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第四章:矛盾の解明
第四章:矛盾の解明 4
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【2】
五月二十三日。日曜日。午前零時七分。
殺人事件が発生したとは言っても、それに対応しているのは警察ではない。ほとんどが高齢者で構成された、寄せ集めの自警団だ。
それ故、この時間帯まで現場を捜索するような者も皆無。
「……」
心労と疲労。二つが混ざり合い身体をふらつかせてくるのを必死に堪えて、梅木繁信は周囲の気配を探りつつ、自宅の門の前に立っていた。
約束の時間は、過ぎている。
事件のことについて重要な話があると、そう声をかけられたのは三時間ほど前。
その内容と待ち合わせ場所に外を選んだ理由はわからないが、相手の表情からして伊達や酔狂でものを言っているわけではないと理解はできた。
辺りは静まり返り、小川を流れる水の音だけが不気味に響いてくる。
ちらりと蔵の方向へ首を向けると、胸を締め付けるような感覚が身体中に広がった。
実の息子とその嫁が今、変わり果てた姿であそこに寝ている。
まだ行方が掴めていないが、話を聞く限りでは竜久ももう生きてはいないのだろう。
本当に、何故こんなことになってしまったのか。息子たちが殺されなければいけない理由など、皆目検討もつかない。
ほんの数日前までは、平穏な日々が続いていたというのに。
――村の言い伝えに見立てられていた、そう言っていたか……。
自警団たちの会話が、ふと頭をよぎる。
愛した旅人に裏切られ、あっさりと捨てられた女の哀れな話。
細かく話は枝分かれしているが、本筋は全てそういう内容になっている。
だがしかし、あの言い伝えの本当の真実は――。
「……馬鹿馬鹿しい」
浮かび上がる妄想を、頭を振って霧散させる。
――あんなものは、所詮は昔のお伽話。悪霊が人を殺すなんて、あるわけが……。
気配を押し殺すような足音が聞こえ、繁信は思考を中断した。
音の方へと振り返り、相手を確かめる。
外灯すらない場所ではあるが、幸い月明かりが周囲を照らしている。
目の前に立つ人物が、自分をここへ呼んだ本人であることはすぐ把握できた。
「やぁ、こんな夜更けにわざわざ外で話をするなんて、いったいどういうことなんだい?」
殺人鬼が潜む閉鎖空間の中で、こんな待ち合わせをするのがどれほど危険か、わからないわけではあるまい。
それでもあえてここで待ち合わせた以上、何かしら特別な事情があるに違いない。
そんな予測を立てながら話しかけると、相手は周囲に誰もいないことを確認するように注意を払ってから、そっと口元を耳に近づけてきた。
反射的に、繁信も耳を近づける。
「実は――」
相手の告げてきた内容に、繁信の目が大きく見開かれた。
「な、何だって? それは本当か?」
確認の言葉を返すと、相手はこくりと頷く。
「そ、それなら早く他の者たちにも伝えなくては……! これ以上被害をだすわけにはいかん」
夕刻、村に住む伊藤という男が、竜久の死体を持ち運ぶところを目撃した。
運んだ正確な位置はわからないが、大体の方角は見当がついている。
油断している今の時間帯に、人を集めて取り押さえた方が良いのではないのか。
相手が告げた話は、簡略化してしまえばそういう内容だった。
「そんな大事なことならば、どうしてもっと早く言ってくれないんだ?」
五月二十三日。日曜日。午前零時七分。
殺人事件が発生したとは言っても、それに対応しているのは警察ではない。ほとんどが高齢者で構成された、寄せ集めの自警団だ。
それ故、この時間帯まで現場を捜索するような者も皆無。
「……」
心労と疲労。二つが混ざり合い身体をふらつかせてくるのを必死に堪えて、梅木繁信は周囲の気配を探りつつ、自宅の門の前に立っていた。
約束の時間は、過ぎている。
事件のことについて重要な話があると、そう声をかけられたのは三時間ほど前。
その内容と待ち合わせ場所に外を選んだ理由はわからないが、相手の表情からして伊達や酔狂でものを言っているわけではないと理解はできた。
辺りは静まり返り、小川を流れる水の音だけが不気味に響いてくる。
ちらりと蔵の方向へ首を向けると、胸を締め付けるような感覚が身体中に広がった。
実の息子とその嫁が今、変わり果てた姿であそこに寝ている。
まだ行方が掴めていないが、話を聞く限りでは竜久ももう生きてはいないのだろう。
本当に、何故こんなことになってしまったのか。息子たちが殺されなければいけない理由など、皆目検討もつかない。
ほんの数日前までは、平穏な日々が続いていたというのに。
――村の言い伝えに見立てられていた、そう言っていたか……。
自警団たちの会話が、ふと頭をよぎる。
愛した旅人に裏切られ、あっさりと捨てられた女の哀れな話。
細かく話は枝分かれしているが、本筋は全てそういう内容になっている。
だがしかし、あの言い伝えの本当の真実は――。
「……馬鹿馬鹿しい」
浮かび上がる妄想を、頭を振って霧散させる。
――あんなものは、所詮は昔のお伽話。悪霊が人を殺すなんて、あるわけが……。
気配を押し殺すような足音が聞こえ、繁信は思考を中断した。
音の方へと振り返り、相手を確かめる。
外灯すらない場所ではあるが、幸い月明かりが周囲を照らしている。
目の前に立つ人物が、自分をここへ呼んだ本人であることはすぐ把握できた。
「やぁ、こんな夜更けにわざわざ外で話をするなんて、いったいどういうことなんだい?」
殺人鬼が潜む閉鎖空間の中で、こんな待ち合わせをするのがどれほど危険か、わからないわけではあるまい。
それでもあえてここで待ち合わせた以上、何かしら特別な事情があるに違いない。
そんな予測を立てながら話しかけると、相手は周囲に誰もいないことを確認するように注意を払ってから、そっと口元を耳に近づけてきた。
反射的に、繁信も耳を近づける。
「実は――」
相手の告げてきた内容に、繁信の目が大きく見開かれた。
「な、何だって? それは本当か?」
確認の言葉を返すと、相手はこくりと頷く。
「そ、それなら早く他の者たちにも伝えなくては……! これ以上被害をだすわけにはいかん」
夕刻、村に住む伊藤という男が、竜久の死体を持ち運ぶところを目撃した。
運んだ正確な位置はわからないが、大体の方角は見当がついている。
油断している今の時間帯に、人を集めて取り押さえた方が良いのではないのか。
相手が告げた話は、簡略化してしまえばそういう内容だった。
「そんな大事なことならば、どうしてもっと早く言ってくれないんだ?」
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