐いた。
「……分かった」
敗北を噛みしめる声。
「第二段階の条件を提示しろ」
私は一瞬だけ、後ろを振り返る。
視線が、カイルと合う。
金の瞳が、静かに細められた。
――好きにやれ。
無言の許可。
胸の奥が、じんわりと温かくなる。
私は前を向き直り、はっきりと告げた。
「第二段階の条件は一つです」
レオンの喉が鳴る。
王都の空気が、凍りつく。
そして私は――
「王都中央結界核の、完全管理権」
静かに言い切った。
「これを、私に譲渡してください」
——絶句。
レオンの目が、見開かれる。
「それは……!」
王都防衛の心臓部。
国家安全保障の中枢。
事実上の、防衛主導権の移譲。
私は、微笑みを崩さない。
「ご安心ください」
やわらかな声で。
「ちゃんと、“守って”差し上げますから」
背後で、カイルの低い笑いが、かすかに響いた。
周囲の騎士たちも、誰一人として声を出さない。
いま王都を包んでいる光が、誰の手によるものか――全員が理解していた。
「……用意してある」
絞り出すような声だった。
私は静かに首を傾ける。
「書面で確認します」
一瞬、レオンの眉が歪む。
だが反論はできない。
彼は後ろの側近に顎で指示を出した。
すぐに差し出されたのは、王家の紋章入りの正式文書。
私はそれを受け取り、ゆっくりと目を通す。
王都結界の再構築に関する全面委任。
聖女権限の国外独立承認。
隣国との不可侵条約締結。
そして――
旧聖女位の永久放棄と、王家からの不当処遇の公式謝罪。
……ようやく、ここまで来た。
紙を閉じる。
「問題ありません」
その一言で、周囲の空気がわずかに緩んだ。
だが。
「ただし」
私は顔を上げる。
レオンの肩が、びくりと揺れた。
「これは“前払い分”です」
ぴしり、と空気が凍る。
「……何?」
低い声。
私は穏やかに微笑む。
「王都結界の完全再構築には、段階契約が必要です」
指先で、城壁の方を示す。
「先ほどのは、あくまで暫定封鎖」
レオンの顔色が、みるみる変わっていく。
「七日後、再調整を行います」
一歩、静かに踏み出す。
「その時点で、第二段階の対価をいただきます」
「……エルサ」
低く、かすれた声。
私は止まらない。
「なお」
にこり、と微笑む。
「契約不履行の場合、結界の維持保証はいたしかねます」
周囲の騎士たちが、一斉に息を呑んだ。
レオンの拳が、ぎり、と鳴る。
だが――
反論できない。
いま王都の命綱は、完全にこちらの手の中だ。
長い沈黙のあと。
彼は、深く息を吐いた。
「……分かった」
敗北を噛みしめる声。
「第二段階の条件を提示しろ」
私は一瞬だけ、後ろを振り返る。
視線が、カイルと合う。
金の瞳が、静かに細められた。
――好きにやれ。
無言の許可。
胸の奥が、じんわりと温かくなる。
私は前を向き直り、はっきりと告げた。
「第二段階の条件は一つです」
レオンの喉が鳴る。
王都の空気が、凍りつく。
そして私は――
「王都中央結界核の、完全管理権」
静かに言い切った。
「これを、私に譲渡してください」
——絶句。
レオンの目が、見開かれる。
「それは……!」
王都防衛の心臓部。
国家安全保障の中枢。
事実上の、防衛主導権の移譲。
私は、微笑みを崩さない。
「ご安心ください」
やわらかな声で。
「ちゃんと、“守って”差し上げますから」
背後で、カイルの低い笑いが、かすかに響いた。
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