5 / 8
勘違い?
しおりを挟む
ガーリンがノエルの横に座ったまま、足を蹴りあげて男子生徒を蹴り飛ばしていた。
「……女性?」
男子生徒と……ノエルの声がはもる。
ガーリンが不思議そうにチラリとノエルに視線を向けた。
いや……、だって、女性と言われるとは思わなかった。弱い者いじめとかそういう類ではなくて?
呆然としているノエルを置いて、ガーリンは立ち上がって転がる男子生徒に近づく。
「彼女の学力については大体把握している。特に算術は非常に優秀だ。不正などではない」
ガーリンはしっかりと相手を見据えて言葉を発する。
ノエルが優秀であることを言い、不正はないと証明してくれようとしている。
している……のだが、周りの人は、他の事が気になってそれどころではなかった。
「…………彼女?」
気にするところはそこではないのかもしれないが、一番気になるところだ。
「――?彼女だ。どこからどう見ても女性だろう」
当然、ガーリンは眉間にしわを寄せて周りを不愉快そうに見渡す。
彼にとっては周りの反応が気に入らないのだろう。
倒れた体制のまま、男子生徒はノエルを指さして悲鳴のような声をあげる。
「どこからどう見ても男ですよ!」
残念だが、その意見には賛成せざるを得ない。ノエルは、食堂の制服であるこの格好をしている時に女性だと思われたことは無い。自分でも鏡を見れば幼い男の子に見える。
ガーリンはその返事が残念でたまらないと言うように首を振って大きくため息を吐いた。
「お前たちは男を見たことが無いのか。こんなに愛らしい男がいるはずがないだろう」
その返事に目をむく男子生徒の表情を見ていられなかった。
その反応にムカつくけど同意できる。ガーリンの審美眼について問いたくなる気持ちも。
でも、その対象となるのが自分。もう、やだ。逃げたい。
「あ、そうなんですか……」
彼らは、諦めた。そして、ノエルにちらりと視線を向ける。
しかし、ノエルには、その視線が訴える疑問に答える余裕はない。
今までのガーリンとのやり取りがあれやこれやと思い出される。
主に、ふれあい系統だ。
距離感が近い人だなあとは思っていたけれど、あれが、ノエルが女性だと認識したうえでの行動?え?なにそれ?
彼らは目をさまよわせながら、撤退を選択した。
それには賛成だ。
ノエルもそうっと逃げることにした。
今日は鞄の中のお昼を提供することは諦めよう。今の顔色では彼と対峙する勇気がない。
「どこへ行く」
「ひええぇぇっ!」
ガーリンに腕を掴まれた時、さっきは出なかった悲鳴が出てしまった。
悲鳴をあげたことで、不機嫌な顔をしたガーリンと並んでいつものベンチに座った。
まだ顔の熱さが取れない。
顔を赤くした男と不機嫌な男が同じベンチに座っている光景って、どんなシチュエーションだ。
いたたまれない。
ガーリンといるままでは、この顔色が落ち着くとは思えない。ちょっと逃げさせてもらえないだろうか。
「ノエル」
「ひえっ!」
また悲鳴をあげてしまった。
チラリと見る彼の顔は、眉間にしわを刻み、への字口をして気に入らないと思い切り表している。
だって、自分を異性だと認識しているのに名前を呼ぶって、それって、それって……!
「あ、あの……エクスィアート様は……」
名前を読んだ途端、眉間のしわが深くなった。この状態でガーリンと呼ぶなんて無理だって。
「いつから、私を女性だと認識していらっしゃったのでしょうか」
「俺がノエルを男と思っていると思っていたということか」
責められているような気がして、ノエルは小さな声で「すみません」と謝った。
ガーリンはおでこに手を当てて、疲れたように大きくため息を吐いた。
「反応がいいのか悪いのか分からないと思っていたが……なるほど。そういうことか」
うつむいたまま、疲れたように何かを呟く声が聞き取り辛くて、ノエルは彼の顔を覗き込むようにして声を聞きとろうとしていた。
ガーリンがバッと顔を上げて、近づきすぎだったことにようやく気が付いた。
彼も驚いたように目を丸くする。
しかし、ノエルが慌てて引こうとする前に、彼の腕はノエルを捕まえてしまう。
近い近い!
