91 / 96
決着
決着
しおりを挟む
「お前が桜に施した設定は、全部無くなった。今なら問題なく攻撃できるぜ」
余計なしがらみは無くなり、今の桜を存在させているのは、桜本人に関する個人的な設定のみ。片桐への攻撃はもちろん、能力の行使も自由にできる。
悪魔少女が伸ばした腕が、片桐の頭をしっかりと掴む。
「ふ……ふざけるな!! お前を創ったのは僕だぞ!? たかが設定の分際で――!!」
何をされるのか察した片桐が、桜の腕を引き剥がそうと必死にもがく。しかし、それで彼女の手が離れる気配は全くない。
人間よりも遥かに上の身体能力と力。自分自身が考えた設定に、彼は追いつめられていた。
「あたしは、消えるなんて嫌。もっと生きてたいし、雄治たちとも一緒にいたい。だから……、あたしはあなたの思い通りにはなりたくない!」
成長した子が親に反発し自立しようとするように、桜ははっきりとそう意志を投げつける。
記憶を無くし、自ら打開策を模索するという設定の元に生み出された悪魔の少女。冷静に考えてみればそれは、自ら成長する資格を与えられていたとも受け取れる。
ガーディアンや獣人みたいに単純な設定に合わせ、受動的に動いていたわけではなかった。それゆえに、少しずつ自我や感受性も高くなり、そして今の、設定という枠を越えようとする桜を形作ったのだろう。
「やめろぉぉぉぉぉ!!」
暗い廃墟に、片桐の叫びが響く。
「……」
俺は黙ってその光景を見つめ、やがて、力を吸い取られたかのようにその場へ座り込んだ敵を確認し、全てが終わったことを自覚した。
静かに片桐の頭から手を離し、桜が振り返る。
「……雄治、あたし生きてるよね?」
少しだけ不安そうに口を開く少女へ、俺は優しく頷く。
「ああ、大丈夫だ。生きてるよ」
片桐を倒せば桜は自由になる。そう考えると同時に、桜も自動的に消えてしまうのではという万が一の可能性も危惧していた。
しかし、その不安もどうやら杞憂だったらしい。
全てが、うまく成功してくれたようだ。
ゆっくりと桜の側へ歩み寄り、座り込んだまま微動だにしなくなった片桐を見下ろす。
射程距離ゼロ。全力で発動した桜の能力をまともに受け、記憶の全てが消し飛び人格すらも無くした哀れな創造主。
相手を殺すようなことはせず、尚且つ二度と桜を消そうとすることも、新たに設定を創り出すこともできなくする倒し方。
これが俺の、咄嗟に思いついたアイディアの全て。
自我すら無くしたこの青年はもう、一生自分の能力を使えることはないだろう。
「……自業自得とは言え、惨めだな」
何もかもを忘却し、下手をすれば動くことすら忘れているのかもしれない。そう思えるほどに、片桐は完全な脱け殻になってしまっていた。
「雄治、これからどうするの? 帰る?」
「ん? ああ、そうだな。とりあえず、こいつ何とかしようぜ? さすがに、ここにこのままってわけにもいかねぇし」
横からこちらを覗き込む桜へ答えながら、片桐を指差す。
「どっか適当に……、病院の前辺りに置いておけば死にはしないだろ」
「うん、了解」
素直に頷く悪魔少女を確認してから、俺は鼻から大きく息を吐き出した。
長いのか短いのかわからない戦いが、やっと終わった。
生き残る手段など一切無いのではという絶望的な中、こうして誰も死ぬことなく終わりを迎えられたことは、我ながら奇跡としか思えない。
余計なしがらみは無くなり、今の桜を存在させているのは、桜本人に関する個人的な設定のみ。片桐への攻撃はもちろん、能力の行使も自由にできる。
悪魔少女が伸ばした腕が、片桐の頭をしっかりと掴む。
「ふ……ふざけるな!! お前を創ったのは僕だぞ!? たかが設定の分際で――!!」
何をされるのか察した片桐が、桜の腕を引き剥がそうと必死にもがく。しかし、それで彼女の手が離れる気配は全くない。
人間よりも遥かに上の身体能力と力。自分自身が考えた設定に、彼は追いつめられていた。
「あたしは、消えるなんて嫌。もっと生きてたいし、雄治たちとも一緒にいたい。だから……、あたしはあなたの思い通りにはなりたくない!」
成長した子が親に反発し自立しようとするように、桜ははっきりとそう意志を投げつける。
記憶を無くし、自ら打開策を模索するという設定の元に生み出された悪魔の少女。冷静に考えてみればそれは、自ら成長する資格を与えられていたとも受け取れる。
ガーディアンや獣人みたいに単純な設定に合わせ、受動的に動いていたわけではなかった。それゆえに、少しずつ自我や感受性も高くなり、そして今の、設定という枠を越えようとする桜を形作ったのだろう。
「やめろぉぉぉぉぉ!!」
暗い廃墟に、片桐の叫びが響く。
「……」
俺は黙ってその光景を見つめ、やがて、力を吸い取られたかのようにその場へ座り込んだ敵を確認し、全てが終わったことを自覚した。
静かに片桐の頭から手を離し、桜が振り返る。
「……雄治、あたし生きてるよね?」
少しだけ不安そうに口を開く少女へ、俺は優しく頷く。
「ああ、大丈夫だ。生きてるよ」
片桐を倒せば桜は自由になる。そう考えると同時に、桜も自動的に消えてしまうのではという万が一の可能性も危惧していた。
しかし、その不安もどうやら杞憂だったらしい。
全てが、うまく成功してくれたようだ。
