小さな出会いの物語

宇彩

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プロローグ

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 ここは森深いとある町。町の西側には大きな山がそびえ東には大きな綺麗な海がある、町の半分ほどが木々でおおわれている。商店街には様々な店が立ち並び住人たちはみな楽しそうに笑っている、そんな町。
 そんな穏やかに見えるこの町には、昔からとある言い伝えが伝えられていた。昔、強力な魔法を使い一日足らずでこの町を消し飛ばし、たくさんの人々を殺した魔女がいる。その魔女に町を消し飛ばされたあとはまるで太陽さえもなくなってしまったかのように辺りが真っ暗になったと伝えられていることや、その魔女の姿を見た人がいないということから"黒魔"と呼ばれている、というものだ。
 その言い伝えを信じているために魔女は町の大半の人が嫌っており、その影響か、この町ではいまでも一部で"魔女狩り"と呼ばれる文化が行われている。この町のはるか西、山を越えた先には魔女たちが暮らす町があるのだが、そこからこの森深い町に迷いこんできた魔女を捕まえて町の役場に連れていくと決して安くはない額の賞金がもらえるのだ。その賞金につられて、主に若者やお金に困っている人たちが"魔女狩り"をする。

 

………

 

「逃げたぞ、あっちだ!」

 
 西の町から海に浮かぶ島に向かう途中で道を間違えてしまったのか、はたまたこの町の魔女狩りのことを忘れてしまっていたのか、町の上空で黒と紫のワンピースのような服ととんがり帽子に身を包んでほうきにまたがった一人の魔女が蒼い飛竜に乗った三人組の男に追われている。

「どんな手を使ってでも捕まえろ!美人だから高くつくぞ!」
「殺すなよ!金がもらえねえからな!」 

 男たちは先ほどから口々にそんな欲にまみれた言葉を叫んでいて、魔女に追いついては石を投げたり剣を振るったりして早く諦めて地に降りないかと攻撃を加えていく。彼女の纏っている服はあちらこちらが裂けたり破れたり血が滲んだりしていた。

「ーーっ!」
「ははは、ヒットだ!」

 男の中の一人が投げた枝が先ほど飛竜の鋭い爪によって彼女の腕につけられた大きな切り傷に刺さる。彼女は突然の痛みに声にならない声をあげながらも体内に残る魔力を絞り出して必死に逃げる。しかしもうギリギリなのだろう、最初に男たちに見つかった時よりも明らかに飛行速度も遅くなりふらふらとしていた。

「もうだめ…魔力が……」
「こいつらはこの町の上空でしかこんなことはできないからもう少し東へ逃げよう!」
「早く…町の外へ……」
「それにこの町を越えて海を越えれば目的地だよ!」

 追われている魔女は先ほどの以外にもあちらこちらに血の滲んだ痛々しい切り傷や擦り傷…男や飛竜につけられたもの…を負い、ふらふらと攻撃を避けながら飛んでいる。
 彼女の肩には使い魔だろうか、羽の生えた小さな毛玉の様にふわふわした黒猫が乗っかっている。
 二人はどこかに向かっていたのだろうがもう彼女の体力も魔力も限界だった。

「ごめんセイ…落ちる…」
「え、ちょ、」

 彼女はそう黒猫に声をかけると黒猫をぎゅっと抱きしめる。それと同時に真っ逆さまに、森の木の枝々に体やほうきの至るところを当てながら凄まじい音を立てて落ちていく。

(ああ、私もう死ぬんだろうな。奇跡的に落ちて生きててもそこで町の人に殺されるよ…だから魔女なんて…)
 

 彼女が落ちていくのをみていた男たちは、

「ちっ、落ちたか」
「あの調子だと多分死んだな」
「ざーんねん、かわいかったのにな。他を当たるか」

 そう言いながらどこかへ飛んでいった。
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