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第五章:幕引きと抵抗
第五章:幕引きと抵抗 1
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【1】
五月二十三日。日曜日。午後一時。
竜久さんの死体は蔵へ運ばれ、寝かされた被害者は四つに増えた。
部長が一段落ついた枝橋さんに取り次いで得た情報によると、竜久さんが殺害されたのは昨日の午後零時から三時くらいの間ではないかと言われたらしい。
もっとも、これはあくまでおおよその時間であって、若干の誤差はあり得るという。
そして、竜久さんの死因は自警団の男が言っていた通り、背中に刺さったナイフによるショック死。
腹部にあった紐を巻いた跡は、まだ何のために付けられたものかははっきりしておらず、警察の到着を待ってからの調べを待つしかなさそうだと言うのが、村人たちの見解だった。
昨日、俺たちが竜久さんと最後に別れたのは、午後零時になる少し前。
忘れ物を取りに自室へ戻ると言う彼と村長宅前で離れ、それきりだ。
その後、一向に姿を見せない竜久さんを不審に思い本人の部屋を調べ不在を確認し、落ちていた藤の花を見た部長が巨大藤へ行こうと提案。
渡辺さんから車を借りた昇さんと藤美荘を出発したのが、大体零時四十五分。
それから、巨大藤で変わり果てた竜久さんを発見したのが、午後一時を少し過ぎたくらいだったはずだ。
そして、村長たちに事情を説明し再び巨大藤に戻ってきたとき、竜久さんの死体は消えていた。
このときの時刻が、確か午後二時くらい。
竜久さんの死亡推定時刻と照らし合わせて考えても、特に目立って不自然な点はない。
しかし――。
これだけでもう、蓮田にとっての確認は充分だったらしい。
「……それ、本当に間違いじゃないの?」
たった今、蓮田から全ての真相――と思われる話――を聞き終え、信じられないといったようにポツリと呟きを漏らしたのは桜。
「間違い、とは思っていません。事実、今の説明で一通りの疑問点は解決できるかと」
藤美荘、男性陣の部屋に集まりミーティングを開始して約一時間。
室内に満ちる空気は、まどろみのような不思議な質感をまとい、俺たちにまとわりついてきている。
事件の謎が今、ほぼ全て明確になった。
犯人であると思われるあの人物が、なぜ四人もの人間を殺害したのか?
その動機はさすがにわからない。
しかし殺人犯であることだけは、ほぼ明確な事実。
「あの人が犯人だなんて……。どうしてこんなこと」
独り言を言う幼なじみをチラリと見てから、俺は部長に意識を向ける。
「どうするんです? このこと、村の人たちに伝えた方が良いと思うんですけど」
「……うん」
蓮田の話す真実を聞き終えてから、ずっと俯き続けていた部長が、僅かな間をあけ頷いてくる。
「確かに、伝えないといけないよね。犯人が梅木家の人を皆殺しにしようとしているなら、もたもたしていられないし。向こうも、警察が来る前に決着をつけるつもりでいるかもしれないしさ」
「……私も、それには賛成です。これ以上被害者を増やすのを防ぐのであれば、急ぐべきかと」
ぬるくなった湯呑を口に付けてから、蓮田が同意する。
「防ぐって言っても、具体的にどうするつもりなんですか?」
「うーん、そうだねぇ」
桜に問われ、部長は午後の光が満ちる窓の外を眺める。
「……いっそ、こっちから罠をしかけてみようかな?」
「え?」
まるで、ちょっと出かけようかなとでも言うような仕草で発せられたその言葉に、俺と桜が目を丸くする。
そんな俺たちを面白そうに見つめ、部長は人差し指を立てる。
「どうせ追い詰めるなら、一工夫した方が良いと思うんだよね」
「……」
また何かを企んでいる顔だ。
一瞬にしてそう読んで、俺は桜とうんざりした視線を交わし口元に苦笑を浮かべた。
五月二十三日。日曜日。午後一時。
竜久さんの死体は蔵へ運ばれ、寝かされた被害者は四つに増えた。
部長が一段落ついた枝橋さんに取り次いで得た情報によると、竜久さんが殺害されたのは昨日の午後零時から三時くらいの間ではないかと言われたらしい。
もっとも、これはあくまでおおよその時間であって、若干の誤差はあり得るという。
そして、竜久さんの死因は自警団の男が言っていた通り、背中に刺さったナイフによるショック死。
腹部にあった紐を巻いた跡は、まだ何のために付けられたものかははっきりしておらず、警察の到着を待ってからの調べを待つしかなさそうだと言うのが、村人たちの見解だった。
昨日、俺たちが竜久さんと最後に別れたのは、午後零時になる少し前。
忘れ物を取りに自室へ戻ると言う彼と村長宅前で離れ、それきりだ。
その後、一向に姿を見せない竜久さんを不審に思い本人の部屋を調べ不在を確認し、落ちていた藤の花を見た部長が巨大藤へ行こうと提案。
渡辺さんから車を借りた昇さんと藤美荘を出発したのが、大体零時四十五分。
それから、巨大藤で変わり果てた竜久さんを発見したのが、午後一時を少し過ぎたくらいだったはずだ。
そして、村長たちに事情を説明し再び巨大藤に戻ってきたとき、竜久さんの死体は消えていた。
このときの時刻が、確か午後二時くらい。
竜久さんの死亡推定時刻と照らし合わせて考えても、特に目立って不自然な点はない。
しかし――。
これだけでもう、蓮田にとっての確認は充分だったらしい。
「……それ、本当に間違いじゃないの?」
たった今、蓮田から全ての真相――と思われる話――を聞き終え、信じられないといったようにポツリと呟きを漏らしたのは桜。
「間違い、とは思っていません。事実、今の説明で一通りの疑問点は解決できるかと」
藤美荘、男性陣の部屋に集まりミーティングを開始して約一時間。
室内に満ちる空気は、まどろみのような不思議な質感をまとい、俺たちにまとわりついてきている。
事件の謎が今、ほぼ全て明確になった。
犯人であると思われるあの人物が、なぜ四人もの人間を殺害したのか?
その動機はさすがにわからない。
しかし殺人犯であることだけは、ほぼ明確な事実。
「あの人が犯人だなんて……。どうしてこんなこと」
独り言を言う幼なじみをチラリと見てから、俺は部長に意識を向ける。
「どうするんです? このこと、村の人たちに伝えた方が良いと思うんですけど」
「……うん」
蓮田の話す真実を聞き終えてから、ずっと俯き続けていた部長が、僅かな間をあけ頷いてくる。
「確かに、伝えないといけないよね。犯人が梅木家の人を皆殺しにしようとしているなら、もたもたしていられないし。向こうも、警察が来る前に決着をつけるつもりでいるかもしれないしさ」
「……私も、それには賛成です。これ以上被害者を増やすのを防ぐのであれば、急ぐべきかと」
ぬるくなった湯呑を口に付けてから、蓮田が同意する。
「防ぐって言っても、具体的にどうするつもりなんですか?」
「うーん、そうだねぇ」
桜に問われ、部長は午後の光が満ちる窓の外を眺める。
「……いっそ、こっちから罠をしかけてみようかな?」
「え?」
まるで、ちょっと出かけようかなとでも言うような仕草で発せられたその言葉に、俺と桜が目を丸くする。
そんな俺たちを面白そうに見つめ、部長は人差し指を立てる。
「どうせ追い詰めるなら、一工夫した方が良いと思うんだよね」
「……」
また何かを企んでいる顔だ。
一瞬にしてそう読んで、俺は桜とうんざりした視線を交わし口元に苦笑を浮かべた。
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