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第三章:藤花に消えた死体
第三章:藤花に消えた死体 19
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「ほとんど使ってねぇ上に、人が減ったからな。これからは余計ガランとなるわ」
そう付け加え、昇さんはまた先へ歩く。三十メートルくらい続いた縁側の廊下はまた右へと折れ、薄暗い空間へと繋がっていた。
その廊下を十メートルくらい歩いて、昇さんは立ち止まった。こちらへ身体の向きを変え、目の前の襖を指差す。
「ここがあいつの部屋だ。因みに、今通り過ぎたそっちの部屋が俺の部屋。竜久とは隣同士なんだよ」
俺たちのすぐ後ろにある別の襖を顎で示しながらそんな補足を付け足して、昇さんは竜久さんの部屋だというその目の前の襖を叩いた。
「おい、竜久。お前いつまで探しもんしてんだよ。まだ見つからねぇのか?」
苛立ちを含む言葉を投げつけるように放ち、反応を待つ。
しかし、中からの返事は返ってこない。
「おい、竜久?」
もう一度襖をノックして、呼びかける。だが、それでも相手からのリアクションは何もなかった。
「いねぇのか? 竜久、中入るぞ?」
訝し気に舌打ちを鳴らして引手に指をかけると、昇さんは慣れているのか躊躇うことなく襖を開けた。
「おい、昼寝でもしてんの――あ?」
無遠慮に中へ侵入し室内を見回した昇さんの声が、途中で止まる。
何事かと廊下から中を覗き込むと、部屋の中央に立ち尽くした昇さんがきょとんとしながら、室内を眺め回していた。
「あの、どうしました?」
他に選択肢もないため、訊ねてみる。
「いや、竜久のやつがいねぇんだよ。便所か?」
頭を掻きながら一旦戻ると、そのまま廊下の奥へと向かう。そこにトイレがあるのだろう。
十メートルほど先で足を止め、そこにあるドアを叩いた。
「おい、竜久。入ってるか?」
数秒待って、何も起こらないと判断したのか、無遠慮にドアノブを回した。
手前に開いたドアに隠れて、昇さんの姿が見えなくなる。だがそれも一瞬のことで、すぐにドアは閉じられた。
「いないんですか?」
黙って成り行きを見守っていた部長が、平坦な声で問う。
「ああ。ちょっと風呂場と台所も見てくるから、待っててくれ」
こちらへ待ての合図をするように手を掲げて告げると、昇さんはさらにその隣のドアを開け中を覗きはじめた。
「……何だか気になるね。嫌な予感がするというかさ」
「部長、不吉なこと言うのやめてください。他に用事があるの思い出して、どこかの家に行ったりしてるんじゃないんですか?」
落ち着かなそうにソワソワしつつ、桜が言う。
「……うん、そういう可能性もあるね。でも、さっき枝橋さんが竜久さんが出ていくのは見ていないって言ってなかったっけ? あれが嘘や見落としでなければ、竜久さんはまだ家の中にいることになるんだけど……。ん? 蓮田くん、どうかしたの?」
顎に手を当てながら桜の相手をしていた部長が、突然部屋に入り込んでいった蓮田に気づき、呼び止めるように声をかけた。
「いえ、少し中を見てみようかと……」
振り向くこともないまま蓮田は答え、部屋の中央で立ち止まる。
つい今しがた、昇さんが立っていたのとほぼ同じ位置。
そう付け加え、昇さんはまた先へ歩く。三十メートルくらい続いた縁側の廊下はまた右へと折れ、薄暗い空間へと繋がっていた。
その廊下を十メートルくらい歩いて、昇さんは立ち止まった。こちらへ身体の向きを変え、目の前の襖を指差す。
「ここがあいつの部屋だ。因みに、今通り過ぎたそっちの部屋が俺の部屋。竜久とは隣同士なんだよ」
俺たちのすぐ後ろにある別の襖を顎で示しながらそんな補足を付け足して、昇さんは竜久さんの部屋だというその目の前の襖を叩いた。
「おい、竜久。お前いつまで探しもんしてんだよ。まだ見つからねぇのか?」
苛立ちを含む言葉を投げつけるように放ち、反応を待つ。
しかし、中からの返事は返ってこない。
「おい、竜久?」
もう一度襖をノックして、呼びかける。だが、それでも相手からのリアクションは何もなかった。
「いねぇのか? 竜久、中入るぞ?」
訝し気に舌打ちを鳴らして引手に指をかけると、昇さんは慣れているのか躊躇うことなく襖を開けた。
「おい、昼寝でもしてんの――あ?」
無遠慮に中へ侵入し室内を見回した昇さんの声が、途中で止まる。
何事かと廊下から中を覗き込むと、部屋の中央に立ち尽くした昇さんがきょとんとしながら、室内を眺め回していた。
「あの、どうしました?」
他に選択肢もないため、訊ねてみる。
「いや、竜久のやつがいねぇんだよ。便所か?」
頭を掻きながら一旦戻ると、そのまま廊下の奥へと向かう。そこにトイレがあるのだろう。
十メートルほど先で足を止め、そこにあるドアを叩いた。
「おい、竜久。入ってるか?」
数秒待って、何も起こらないと判断したのか、無遠慮にドアノブを回した。
手前に開いたドアに隠れて、昇さんの姿が見えなくなる。だがそれも一瞬のことで、すぐにドアは閉じられた。
「いないんですか?」
黙って成り行きを見守っていた部長が、平坦な声で問う。
「ああ。ちょっと風呂場と台所も見てくるから、待っててくれ」
こちらへ待ての合図をするように手を掲げて告げると、昇さんはさらにその隣のドアを開け中を覗きはじめた。
「……何だか気になるね。嫌な予感がするというかさ」
「部長、不吉なこと言うのやめてください。他に用事があるの思い出して、どこかの家に行ったりしてるんじゃないんですか?」
落ち着かなそうにソワソワしつつ、桜が言う。
「……うん、そういう可能性もあるね。でも、さっき枝橋さんが竜久さんが出ていくのは見ていないって言ってなかったっけ? あれが嘘や見落としでなければ、竜久さんはまだ家の中にいることになるんだけど……。ん? 蓮田くん、どうかしたの?」
顎に手を当てながら桜の相手をしていた部長が、突然部屋に入り込んでいった蓮田に気づき、呼び止めるように声をかけた。
「いえ、少し中を見てみようかと……」
振り向くこともないまま蓮田は答え、部屋の中央で立ち止まる。
つい今しがた、昇さんが立っていたのとほぼ同じ位置。
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