乱暴にされたい彼女と優しい彼

ざっく

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彼2

ラスト

「勘違いしてひどいことをした」

追及するよりも、まず手荒に扱ったことを謝らなければならない。
あんなやり方じゃなく、最初から話をすればよかったのだ。
咲綾は驚いたように顔を上げて、ぶんぶんと勢いよく首を振った。
「俺のことは怖くないか?」
そして、たぶん彼女が思っているのとは全く別のことを言う。
咲綾は目をぱちくりさせて、
「えっ?あの、怖がってみせて……」
案の定、そんなことを言う。
頭をかかえたくなるのを我慢して、無表情のままさらに問いかける。
「演技とかじゃなく、本気で」
「でも、えっと……やる気がなくなったりします?」
陽介の眉間にしわが寄る。
予想が真実に近づいてきているようだ。
「……場合によっては」
「どっちがですか!?」
真剣な表情だ。
これが分からない時点で、確定すぎる。
「それを判断するから、答えろ」
「こ……怖い、って言ったら……どうします?」
なんとなく分かっていたのに、陽介の性癖を彼女に勘違いさせたままでいたことがそもそもの間違いだ。
咲綾は、陽介が嫌がる女性を無理矢理に抱くのが好きなのだと思い込んでいる。
いつ、誰が、そんなことをした!?
陽介はどちらかと言えば、ぐだぐだに甘やかしたい方だ。
女性を乱暴に扱ったことは、嫉妬にかられた今日が初めてだ。
陽介は絞り出すように声を発する。
「……怖がられているのに一緒にいる必要はないから……」
「怖くない怖くないです!全く!でも、お好みでしたら、怖がる演技の準備もあります!」
まだ微妙に、陽介の性癖はあっち側だ。

――そんなに好きか。

どうやら、咲綾は激しくされるのが好きなんだろうな。

「俺は、怖がられるより、笑顔で抱き付いて来てくれた方が嬉しいかな」

彼女の性癖が垣間見えたが、今は無視しておこう。
いつか、そういうプレイも付き合ってやるかもしれない。

「そっち……!?」

――そっちってなんだ。驚愕の表情を浮かべているが、絶対に俺の方がノーマルだ。

呆れと共に、笑いがこみあげてきて、声を出して笑ってしまった。
咲綾がさらに目をまん丸にして陽介を見てきたが、放っておいた。
つついたら、また別のものが出てくるかもしれない。

――この後。
陽介から連絡を受けてすぐにフライパンに投入していたハンバーグは、見事に片面真っ黒になっていた。
大騒ぎする咲綾を手伝うために陽介はキッチンに入る。そこに、ずらりと並ぶソースに気が付き、『味見』は本当に『味見』なのだと陽介は知る。
キスシーンに見えた『あれ』も、玄関に何か忘れたから中に入ったのだろう。
とんだ勘違い。
そして、真実を訴えるどころか、内緒にしたまま激しく抱いてもらおうと画策した咲綾。
本当に呆れを通り越して笑いが出てくる。
真っ黒の部分を切り落として、薄くなったハンバーグを二人で食べた。
不安そうにそわそわする彼女を前に、おいしいと言えば、花開くように笑顔が広がる。
本当に、今まで食べた何よりもおいしく感じた。

片付けはすると、キッチンに立つと、咲綾が背後に近づいて来る。
気を遣っているのかと思えば、それともどうやら違うようだ。
「えと……イチャイチャしてもいいんですか?」
言い方に、吹き出しそうになった。
「いいよ?」
答えた瞬間に、背中に咲綾がしがみついてくる。
陽介の両手が塞がっているのをいいことに、ぎゅうっとしがみついて、背中に頬ずりをされているようだ。
陽介が言ったとおりに、はにかみながら素直に抱き付いてくる咲綾が可愛い。
水を止めて、手を拭きながら振り向いて彼女を抱きしめる。

「ベッドに行こうか」


誘えば、耳からうなじまでもピンクに染め上げて、咲綾は頷いた。








後日談

耕哉との会話

「マジですか。こんなんでいいんですか?最近特に壊れてきてますけど。
 俺だったら嫌だ。キモイ。身内じゃなきゃ近寄りもしない」
「何よっ?嫉妬してるのね?私の方射止めたから」
「俺はノーマルだと何度も言ってるだろ!瀬戸さんを取り合う気はない。瀬戸さん、疑われてますよ。変態な上に腐ってますよ。気持ち悪くないですか?」
「あ~~……まあ、俺は好きだよ。素直で可愛いし」
「やだ。うそ。すてき。濡れちゃう」
「最後の一言が無理だ!キモイ!」
「濡れたのか?そのままじゃ気持ち悪いだろ?……脱ごうか?」
「はい……」
「俺がいないとこでしろー!」




感想 2

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みんなの感想(2件)

サボサボ
2024.05.31 サボサボ

このお話大好きです!
紗綾ちゃんと瀬戸さんのデートとか同棲とか結婚のお話もあったら読んでみたいです!

解除
コゲツ
2019.10.08 コゲツ

待て待て待てw 暴走やめいwww
紗綾ちゃん、瀬戸氏困惑してるから、もう少し相手を見よう?な?www

解除

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