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【 魔族と人と 】
領域の旅 前編
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出来たばかりの長い溶岩世界から一歩踏み出せば、そこは何事も無かったかのような荒れ地の世界。
すぐ隣で荒れ狂う大地の熱も音も、何一つ伝わってこない。まるで無音映像を見ているようで不思議な気分だ。
今までも領域を跨いだ時はそうなっていたが、流石に一大スペクタクルが起きているとなると、いつもよりも感慨深い。
「それで、ここは腐肉喰らいの領域跡地でいいんだよな」
「正確には、さっき溶岩の土地にした部分もそうかな」
初めてリアンヌの丘に行くときに、ノセリオさんから教わった事だ。
改めて彼女の事を思う――いや、今まで考えないようにしてきた。
魔王に壁を越えさせて、何の咎も無いとは思わない。俺が暢気に考えていたより、人間の世界は厳しいのだ。
おそらくもう、彼女は生きていないだろう。これからは、きちんとそういった事にも向き合っていかなければいけない。
「エヴィア、この辺りに領域の欠片は残っているか?」
「欠片も残っていないかな。人間世界でも残ってたのに、この辺りは随分念入りに解除されたね」
なるほどね……領域解除は人力だ。そのせいか、結構やり残しがある。
人間世界で通った土地にのもかなりあって、やろうと思えば修復は出来た。
まあ、そんな事をしたら色々と迷惑が掛かるのでやらなかったが。
そんな訳でここいらも期待したのだが、正直無駄足だったか。
まあ、もともと解除された領域だ。生き物もいないとあっては、結局またすぐに解除されてしまうだろう。
「この先は魔障の地だっけか?」
「人間は別の名前で呼んでいたように思うけど、エヴィアは覚えていないよ」
「夜には到着するのではあるが、まおーの体を考えて途中で休むのであるぞ」
「そうだな」
正直言えば、領域の修復よりも身体的な疲労は少ない。あの時は一度俺の体に魔力を通す必要があったが、今回は直接使用した。だから規模に対して、こちらの体への負担は少ないんだろう。
だが、意識しないだけで消耗はあるかもしれない。こうしてスースイリアの頭の上に居るだけで十分な休息にはなっているが、まあ、明日到着すればいいだろう。
こうしてゆっくりと移動してたのだが、少し離れたところで地面がポコリと盛り上がる。
モグラの穴か? それにしては妙に大きい。直系3メートル……いや、もっとデカいか。
俺の考えを察して、スースイリアが穴の方へと進路を変える。あれはいったい何だろうか……。
そう、覗き込んだとたん、穴から一斉に灰色の蛇の群れが噴き出して来た!
「「「魔王ーーーーーー! あああーーー、魔王ーーーー!」」」
「う、うわ!」
余りの驚きに、スースイリアから落ちそうになる。
よく見れば、蛇は10匹ほど。ただ勢いよく蠢いているので、ハッキリとは分からない。
ただ分かる事、胴体は一匹だ。こいつはヒドラだな。
「「「魔王ーー! 会いたかったーー! ああああーー寂しかったよぉーー!」」」
スースィリアが半ば立ち上がったので捕まらずに済んだが、何時もの様に地面近くにいたら危なかった。しかし何だろう、この感じ、この口調。もしかしてこいつら、いやこいつ……。
「子供のヒドラかな。土に潜って隠れていたみたいだね」
「いや隠れてたってどんくらいだよ……」
ちょっと呆れたが、そういや爬虫類って、かなり長い期間の絶食に耐えられるんだったな。
もしかして、人間が攻めてきた時からずっと隠れていたのだろうか。
取り敢えず挨拶してから考えよう……そう思った矢先――
( 「「「「魔王ー、魔王ー、魔王ーー!」」」」 )
( 「いや良いからくっつくな、甘えるな、甘噛みするな! 結構痛いぞ!」 )
( いや本当に痛い。灼熱の翼竜の子供も大概だが、こいつら自分がデカい事をもっと自覚しろ )
( 「ん? 魔王、だめかな! 離れて」 )
( 「「「「ひゃー! 痛いー!」」」」 )
( 切り裂かれるヒドラたちの首。いやいや、いったい何を!? )
( ――ドクン! 空に動悸が激しくなり、体が震える。 )
( 霞んだ目に映るのは、甘噛みされた傷がブクブクと膨らみ腐る光景だった )
――あぶねえ、ストップ!
ギリギリのところでスースィリアの頭が止まる。
こいつら猛毒持ちじゃなねぇか! しかもその自覚無いし! つか久々に死を視たぞ!
「「「魔王ー、魔王ー、魔王ーー!」」」
口を開けながらぴょんぴょん跳ねている姿は、まるで餌をねだる雛鳥だ。よく見ると、毒蛇特有の牙からは涎の様に液体が流れている。その気は無くても、体は殺す気マンマンだぞ。
大方、肉の匂いに反応しているのだろうが……。
「一匹か? 仲間はいないのか?」
「「「どこかにいるかもだけど、知らないよー」」」
困ったものだ。もしかしたら、さっき領域を作った時に巻き込んでしまったかもしれない。だとしたら、十中八九殺してしまったな。
しかし、今は反省しても仕方がない。それよりも、結構大きな問題だ。
ヒドラ用の領域を作る。言うは簡単だが、俺はこいつの生態を知らない。それに一匹……いや、他にも生き残りは居るかもしれないが、その僅かな生存者の為に戦争を控えたこの状態で作るのは意味が無い。むしろある意味マイナスだ。
「見たところ、地形の順応性は高そうだな」
「「「寒すぎるのも暑すぎるのもだめー!」」」
……見た目ほど頑丈では無いらしい。
だが、話を聞いた限りでは次の目的地は大丈夫だろう。熱くも寒くもないし、なんとなくイメージ的にヒドラが住んでいてもおかしくはないからな。
すぐ隣で荒れ狂う大地の熱も音も、何一つ伝わってこない。まるで無音映像を見ているようで不思議な気分だ。
今までも領域を跨いだ時はそうなっていたが、流石に一大スペクタクルが起きているとなると、いつもよりも感慨深い。
「それで、ここは腐肉喰らいの領域跡地でいいんだよな」
「正確には、さっき溶岩の土地にした部分もそうかな」
初めてリアンヌの丘に行くときに、ノセリオさんから教わった事だ。
改めて彼女の事を思う――いや、今まで考えないようにしてきた。
魔王に壁を越えさせて、何の咎も無いとは思わない。俺が暢気に考えていたより、人間の世界は厳しいのだ。
おそらくもう、彼女は生きていないだろう。これからは、きちんとそういった事にも向き合っていかなければいけない。
「エヴィア、この辺りに領域の欠片は残っているか?」
「欠片も残っていないかな。人間世界でも残ってたのに、この辺りは随分念入りに解除されたね」
なるほどね……領域解除は人力だ。そのせいか、結構やり残しがある。
人間世界で通った土地にのもかなりあって、やろうと思えば修復は出来た。
まあ、そんな事をしたら色々と迷惑が掛かるのでやらなかったが。
そんな訳でここいらも期待したのだが、正直無駄足だったか。
まあ、もともと解除された領域だ。生き物もいないとあっては、結局またすぐに解除されてしまうだろう。
「この先は魔障の地だっけか?」
「人間は別の名前で呼んでいたように思うけど、エヴィアは覚えていないよ」
「夜には到着するのではあるが、まおーの体を考えて途中で休むのであるぞ」
「そうだな」
正直言えば、領域の修復よりも身体的な疲労は少ない。あの時は一度俺の体に魔力を通す必要があったが、今回は直接使用した。だから規模に対して、こちらの体への負担は少ないんだろう。
だが、意識しないだけで消耗はあるかもしれない。こうしてスースイリアの頭の上に居るだけで十分な休息にはなっているが、まあ、明日到着すればいいだろう。
こうしてゆっくりと移動してたのだが、少し離れたところで地面がポコリと盛り上がる。
モグラの穴か? それにしては妙に大きい。直系3メートル……いや、もっとデカいか。
俺の考えを察して、スースイリアが穴の方へと進路を変える。あれはいったい何だろうか……。
そう、覗き込んだとたん、穴から一斉に灰色の蛇の群れが噴き出して来た!
「「「魔王ーーーーーー! あああーーー、魔王ーーーー!」」」
「う、うわ!」
余りの驚きに、スースイリアから落ちそうになる。
よく見れば、蛇は10匹ほど。ただ勢いよく蠢いているので、ハッキリとは分からない。
ただ分かる事、胴体は一匹だ。こいつはヒドラだな。
「「「魔王ーー! 会いたかったーー! ああああーー寂しかったよぉーー!」」」
スースィリアが半ば立ち上がったので捕まらずに済んだが、何時もの様に地面近くにいたら危なかった。しかし何だろう、この感じ、この口調。もしかしてこいつら、いやこいつ……。
「子供のヒドラかな。土に潜って隠れていたみたいだね」
「いや隠れてたってどんくらいだよ……」
ちょっと呆れたが、そういや爬虫類って、かなり長い期間の絶食に耐えられるんだったな。
もしかして、人間が攻めてきた時からずっと隠れていたのだろうか。
取り敢えず挨拶してから考えよう……そう思った矢先――
( 「「「「魔王ー、魔王ー、魔王ーー!」」」」 )
( 「いや良いからくっつくな、甘えるな、甘噛みするな! 結構痛いぞ!」 )
( いや本当に痛い。灼熱の翼竜の子供も大概だが、こいつら自分がデカい事をもっと自覚しろ )
( 「ん? 魔王、だめかな! 離れて」 )
( 「「「「ひゃー! 痛いー!」」」」 )
( 切り裂かれるヒドラたちの首。いやいや、いったい何を!? )
( ――ドクン! 空に動悸が激しくなり、体が震える。 )
( 霞んだ目に映るのは、甘噛みされた傷がブクブクと膨らみ腐る光景だった )
――あぶねえ、ストップ!
ギリギリのところでスースィリアの頭が止まる。
こいつら猛毒持ちじゃなねぇか! しかもその自覚無いし! つか久々に死を視たぞ!
「「「魔王ー、魔王ー、魔王ーー!」」」
口を開けながらぴょんぴょん跳ねている姿は、まるで餌をねだる雛鳥だ。よく見ると、毒蛇特有の牙からは涎の様に液体が流れている。その気は無くても、体は殺す気マンマンだぞ。
大方、肉の匂いに反応しているのだろうが……。
「一匹か? 仲間はいないのか?」
「「「どこかにいるかもだけど、知らないよー」」」
困ったものだ。もしかしたら、さっき領域を作った時に巻き込んでしまったかもしれない。だとしたら、十中八九殺してしまったな。
しかし、今は反省しても仕方がない。それよりも、結構大きな問題だ。
ヒドラ用の領域を作る。言うは簡単だが、俺はこいつの生態を知らない。それに一匹……いや、他にも生き残りは居るかもしれないが、その僅かな生存者の為に戦争を控えたこの状態で作るのは意味が無い。むしろある意味マイナスだ。
「見たところ、地形の順応性は高そうだな」
「「「寒すぎるのも暑すぎるのもだめー!」」」
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