病み憑き

第三章:風岡夏純――①

風岡夏純――①

「ええ。でも、それがどうかした？　角田くんが学校休んでるのと何か関係でもあるの？」

「いえ、ちょっと気になっただけです」

　関係はあるかもしれない。少なくとも、その可能性は大きく膨らんだ。

　あの昼休み、誰かが貴秀を騙して教室からおびき出した人間がいる。

「ほら、もう教室に戻りなさい。授業が始まってるんだから」

　黙り込んだわたしを見て、もう用は済んだと判断したのだろう。

　安達は教室のドアへチラリと視線をやりながら中に入るよう促してきた。

「はい」

　素直に返事をし、わたしは教室のドアをくぐる。

（確か……あのとき声かけてきたのって黒川くろかわだったっけ）

　ぐるりと室内を見回したわたしは、自分の席へ戻ることはせず真っ直ぐに別の席へと歩いていく。

「おい、風岡。何してんだ？」

　背後で保田が戒めるような声を漏らすが、そんなものは後回しで十分。

　教室のちょうど真ん中辺りの席。そこに座り、ノートを開こうとしていた人物。