慌てながら、ガーリンが近いと思ったことは何度かあったなと思い出す。
しかし、そんな考えも吹き飛ぶ衝撃発言をガーリンはする。
「俺は、ノエルが男だと勘違いしたことは一度もない」
「は……」
頭が真っ白になって、思考が停止する。
「今までの言動は、勘違いでも何でもなく、しっかりとノエルを口説いていた」
「え……」
目の前には、真剣な目が、真っ直ぐにノエルに向けられている。
誤魔化す気などない、真っ直ぐな気持ち。
「俺の気持ちに気が付かれていないとは意外だったが、ノエルが俺に好意を持ってくれているとは思っている」
「あ……ぅ……」
じわじわと、さらに顔に熱が集まってくる。
もう、鏡で自分の顔を見ることすら恥ずかしいのに、それを間近で見られている!
恥ずかしくてたまらないのに、自分の体が自分の物でないかのように動かない。
「ノエル」
低い声で甘く囁かれて、もう絶対に動けないと思った。
固まってしまったノエルを見て、ガーリンは微笑む。
――ようやく獲物をしとめた肉食獣のように。
「これから、よろしくな。――ノエル?」
「……女性?」
男子生徒と……ノエルの声がはもる。
ガーリンが不思議そうにチラリとノエルに視線を向けた。
いや……、だって、女性と言われるとは思わなかった。弱い者いじめとかそういう類ではなくて?
呆然としているノエルを置いて、ガーリンは立ち上がって転がる男子生徒に近づく。
「彼女の学力については大体把握している。特に算術は非常に優秀だ。不正などではない」
ガーリンはしっかりと相手を見据えて言葉を発する。
ノエルが優秀であることを言い、不正はないと証明してくれようとしている。
している……のだが、周りの人は、他の事が気になってそれどころではなかった。
「…………彼女?」
気にするところはそこではないのかもしれないが、一番気になるところだ。
「――?彼女だ。どこからどう見ても女性だろう」
当然、ガーリンは眉間にしわを寄せて周りを不愉快そうに見渡す。
彼にとっては周りの反応が気に入らないのだろう。
倒れた体制のまま、男子生徒はノエルを指さして悲鳴のような声をあげる。
「どこからどう見ても男ですよ!」
残念だが、その意見には賛成せざるを得ない。ノエルは、食堂の制服であるこの格好をしている時に女性だと思われたことは無い。自分でも鏡を見れば幼い男の子に見える。
ガーリンはその返事が残念でたまらないと言うように首を振って大きくため息を吐いた。
「お前たちは男を見たことが無いのか。こんなに愛らしい男がいるはずがないだろう」
その返事に目をむく男子生徒の表情を見ていられなかった。
その反応にムカつくけど同意できる。ガーリンの審美眼について問いたくなる気持ちも。
でも、その対象となるのが自分。もう、やだ。逃げたい。
「あ、そうなんですか……」
彼らは、諦めた。そして、ノエルにちらりと視線を向ける。
しかし、ノエルには、その視線が訴える疑問に答える余裕はない。
今までのガーリンとのやり取りがあれやこれやと思い出される。
主に、ふれあい系統だ。
距離感が近い人だなあとは思っていたけれど、あれが、ノエルが女性だと認識したうえでの行動?え?なにそれ?
彼らは目をさまよわせながら、撤退を選択した。
それには賛成だ。
ノエルもそうっと逃げることにした。
今日は鞄の中のお昼を提供することは諦めよう。今の顔色では彼と対峙する勇気がない。
「どこへ行く」
「ひええぇぇっ!」
ガーリンに腕を掴まれた時、さっきは出なかった悲鳴が出てしまった。
悲鳴をあげたことで、不機嫌な顔をしたガーリンと並んでいつものベンチに座った。
まだ顔の熱さが取れない。
顔を赤くした男と不機嫌な男が同じベンチに座っている光景って、どんなシチュエーションだ。
いたたまれない。
ガーリンといるままでは、この顔色が落ち着くとは思えない。ちょっと逃げさせてもらえないだろうか。
「ノエル」
「ひえっ!」
また悲鳴をあげてしまった。
チラリと見る彼の顔は、眉間にしわを刻み、への字口をして気に入らないと思い切り表している。
だって、自分を異性だと認識しているのに名前を呼ぶって、それって、それって……!
「あ、あの……エクスィアート様は……」
名前を読んだ途端、眉間のしわが深くなった。この状態でガーリンと呼ぶなんて無理だって。
「いつから、私を女性だと認識していらっしゃったのでしょうか」
「俺がノエルを男と思っていると思っていたということか」
責められているような気がして、ノエルは小さな声で「すみません」と謝った。
ガーリンはおでこに手を当てて、疲れたように大きくため息を吐いた。
「反応がいいのか悪いのか分からないと思っていたが……なるほど。そういうことか」
うつむいたまま、疲れたように何かを呟く声が聞き取り辛くて、ノエルは彼の顔を覗き込むようにして声を聞きとろうとしていた。
ガーリンがバッと顔を上げて、近づきすぎだったことにようやく気が付いた。
彼も驚いたように目を丸くする。
しかし、ノエルが慌てて引こうとする前に、彼の腕はノエルを捕まえてしまう。
近い近い!
慌てながら、ガーリンが近いと思ったことは何度かあったなと思い出す。
しかし、そんな考えも吹き飛ぶ衝撃発言をガーリンはする。
「俺は、ノエルが男だと勘違いしたことは一度もない」
「は……」
頭が真っ白になって、思考が停止する。
「今までの言動は、勘違いでも何でもなく、しっかりとノエルを口説いていた」
「え……」
目の前には、真剣な目が、真っ直ぐにノエルに向けられている。
誤魔化す気などない、真っ直ぐな気持ち。
「俺の気持ちに気が付かれていないとは意外だったが、ノエルが俺に好意を持ってくれているとは思っている」
「あ……ぅ……」
じわじわと、さらに顔に熱が集まってくる。
もう、鏡で自分の顔を見ることすら恥ずかしいのに、それを間近で見られている!
恥ずかしくてたまらないのに、自分の体が自分の物でないかのように動かない。
「ノエル」
低い声で甘く囁かれて、もう絶対に動けないと思った。
固まってしまったノエルを見て、ガーリンは微笑む。
――ようやく獲物をしとめた肉食獣のように。
「これから、よろしくな。――ノエル?」
155
あなたにおすすめの小説
【完結】逃がすわけがないよね?
春風由実
恋愛
寝室の窓から逃げようとして捕まったシャーロット。
それは二人の結婚式の夜のことだった。
何故新妻であるシャーロットは窓から逃げようとしたのか。
理由を聞いたルーカスは決断する。
「もうあの家、いらないよね?」
※完結まで作成済み。短いです。
※ちょこっとホラー?いいえ恋愛話です。
※カクヨムにも掲載。
新妻よりも幼馴染の居候を優先するって、嘗めてます?
章槻雅希
恋愛
よくある幼馴染の居候令嬢とそれに甘い夫、それに悩む新妻のオムニバス。
何事にも幼馴染を優先する夫にブチ切れた妻は反撃する。
パターンA:そもそも婚約が成り立たなくなる
パターンB:幼馴染居候ざまぁ、旦那は改心して一応ハッピーエンド
パターンC:旦那ざまぁ、幼馴染居候改心で女性陣ハッピーエンド
なお、反撃前の幼馴染エピソードはこれまでに読んだ複数の他作者様方の作品に影響を受けたテンプレ的展開となっています。※パターンBは他作者様の作品にあまりに似ているため修正しました。
数々の幼馴染居候の話を読んで、イラついて書いてしまった。2時間クオリティ。
面白いんですけどね! 面白いから幼馴染や夫にイライラしてしまうわけだし!
ざまぁが待ちきれないので書いてしまいました(;^_^A
『小説家になろう』『アルファポリス』『pixiv』に重複投稿。
嫌われ令嬢とダンスを
鳴哉
恋愛
悪い噂のある令嬢(妹)と
夜会の警備担当をしている騎士 の話
短いので、サクッと読んでもらえると思います。
読みやすいように、4話に分けました。
毎日1回、予約投稿します。
姉の話もこの後に続けて後日アップする予定です。
2024.10.22追記
明日から姉の話「腹黒令嬢は愛などいらないと思っていました」を5話に分けて、毎日1回、予約投稿します。
短いので、サクッと読んでもらえると思います。
妹の話を読んでからお読みいただきたいです。
婚約破棄ですか、では死にますね【完結】
砂礫レキ
恋愛
自分を物語の主役だと思い込んでいる夢見がちな妹、アンジェラの社交界デビューの日。
私伯爵令嬢エレオノーラはなぜか婚約者のギースに絶縁宣言をされていた。
場所は舞踏会場、周囲が困惑する中芝居がかった喋りでギースはどんどん墓穴を掘っていく。
氷の女である私より花の妖精のようなアンジェラと永遠の愛を誓いたいと。
そして肝心のアンジェラはうっとりと得意げな顔をしていた。まるで王子に愛を誓われる姫君のように。
私が冷たいのではなく二人の脳みそが茹っているだけでは?
婚約破棄は承ります。但し、今夜の主役は奪わせて貰うわよアンジェラ。
商人の娘でしかない私が、騎士様のそばにいる方法
ナナカ
恋愛
ねぇ、ジョシュア様。
妹の役目を続けていれば、あなたのそばにいてもいいですか?
プラチナブロンドに甘い容姿の騎士ジョシュア様は貧乏貴族出身。直接の血の繋がりはないけれど親類と言えなくもないから、商人の父は張り切って援助をしている。
そんな付き合いが十年以上続いていて、私たちは一緒にドレスを見に行ったりもする。でもジョシュア様にとっては私は今も小さな子供で、妹様たちの代わりでしかないらしい。……私はもう二十歳で、行き遅れの年齢になっているのに。
※他所で連載した「あなたとレースと花嫁衣装」を一部改稿したものです
拝啓 お顔もお名前も存じ上げない婚約者様
オケラ
恋愛
15歳のユアは上流貴族のお嬢様。自然とたわむれるのが大好きな女の子で、毎日山で植物を愛でている。しかし、こうして自由に過ごせるのもあと半年だけ。16歳になると正式に結婚することが決まっている。彼女には生まれた時から婚約者がいるが、まだ一度も会ったことがない。名前も知らないのは幼き日の彼女のわがままが原因で……。半年後に結婚を控える中、彼女は山の中でとある殿方と出会い……。
頭頂部に薔薇の棘が刺さりまして
犬野きらり
恋愛
第二王子のお茶会に参加して、どうにかアピールをしようと、王子の近くの場所を確保しようとして、転倒。
王家の薔薇に突っ込んで転んでしまった。髪の毛に引っ掛かる薔薇の枝に棘。
失態の恥ずかしさと熱と痛みで、私が寝込めば、初めましての小さき者の姿が見えるようになり…
この薔薇を育てた人は!?
前世の記憶でズルをしたツケを払う時が来たようです
鳴哉
恋愛
前世の記憶を持つ令嬢 と
その婚約者の王太子 の話
短いので、サクッと読んでいただけると思います。
読みやすいように、4話に分けました。
毎日、1話予約投稿します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる