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【 それぞれの未来 】
謁見が終わり 前編
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結局、その後は雑談という名の食事会となり、俺はオスピアたちと様々な話をした。
人類の歴史、そして今までの魔王達の事などだ。
予想通りだったが、ここまで会いに来た魔王は結構いたようだ。
いや、そもそも壁の無い時代は、会いに来るのが普通だったらしい。そこで、魔王としての立場と仕事を教え込まされるのだとか。
立場と仕事――それは魔族の代表となり、飽和する人間を魔族を使って減らすと言う事だ。
酷い話だなーと思う。
まさかこんな見知らぬ世界に召喚され、同じ人間――それも最も偉い立場の人間から、そんな事を要請されるのだ。
魔人達にも囲まれ、残りの人生もう逃げ道は何処にも無い。なかなかにハードだ。
魔人や魔族を捨て、人間側に付こうとした魔王も結構いたらしい。これもまあ、当然の成り行きか。
まあ、生きている限りは何をしていても構わないのが魔人の立場だ。それは問題ないのだろう。
実際に、今まで一つ疑問だった。
ここまで魔人達が魔王を放任しているのに、なぜ魔王が素直に人類の敵であり続けたのかがだ。
ところが現実には、魔族と人間の対立の構図を作ってきたのは人間であって、その理由は増え続ける自分達の数を調節する事。そして人間との共存を求めた魔王も、実際には沢山いたわけだ。
だが俺と違い、他の魔王は最初から魔王だ。とはいえ状況も変えられない。
結局最後は人間と対立し、殺されそうになり、逃げて……まあ、最後はどの魔王も同じなわけで。
むしろ中途半端な和睦のせいで人間が増えすぎて、次の魔王は減らすのに苦労したという。
だが前の魔王は違った。
人間と魔族、互いの間に壁という境界を作り不可侵の体制を作ったのだ。
全ての魔族の領域移動を禁じ、その間に人間は壁を作る。それは千年以上の長い間、上手くいっていた。だが人間は結局、壁を越えて魔族領へと攻め込んだ。
「どうして先代魔王は、人間が壁を越えた時点で迎撃しなかったんだ? まだ多くの魔族もいたろうに。それを見捨ててまで何をしていたんだ?」
「あ奴は人間とは戦わぬ道を選んだの。だから好きにさせたのだ」
そいつはまた、随分と無責任な事だ。人それぞれ事情や考えがある事は理解する。だが魔族の領域移動は、全部許可しておくべきではなかったのか?
そうすれば奥の領域の魔族、例えば翠玉竜なんかは仲間のために戦っただろう。
彼らだけではない。他の魔族達も、領域移動が自由であれば交流も同盟も共闘もあっただろう。戦えない魔族も、別の領域へ逃げる事が出来たはずだ。
「人間として、同じ人間とは戦いたくなかったって事か。だが俺からすれば、かなり酷い決定だと思うね」
「もしあ奴が戦う道を選んでいたら、お主は呼ばれなかったであろうの。そういった意味では、確かにお主も被害者である。だがまあ、済んだ事であるな」
軽―く流されてしまったが、別に被害者ぶったのではない。
とは言え、確かに人間と争っていれば俺を呼ぶ余裕は無かっただろう。
いや、もし魔族の移動が自由だったら、とっくに海の自由は失われているな。そして魔族は壁を越え、弱った人間世界を荒らしまわっていただろう。
そんな状態で呼ばれても困る……。
「俺の召喚……いや、前魔王が死ぬ事はいつ頃に決まったんだ?」
「もう何百年も前よ。お主が産まれる前から決まっておったの。召喚する日も決まっておった。全て、あ奴の予定通りという訳だの」
どうやって俺を知り、そして決めたかは分からない。俺の頭で考えたって無駄だろう。
だがやはり、全ては計画の内だったわけだ。
ならば、魔人を介して俺の行動も決めておけばよかったろうにとも思う。
だがそれはしなかった。俺自身が考え、そして決めろって事なのだろう。
◇ ◇ ◇
こうして謁見は終わり、魔王と魔神達はマリッカに連れられて帰って行った。
行動の許可は出してある。後は好きなだけ観光をし、飽きたら魔族領へ帰るとよい。
オスピアは静かになった部屋で、二人の会見を思い返していた。
もし次の戦いで人類が勝てば、それはすなわち人類の滅亡を意味している。
一方で魔王が勝てば、逆に人類は生き延びることが出来る。
なんとも、皮肉な事であるの……。
しかし、リッツェルネールが勝利しつつも、魔王が逃げ延びる可能性もある。
いや、そもそも魔神達が、最後の魔王をみすみす殺させるとは思わない。むしろ、そうなる確率が一番高いだろう。
ならばどうなるであろうか?
