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十八話
レオンの顔色が、見る間に失われていった。
「……ふざけるな」
かすれた声だった。
「それは王都防衛の中枢だ。
他国の聖女に渡せるはずがない」
予想通りの反応。
私は静かに首を傾けた。
「では」
一拍置く。
「七日後に、結界の保証は終了します」
ぴたり、と。
周囲の空気が凍りついた。
レオンの呼吸が、明らかに乱れる。
「……脅しか」
「契約条件の確認です」
穏やかに言い切る。
そのとき。
城壁の外から、低い咆哮が響いた。
――ドン!!
外郭に、衝撃。
騎士たちが一斉に振り向く。
「魔物群、再接近!!」
見張りの叫び。
結界の外側で、黒い影が蠢いているのが見えた。
私は、静かに結界へ意識を向ける。
……やはり。
先ほどの応急封鎖で、魔物の注意を強く引きつけている。
時間との勝負だ。
レオンの拳が、震えていた。
逡巡。
焦燥。
そして――決断。
彼は、ぎり、と歯を食いしばった。
「……分かった」
周囲が、どよめく。
レオンは、血を吐くような声で続けた。
「中央結界核の管理権……条件付きで譲渡する」
私は静かに瞬きをした。
「条件を」
「王都防衛の最終権限は、王家に残す」
必死の譲歩。
……悪くない。
私は小さく頷いた。
「受諾します」
その瞬間。
レオンの肩から、力が抜けた。
完全な敗北の顔だった。
私は一歩、前に出る。
「では、契約成立です」
右手を、ゆっくりと持ち上げる。
胸の奥で、魔力回路が深く唸った。
――接続。
次の瞬間。
王都中央から、淡い光柱が立ち上った。
「なっ……!」
騎士たちの悲鳴。
私は静かに目を閉じる。
意識が、深く、王都の結界核へ潜っていく。
……酷い。
摩耗。
過負荷。
無理な出力操作の痕跡。
ミリアの“最適化”の傷跡が、痛々しいほど残っている。
私は、そっと魔力を流し込んだ。
――浄化。
核が、震える。
濁っていた魔力が、ゆっくりと澄んでいく。
さらに。
外周に、新しい回路を編み込む。
補強。
分散。
多層化。
ぱきん、と空気が鳴った。
次の瞬間――
王都全域を包む結界が、眩く再点灯した。
「……うそだろ」
誰かの、呆然とした声。
外で暴れていた魔物群が、一斉に後退を始める。
結界の圧が、段違いに跳ね上がったのだ。
私はゆっくりと目を開けた。
「第二段階、完了です」
振り返る。
レオンは、完全に言葉を失っていた。
カイルの金の瞳が、静かに細められる。
そして。
彼は、ごく自然な動作で――
私の肩を抱き寄せた。
「よくやった」
低く、甘い声。
耳元に落ちてきて、胸がどくりと跳ねる。
王都の騎士たちが、完全に固まっていた。
私は少しだけ頬を熱くしながら――
それでも、はっきりと前を見据えた。
――契約は、まだ終わっていない。
「……ふざけるな」
かすれた声だった。
「それは王都防衛の中枢だ。
他国の聖女に渡せるはずがない」
予想通りの反応。
私は静かに首を傾けた。
「では」
一拍置く。
「七日後に、結界の保証は終了します」
ぴたり、と。
周囲の空気が凍りついた。
レオンの呼吸が、明らかに乱れる。
「……脅しか」
「契約条件の確認です」
穏やかに言い切る。
そのとき。
城壁の外から、低い咆哮が響いた。
――ドン!!
外郭に、衝撃。
騎士たちが一斉に振り向く。
「魔物群、再接近!!」
見張りの叫び。
結界の外側で、黒い影が蠢いているのが見えた。
私は、静かに結界へ意識を向ける。
……やはり。
先ほどの応急封鎖で、魔物の注意を強く引きつけている。
時間との勝負だ。
レオンの拳が、震えていた。
逡巡。
焦燥。
そして――決断。
彼は、ぎり、と歯を食いしばった。
「……分かった」
周囲が、どよめく。
レオンは、血を吐くような声で続けた。
「中央結界核の管理権……条件付きで譲渡する」
私は静かに瞬きをした。
「条件を」
「王都防衛の最終権限は、王家に残す」
必死の譲歩。
……悪くない。
私は小さく頷いた。
「受諾します」
その瞬間。
レオンの肩から、力が抜けた。
完全な敗北の顔だった。
私は一歩、前に出る。
「では、契約成立です」
右手を、ゆっくりと持ち上げる。
胸の奥で、魔力回路が深く唸った。
――接続。
次の瞬間。
王都中央から、淡い光柱が立ち上った。
「なっ……!」
騎士たちの悲鳴。
私は静かに目を閉じる。
意識が、深く、王都の結界核へ潜っていく。
……酷い。
摩耗。
過負荷。
無理な出力操作の痕跡。
ミリアの“最適化”の傷跡が、痛々しいほど残っている。
私は、そっと魔力を流し込んだ。
――浄化。
核が、震える。
濁っていた魔力が、ゆっくりと澄んでいく。
さらに。
外周に、新しい回路を編み込む。
補強。
分散。
多層化。
ぱきん、と空気が鳴った。
次の瞬間――
王都全域を包む結界が、眩く再点灯した。
「……うそだろ」
誰かの、呆然とした声。
外で暴れていた魔物群が、一斉に後退を始める。
結界の圧が、段違いに跳ね上がったのだ。
私はゆっくりと目を開けた。
「第二段階、完了です」
振り返る。
レオンは、完全に言葉を失っていた。
カイルの金の瞳が、静かに細められる。
そして。
彼は、ごく自然な動作で――
私の肩を抱き寄せた。
「よくやった」
低く、甘い声。
耳元に落ちてきて、胸がどくりと跳ねる。
王都の騎士たちが、完全に固まっていた。
私は少しだけ頬を熱くしながら――
それでも、はっきりと前を見据えた。
――契約は、まだ終わっていない。
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