復讐の技を磨くため、俺は大都会静岡へと征く

ばたっちゅ

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【 三保松原の激戦 】

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 しかし落ち着いて考えてみれば、周囲は燃え盛る炎。
 巨大な怪物の死骸。つかこれどうやって処理するんだ?
 まあ刻んであの海の境界に放り込めばいいのか。
 人力だと大変だから投石器が必要だな。
 というかそんな事、今はどうでも良い。

 さっきの奴が出た影響か、海岸から新たな敵は出てこない。
 かなりの武器弾薬を失った身としては、ここで大規模戦なんてやられたらどうにもならない。
 逃げる足も無いし。
 まあ俺は全弾しっかりと持っているし銃も問題無い。
 ただ他がなあ……。

 途方に暮れていた俺だが、他3人はなんか優雅なものだ。
 特に焦りも無いし、進むでも戻るでもなく何かを待っている感じだ。
 あのセスナの二人か?
 静岡空港で補給して戻って来るまでに30分だったか40分だったか。
 確かに早いが、そこまで敵も待ってはくれないよな。

 ブッブー。

 そんな俺たちの横に、クラクションと共に炎を突きって1台の装甲トラックが止まる。
 見知った車というか、さっき爆発したのと同じ奴じゃないか。

「待たせたな、早く乗れ! 敵は待ってはくれないぞ!」

 大宮サンダース教官!?
 どうなっているんだ?
 まさか予備の車を近くに隠してあったのか?
 だが怪我も無ければ服も汚れていないぞ?

「急ぎましょう。そろそろ海岸から、またビーンが湧き出て来るわ」

「クラゲが出て来ても、俺はもう相手しないぞ」

「早く乗りましょう」

 それぞれひょいひょいとジャンプ1回で飛び乗っていくが、こちらは普通の人間なんだよ。
 しかも体中ボロボロだ。くそう。

 何とかよじ登ろうとすると、高円寺こうえんじが手を差し伸べてくれた。
 有難い。心にピカーと光が射した気がするよ。

「急ぎましょう」

 その言葉と共に、腕が抜けそうな勢いで引っ張られた激痛で現実に戻されたけどな。




 ◆     ◆     ◆




 まだ納得していないが、大宮サンダースの武装トラックで海岸線をひた走る。

「なあ、サンダース教官はお前たちと同じ様な感じなのか?」

「TYPEの話? 彼はAよ」

「そうすると……Bにはなれなかったってわけか」

「そうね。でも詳しい事は分からないわ。薬の耐性が無かったのか自分からAである事を選んだのか。まあ聞く事じゃないわね」

「それは同意だ」

 人それぞれ事情がある。
 しかもこれは人体改造に関する事だ。俺が口出すような問題ではない。
 ただ気になるのは、このトラックと新しい武器弾薬はどっから持ってきた?
 怪我はそんなに早く治るものなのか? 服も綺麗な状態だが着替えたのか?
 なんかこいつもこいつでやべーやつな気がする。
 だがまあ、別の意味でヤバい奴は他にいるわけで……。

「ぼさっとしていないで、とっとと撃てよ民間人!」

「ちゃんと撃ってはいるだろ。お前の豆鉄砲と一緒にするな」

「なんだと! 貴様!」

「はいはい、喧嘩は無しね」

「今は戦闘中ですよ。ちゃんと集中してください! あたしだって怒る時は怒りますからね」

 高円寺こうえんじの言葉にはあまり迫力はないが、まあ怒らせたら死ぬんだろうなって事は分かる。
 ただでさえ力のブレーキが効かない子だ。
 でも同時に優しい子でもある。後悔だけはさせないようにという理由だけで、今は杉林すぎばやしとは和解しておこう。

「だから撃つのがおせーんだよ、一般人!」

 ここは我慢、我慢だ。
 相変わらず移動先からワラワラと湧いて来るビーン。
 本当に多いが、銃器の前では結構雑魚だ。
 だがあの長い腕。直線でなら素早い移動。民間人では太刀打ちできない相手には違いない。
 今は後ろを来栖くるすと高円寺が対処してくれているが、何とか一匹も逃さず目的地に到着したいものだ。
 というか、補充した武器弾薬の中にはもちろんアレもある。
 だが今は使わないという事は――、

「そろそろ到着だ。戦闘準備!」

 やはりな。
 予想よりも到着が早かったというか、すぐに使う予定があったから温存したというべきか。

 今までの海岸線は結構テトラポットがあったが、この辺りになるとだいぶ少なくなってくる。
 元々今まで通ってきた久能海岸はキス釣りでは有名な所だが、ここ三保の松原は近隣の釣り人にとっては聖地だったらしい。
 キスやヒラメはもちろん、イカやタコ、スズキやシイラ、ブリまで陸から釣れる。
 いや釣れただな。
 今はもう、あの海岸は幻だ。
 代わりにそこからは、真っ白いビーンの集団が地面に白い絨毯を作っている。
 まったく実に迷惑な事だ。

「あいつらの目的は何なんだ?」

「座学で聞いていたでしょう? 巣を作る事よ」

「その位はちゃんと聞いていたよ。ただあの大規模集団は何なのかと思ってね。まるでヌーの行進だ」

「あれは昔からの習性ね。今の所は、ただ単に近くの人間を襲うだけよ」

「もう調べていると思いますが、巣の作り方は一つではありませんし、日々こちらに対抗するように進歩しています。今はギラントが巣を作るためにビーンが暴れるのだとされていますが……」

「あいつらが巣を作り出す可能性もあるのか」

「要は殲滅すればいいだけだ!」

 まあその点に関しては同意だ。
 連中と戦う事は俺の本懐ではなかった。だけど現状を知った以上、見過ごすことは出来ない。
 それに何だかんだで技術も身に付くしな。
 しかも、もうそれは過去の話となった。
 用宗港もちむねこう――だったか? あそこでの戦いで奴が現れた。
 当然ながら、今もここにいる保証はない。
 だけど今はなんとなく感じている。
 奴はまだこの地にいる。そう遠くない未来に、必ず会えるだろう。
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