ゆっくりと桜の側へ歩み寄り、座り込んだまま微動だにしなくなった片桐を見下ろす。
射程距離ゼロ。全力で発動した桜の能力をまともに受け、記憶の全てが消し飛び人格すらも無くした哀れな創造主。
相手を殺すようなことはせず、尚且つ二度と桜を消そうとすることも、新たに設定を創り出すこともできなくする倒し方。
これが俺の、咄嗟に思いついたアイディアの全て。
自我すら無くしたこの青年はもう、一生自分の能力を使えることはないだろう。
「……自業自得とは言え、惨めだな」
何もかもを忘却し、下手をすれば動くことすら忘れているのかもしれない。そう思えるほどに、片桐は完全な脱け殻になってしまっていた。
「雄治、これからどうするの? 帰る?」
「ん? ああ、そうだな。とりあえず、こいつ何とかしようぜ? さすがに、ここにこのままってわけにもいかねぇし」
横からこちらを覗き込む桜へ答えながら、片桐を指差す。
「どっか適当に……、病院の前辺りに置いておけば死にはしないだろ」
「うん、了解」
素直に頷く悪魔少女を確認してから、俺は鼻から大きく息を吐き出した。
長いのか短いのかわからない戦いが、やっと終わった。
生き残る手段など一切無いのではという絶望的な中、こうして誰も死ぬことなく終わりを迎えられたことは、我ながら奇跡としか思えない。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
社会の底辺に落ちたオレが、国王に転生した異世界で、経済の知識を活かして富国強兵する、冒険コメディ
のらねこま(駒田 朗)
ファンタジー
リーマンショックで会社が倒産し、コンビニのバイトでなんとか今まで生きながらえてきた俺。いつものように眠りについた俺が目覚めた場所は異世界だった。俺は中世時代の若き国王アルフレッドとして目が覚めたのだ。ここは斜陽国家のアルカナ王国。産業は衰退し、国家財政は火の車。国外では敵対国家による侵略の危機にさらされ、国内では政権転覆を企む貴族から命を狙われる。
目覚めてすぐに俺の目の前に現れたのは、金髪美少女の妹姫キャサリン。天使のような姿に反して、実はとんでもなく騒がしいS属性の妹だった。やがて脳筋女戦士のレイラ、エルフ、すけべなドワーフも登場。そんな連中とバカ騒ぎしつつも、俺は魔法を習得し、内政を立て直し、徐々に無双国家への道を突き進むのだった。
セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~
空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。
もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。
【お知らせ】6/22 完結しました!
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ガチャで領地改革! 没落辺境を職人召喚で立て直す若き領主
雪奈 水無月
ファンタジー
魔物大侵攻《モンスター・テンペスト》で父を失い、十五歳で領主となったロイド。
荒れ果てた辺境領を支えたのは、幼馴染のメイド・リーナと執事セバス、そして領民たちだった。
十八歳になったある日、女神アウレリアから“祝福”が降り、
ロイドの中で《スキル職人ガチャ》が覚醒する。
ガチャから現れるのは、防衛・経済・流通・娯楽など、
領地再建に不可欠な各分野のエキスパートたち。
魔物被害、経済不安、流通の断絶──
没落寸前の領地に、ようやく希望の光が差し込む。
新たな仲間と共に、若き領主ロイドの“辺境再生”が始まる。
氷河期世代のおじさん異世界に降り立つ!
本条蒼依
ファンタジー
氷河期世代の大野将臣(おおのまさおみ)は昭和から令和の時代を細々と生きていた。しかし、工場でいつも一人残業を頑張っていたがとうとう過労死でこの世を去る。
死んだ大野将臣は、真っ白な空間を彷徨い神様と会い、その神様の世界に誘われ色々なチート能力を貰い異世界に降り立つ。
大野将臣は異世界シンアースで将臣の将の字を取りショウと名乗る。そして、その能力の錬金術を使い今度の人生は組織や権力者の言いなりにならず、ある時は権力者に立ち向かい、又ある時は闇ギルド五竜(ウーロン)に立ち向かい、そして、神様が護衛としてつけてくれたホムンクルスを最強の戦士に成長させ、昭和の堅物オジサンが自分の人生を楽しむ物語。
【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
異世界転生したおっさんが普通に生きる
カジキカジキ
ファンタジー
第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位
応援頂きありがとうございました!
異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界
主人公のゴウは異世界転生した元冒険者
引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。
知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる