この争いの絶えない世界で ~魔王になって平和の為に戦いますR

ばたっちゅ

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【 滅び 】

希望の壊滅 後編

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 軍隊として、あるいは国家として考えれば、魔族の殲滅を勝利と呼ぶだろう。
 例えそうでなくとも、魔族の群れを突破し、他3大国との連絡拠点を確保できればそれを勝ちといってもいい。状況はもうそれ程に不利なのだ。
 だが、そのどちらも不可能な事は開始早々に明らかとなった。

 しかし彼らの勝利条件は違う。自分か、最悪でも家族を他の国へと送る事だ。
 国家など関係ない。莫大な資金、自由帝国での高い地位。それにより、新天地でも受け入れられるだろう。他の貧乏人とは違うのだ。
 そして、それは容易たやすいと思われた。力の限り突撃し、魔族の包囲の一点を破る。その程度のことが出来ない訳がない。軍部はそう宣伝していたではないか!
 自分たちは、誇り高いムーオス自由帝国の軍人。
 操るのは、その技術のすいを結集した近代兵器ではないか!

 確かに、ザビエヴ皇帝やハイウェン国防将軍、あるいは宰相のコルキエント。彼等なら、実際に可能であっただろう。
 全ての戦力を犠牲にしようともただ一点を突破する。そんな作戦を実行したらの話ではあるが……。




 世界が闇に包まれる頃、そこいらに散った肉片を、小さな蟹がモシャモシャと食べていた。多少腐敗したって構わない彼らの事だ、当分は食料には困らないだろう。
 ここに、ムーオス自由帝国軍最強の戦力は消滅した。
 その中を、巨大な蟹が悠然と闊歩する。
 金属質の外皮は一部が溶け、本当に金属であるかの様にドロリと垂れ下がっていた。それは揺り籠による猛攻の跡だ。
 多くの重飛甲母艦は揺り籠を抱えたまま墜とされた。
 しかしそれでも、100を超える揺り籠が戦場に投下された。その最大の目標こそが、ヨーツケールMk-II8号改であったのだ。
 そしてその事は、当然本人も予想していた。それゆえの大型化だった。

 ――ソレナリニハ、アブナカッタガ……ナカナカニ、キモチイイ。

 相和義輝あいわよしきが見たら心配でハラハラしっぱなしだったであろう外傷を受けながらも、ヨーツケールMk-II8号改は今回の戦いを十分に楽しんだのだった。




 ◇     ◇     ◇




 血まみれとなった半円形の議場に立ち、ハイウェンは事の顛末を知った。
 こちらの到着があと数日早ければ、このような大惨敗など起こらなかっただろう。
 そうであったのなら、まだ愚かな連中の軍勢を抑えられた。
 そうなれば、ムーオス自由帝国の主力部隊は健在であった。
 そうであれば……そうであったなら……何もかも手遅れになった時に使う言葉でしかない。
 愚かさを呪う。他に何が出来ようか。だが、いったい誰が真の愚か者だったのだろうか。

 もし抵抗を続けたら、いつかは勝利できたのだろうか?
 いや、無理だ。数年戦うのが精いっぱいでしかない。
 海という食料源を失った以上、もう滅びるまでの導火線は止まらない。
 抵抗し、奮戦し、力の限り頑張って……消える。それに何の意味があるというのか。
 確かに人類はそうしてきた。人民にもそう教育した。それは間違いだとは思わない。

 一方で、ムーオス自由帝国には他の国に対して優位な分野が多岐にわたる。これは戦争のない平和な時代が長かったからだ。
 そして、その間に開発した様々な設計図……重飛甲母艦や大型の浮遊式輸送板などの機械兵器。
 それらを生産する工場設備。金属加工技術も量産設備もムーオスの得意分野だ。そして何より揺り籠がある。
 どうせ滅びてしまうのであれば、これらの技術情報は持ち出すべきだ。

 情報も大切だ。海中にある飛行機関の為の鉱石の在処など、他国としては喉から手が出るほど欲しいだろう。
 それに、各地に備蓄されている特殊鉱石を始めとした金属や貴金属、宝石などの戦略物資の位置情報。
 今は魔族に制圧されたとしても、いずれは人類が巻き返した時に必要となるだろう。
 出来れば、その時先頭に立つのは元ムーオス人であって欲しい。
 そう考えれば、議員たちの行動原理は間違ってはいなかった。
 たとえ利己主義っであったとしても、その結果が全て間違いだったとは言い切れない。

「国防将軍殿。治安維持部隊の2割程は健在です。どうも、街の連中を抑えるために必要だったようで」

 通信兵からの報告を持って来たオンドを見て、改めて気を引き締める。
 少し弱気になってしまったが、愚かだったと諦めて何とするのか。

「各戦線の報告を全て調べよ。とにかく状況を把握せねばならん」

 あと何年……いや、何か月かもしれない。しかしたとえ数日――わずか一日の命であったとしても、最後まで抵抗を止める事は無い。
 自分達は、誇り高き人類なのだから。

「あ、それとなのですが、要塞工業都市ナテンテから連絡が入っています。ええと、ヘッケリオ・オバロスからですね」

「何と言ってきた」

「馬鹿は殺しましたが、問題は無いですね――と」

「そうか……ナテンテは健在なのだな」

 微かだが、希望の灯がともる。
 最後の抵抗、窮鼠の一矢。どう使うかで、ムーオスがどんな国であったのか――歴史にどう刻まれるのか。それが決まるだろう。
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