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番外編
シア視点2
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何故か、幼馴染のディシールに案内されて、殿下の私室に足を踏み込んだ。
そこには、殿下とともに、侯爵令嬢と公爵閣下というそうそうたる顔触れがそろっていた。
どういう状況だ?
殿下に言い寄っている令嬢はともかく、忙しいはずの閣下も?
マリエ様が、叫んでは、場を騒がせる。
それが不快だと、アリティ様が「黙らせなさい」と命じた。
私は、それに従った。
マリエ様が私を振り返り、何故!?と、言われたのが分かった。
この驚くほどに冷静な人の前で、この命令に背くことが何の意味があるだろう。
マリエ様の言葉は、全く耳に入れないし、雑音としてしか届いていないのだから、静かな方がいいだろう。
冷静に、全てをまとめていく姿に、憧れともいえる感情を抱く。
そう、あんな風に自分はありたかった。
心を乱さず、正しいことを、慈悲深く。
最後の最後で、アリティ様の声が少し震えた。
気が付いた人はいただろうか。
そう考えた瞬間に、アリティ様の腰を抱き、閣下がアリティ様を連れ去った。
パニックになったような令嬢から、守るように命令を出されて、この部屋を出ていく3人に付き従った。
マリエ様には、もう興味はなかった。
閣下の執務室で、紅茶をいただいた。
閣下自ずから入れてくださった紅茶は、なかなか美味しい。
いつも通り、気づかれていない間に、さっさと紅茶に砂糖を5つほど投入する。
どうやら、自分は甘いものが好きなようには見えないらしい。
甘いものを好きだと言えば、「そうなの!?」といった反応が返ってきて、たいへん煩わしい。
人の味覚の好みなど、どうでもいいだろう?
そう思って、紅茶を飲んでいると、目の前の皿に、マカロンが運ばれ始めた。
マカロン……一番好きな菓子だ。
あのおもちゃのような外見と、サクサクの食感、色に応じた香りが付いているのがまたいい。
そう思いながら、目の前につみあがるマカロンを黙って見ていた。
「アリティ?何をしているのです?」
閣下が、アリティ様に問うた。
自分が一番聞きたい。
「・・・シア、マカロンが好きなのかい?」
驚いたような視線を飛ばしてくるが、それに答えたのはアリティ様だった。
「え?シア、マカロン好きでしょう?というか、可愛いお菓子全部」
当然、みんな知っているはずだと言わんばかりの口調だ。
自分の好みなど、他人にしゃべったことなどない。
「……………はい」
呆然としたまま、返事をすれば、当然だとばかりに頷いて、自分のケーキに手を伸ばしていた。
何故、マカロンが好きだと知っているのか、不思議に思って聞けば、何故そんなことに疑問を持つのかと不思議そうな視線が返ってきた。
「シア、遠慮しなくていいのよ。ディシールは食べないし、どうせ余るんだから。いつもは侍女に頼んでも、一つくらいしか入れてくれないでしょう?いつも私がごそっと入れようと思っていたのよ」
いたずらが成功したような笑みを浮かべられて、一瞬、目を奪われた。
なんて、無邪気に笑えるのだ。
私の好みなど、誰も知りえるはずのないものなのに。
驚くディシールにさえ、さも当然のように説明を加えた。
「魔術師は、甘味を好むのよ。回復薬・・・魔力を回復させるから。シアは、甘いだけでなく、さらに可愛らしいものが好きなようだけれど」
言われて、そういえばそうかなと、赤面する。
甘みが好きなのはもちろんだが、可愛い菓子は、見るのも楽しいので、並んでいて、どれか食べられるのならば、綺麗なものを食べていた。
魔術師が甘味を好むと言うことを知っていたことにも驚かされる。
魔術師は、近寄りがたく、魔力を扱えない人間は、まず畏怖する。
だから、余程、勉強しない限り、魔術師の話などはさわりもしない。
アリティ様が特に魔術に興味があると言う場合を除けば、大変な博識だと推察される。
王妃教育を施されている片鱗が見えた。
そんな違うことに思考を奪われていれば、隣で縮こまるような雰囲気を感じた。
「……申し訳ありません。行儀の悪い真似をいたしました」
アリティ様が、真っ赤な顔で、申し訳なさそうに私を見上げていた。
凛として美しく、冷静に対処するかと思えば、泣くのを我慢し、失敗すれば恥ずかしそうにこちらをみてくる、美しい女性に心を奪われないようにするにはどうしたらいいだろう?
私には方法を見つけられない。
だから、さっさと奪われてしまった。
ああ、何て心地いいのだろう。
生まれて初めての、恋をした。
閣下が、アリティにプロポーズをした。
瞬間湧き上がる嫉妬。誰にも渡したくないと言う独占欲。
閣下が、私にそんな権利はないと言うけれど、こんな気持ちを抑え込めるはずがない。
震えるため息を吐く彼女を守りたい。
「私を理解してくれるのは、あなただけだと、思う。癒されたいのではなく、今は、あなたを守りたいと思う」
だから、どうか私を選んで。
「私にできるだけの選択肢を準備しよう」
そんな想いを込めて、ささやいた。
「結婚してください」
驚いた瞳に映るのが、自分だけであればいいと願った。
そこには、殿下とともに、侯爵令嬢と公爵閣下というそうそうたる顔触れがそろっていた。
どういう状況だ?
殿下に言い寄っている令嬢はともかく、忙しいはずの閣下も?
マリエ様が、叫んでは、場を騒がせる。
それが不快だと、アリティ様が「黙らせなさい」と命じた。
私は、それに従った。
マリエ様が私を振り返り、何故!?と、言われたのが分かった。
この驚くほどに冷静な人の前で、この命令に背くことが何の意味があるだろう。
マリエ様の言葉は、全く耳に入れないし、雑音としてしか届いていないのだから、静かな方がいいだろう。
冷静に、全てをまとめていく姿に、憧れともいえる感情を抱く。
そう、あんな風に自分はありたかった。
心を乱さず、正しいことを、慈悲深く。
最後の最後で、アリティ様の声が少し震えた。
気が付いた人はいただろうか。
そう考えた瞬間に、アリティ様の腰を抱き、閣下がアリティ様を連れ去った。
パニックになったような令嬢から、守るように命令を出されて、この部屋を出ていく3人に付き従った。
マリエ様には、もう興味はなかった。
閣下の執務室で、紅茶をいただいた。
閣下自ずから入れてくださった紅茶は、なかなか美味しい。
いつも通り、気づかれていない間に、さっさと紅茶に砂糖を5つほど投入する。
どうやら、自分は甘いものが好きなようには見えないらしい。
甘いものを好きだと言えば、「そうなの!?」といった反応が返ってきて、たいへん煩わしい。
人の味覚の好みなど、どうでもいいだろう?
そう思って、紅茶を飲んでいると、目の前の皿に、マカロンが運ばれ始めた。
マカロン……一番好きな菓子だ。
あのおもちゃのような外見と、サクサクの食感、色に応じた香りが付いているのがまたいい。
そう思いながら、目の前につみあがるマカロンを黙って見ていた。
「アリティ?何をしているのです?」
閣下が、アリティ様に問うた。
自分が一番聞きたい。
「・・・シア、マカロンが好きなのかい?」
驚いたような視線を飛ばしてくるが、それに答えたのはアリティ様だった。
「え?シア、マカロン好きでしょう?というか、可愛いお菓子全部」
当然、みんな知っているはずだと言わんばかりの口調だ。
自分の好みなど、他人にしゃべったことなどない。
「……………はい」
呆然としたまま、返事をすれば、当然だとばかりに頷いて、自分のケーキに手を伸ばしていた。
何故、マカロンが好きだと知っているのか、不思議に思って聞けば、何故そんなことに疑問を持つのかと不思議そうな視線が返ってきた。
「シア、遠慮しなくていいのよ。ディシールは食べないし、どうせ余るんだから。いつもは侍女に頼んでも、一つくらいしか入れてくれないでしょう?いつも私がごそっと入れようと思っていたのよ」
いたずらが成功したような笑みを浮かべられて、一瞬、目を奪われた。
なんて、無邪気に笑えるのだ。
私の好みなど、誰も知りえるはずのないものなのに。
驚くディシールにさえ、さも当然のように説明を加えた。
「魔術師は、甘味を好むのよ。回復薬・・・魔力を回復させるから。シアは、甘いだけでなく、さらに可愛らしいものが好きなようだけれど」
言われて、そういえばそうかなと、赤面する。
甘みが好きなのはもちろんだが、可愛い菓子は、見るのも楽しいので、並んでいて、どれか食べられるのならば、綺麗なものを食べていた。
魔術師が甘味を好むと言うことを知っていたことにも驚かされる。
魔術師は、近寄りがたく、魔力を扱えない人間は、まず畏怖する。
だから、余程、勉強しない限り、魔術師の話などはさわりもしない。
アリティ様が特に魔術に興味があると言う場合を除けば、大変な博識だと推察される。
王妃教育を施されている片鱗が見えた。
そんな違うことに思考を奪われていれば、隣で縮こまるような雰囲気を感じた。
「……申し訳ありません。行儀の悪い真似をいたしました」
アリティ様が、真っ赤な顔で、申し訳なさそうに私を見上げていた。
凛として美しく、冷静に対処するかと思えば、泣くのを我慢し、失敗すれば恥ずかしそうにこちらをみてくる、美しい女性に心を奪われないようにするにはどうしたらいいだろう?
私には方法を見つけられない。
だから、さっさと奪われてしまった。
ああ、何て心地いいのだろう。
生まれて初めての、恋をした。
閣下が、アリティにプロポーズをした。
瞬間湧き上がる嫉妬。誰にも渡したくないと言う独占欲。
閣下が、私にそんな権利はないと言うけれど、こんな気持ちを抑え込めるはずがない。
震えるため息を吐く彼女を守りたい。
「私を理解してくれるのは、あなただけだと、思う。癒されたいのではなく、今は、あなたを守りたいと思う」
だから、どうか私を選んで。
「私にできるだけの選択肢を準備しよう」
そんな想いを込めて、ささやいた。
「結婚してください」
驚いた瞳に映るのが、自分だけであればいいと願った。
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