全ての魔族領は人間の土地となり、目に見える魔族は海だけとなろう。
だが、今のままでは人は海に手を出せぬ。そうなれば、いよいよ人の耳目の全てが、自らの社会へと向かう事になる。
そこに待っているのは、彼による徹底的な管理社会だ。
当然、最初の内は反発も多いだろう。大規模な混乱が起き、争いにまで発展することは疑いようもない。
だが50年、100年と経つうちに、人はその社会に慣れる。
人間同士による監視と管理。それを受け入れた時、人類は確実に、今よりも発展できるのではないだろうか?
少なくとも戦争を繰り返し、破壊し殺しあう今よりは遥かにマシであろう。
だが、自由でありたいという生命の本質を、どこまで教育で抑え込めるかが問題となる。
結局のところ、どれほど抑え込もうとも、本能は完全には制御出来ぬのだ。
そして制御できないからこそ、魔王と言う存在が必要だった。
増え続ける人間を殺す――その魔王の仕事を、これからは彼――リッツェルネールが行う事となる。
大きく変わる点は、伝説で曖昧な魔王ではなく、身近な人間が実行すると言う事だ。
社会全体的に考えれば今より良い社会と言っても、当事者たちが納得するだろうか? 身近にいる分、むしろ憎悪の度合いは今よりも高まるだろう。
この社会は、長くは持たぬかもしれぬ……。
たとえ長く保たれたとしても、果たして個人単位で見た時、それは幸せな世界なのだろうか。
人類の歴史、そして今までの魔王達の事などだ。
予想通りだったが、ここまで会いに来た魔王は結構いたようだ。
いや、そもそも壁の無い時代は、会いに来るのが普通だったらしい。そこで、魔王としての立場と仕事を教え込まされるのだとか。
立場と仕事――それは魔族の代表となり、飽和する人間を魔族を使って減らすと言う事だ。
酷い話だなーと思う。
まさかこんな見知らぬ世界に召喚され、同じ人間――それも最も偉い立場の人間から、そんな事を要請されるのだ。
魔人達にも囲まれ、残りの人生もう逃げ道は何処にも無い。なかなかにハードだ。
魔人や魔族を捨て、人間側に付こうとした魔王も結構いたらしい。これもまあ、当然の成り行きか。
まあ、生きている限りは何をしていても構わないのが魔人の立場だ。それは問題ないのだろう。
実際に、今まで一つ疑問だった。
ここまで魔人達が魔王を放任しているのに、なぜ魔王が素直に人類の敵であり続けたのかがだ。
ところが現実には、魔族と人間の対立の構図を作ってきたのは人間であって、その理由は増え続ける自分達の数を調節する事。そして人間との共存を求めた魔王も、実際には沢山いたわけだ。
だが俺と違い、他の魔王は最初から魔王だ。とはいえ状況も変えられない。
結局最後は人間と対立し、殺されそうになり、逃げて……まあ、最後はどの魔王も同じなわけで。
むしろ中途半端な和睦のせいで人間が増えすぎて、次の魔王は減らすのに苦労したという。
だが前の魔王は違った。
人間と魔族、互いの間に壁という境界を作り不可侵の体制を作ったのだ。
全ての魔族の領域移動を禁じ、その間に人間は壁を作る。それは千年以上の長い間、上手くいっていた。だが人間は結局、壁を越えて魔族領へと攻め込んだ。
「どうして先代魔王は、人間が壁を越えた時点で迎撃しなかったんだ? まだ多くの魔族もいたろうに。それを見捨ててまで何をしていたんだ?」
「あ奴は人間とは戦わぬ道を選んだの。だから好きにさせたのだ」
そいつはまた、随分と無責任な事だ。人それぞれ事情や考えがある事は理解する。だが魔族の領域移動は、全部許可しておくべきではなかったのか?
そうすれば奥の領域の魔族、例えば翠玉竜なんかは仲間のために戦っただろう。
彼らだけではない。他の魔族達も、領域移動が自由であれば交流も同盟も共闘もあっただろう。戦えない魔族も、別の領域へ逃げる事が出来たはずだ。
「人間として、同じ人間とは戦いたくなかったって事か。だが俺からすれば、かなり酷い決定だと思うね」
「もしあ奴が戦う道を選んでいたら、お主は呼ばれなかったであろうの。そういった意味では、確かにお主も被害者である。だがまあ、済んだ事であるな」
軽―く流されてしまったが、別に被害者ぶったのではない。
とは言え、確かに人間と争っていれば俺を呼ぶ余裕は無かっただろう。
いや、もし魔族の移動が自由だったら、とっくに海の自由は失われているな。そして魔族は壁を越え、弱った人間世界を荒らしまわっていただろう。
そんな状態で呼ばれても困る……。
「俺の召喚……いや、前魔王が死ぬ事はいつ頃に決まったんだ?」
「もう何百年も前よ。お主が産まれる前から決まっておったの。召喚する日も決まっておった。全て、あ奴の予定通りという訳だの」
どうやって俺を知り、そして決めたかは分からない。俺の頭で考えたって無駄だろう。
だがやはり、全ては計画の内だったわけだ。
ならば、魔人を介して俺の行動も決めておけばよかったろうにとも思う。
だがそれはしなかった。俺自身が考え、そして決めろって事なのだろう。
◇ ◇ ◇
こうして謁見は終わり、魔王と魔神達はマリッカに連れられて帰って行った。
行動の許可は出してある。後は好きなだけ観光をし、飽きたら魔族領へ帰るとよい。
オスピアは静かになった部屋で、二人の会見を思い返していた。
もし次の戦いで人類が勝てば、それはすなわち人類の滅亡を意味している。
一方で魔王が勝てば、逆に人類は生き延びることが出来る。
なんとも、皮肉な事であるの……。
しかし、リッツェルネールが勝利しつつも、魔王が逃げ延びる可能性もある。
いや、そもそも魔神達が、最後の魔王をみすみす殺させるとは思わない。むしろ、そうなる確率が一番高いだろう。
ならばどうなるであろうか?
全ての魔族領は人間の土地となり、目に見える魔族は海だけとなろう。
だが、今のままでは人は海に手を出せぬ。そうなれば、いよいよ人の耳目の全てが、自らの社会へと向かう事になる。
そこに待っているのは、彼による徹底的な管理社会だ。
当然、最初の内は反発も多いだろう。大規模な混乱が起き、争いにまで発展することは疑いようもない。
だが50年、100年と経つうちに、人はその社会に慣れる。
人間同士による監視と管理。それを受け入れた時、人類は確実に、今よりも発展できるのではないだろうか?
少なくとも戦争を繰り返し、破壊し殺しあう今よりは遥かにマシであろう。
だが、自由でありたいという生命の本質を、どこまで教育で抑え込めるかが問題となる。
結局のところ、どれほど抑え込もうとも、本能は完全には制御出来ぬのだ。
そして制御できないからこそ、魔王と言う存在が必要だった。
増え続ける人間を殺す――その魔王の仕事を、これからは彼――リッツェルネールが行う事となる。
大きく変わる点は、伝説で曖昧な魔王ではなく、身近な人間が実行すると言う事だ。
社会全体的に考えれば今より良い社会と言っても、当事者たちが納得するだろうか? 身近にいる分、むしろ憎悪の度合いは今よりも高まるだろう。
この社会は、長くは持たぬかもしれぬ……。
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本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。
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