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この一帯でいちばん高いビルの屋上に立ち、夜明け前の中都市を一望する。
今が一番暗い。華やかさなど特にないし、見てても何も面白くない。
ただなんとなく、ここに立っていた方が仕事の効率がいい。
男は2キロメートルほど先の大通りの交差点に焦点を合わせると、重いため息をついた。
「都合よく……いいや都合悪く……集まってくれましたね。さて、仕事だ、仕事……」
漆黒の外筒をぴしっと体になじませると、スマートフォンを取り出し電話する。
「こちら礫苑。指定位置に六体。執行ののち、担当の魂の回収へ向かいます」
『はーい了解。気を付けてね』
聴こえてきたのは茶目っ気のある渋いおっさんの声だ。
礫苑は再びため息をつきながら通話をきると、今一度その街並みを……そのはるか遠くにいる魔物を気だるげに見据えた。
今日は重要な案件がある。さっさと終わらせて準備しよう。
すっと、音もなく屋上から落下すると、礫苑の身体は途中から重力に反するように滑空をはじめ、そのままさらに速度を上げて飛んだ。ゆるくカーブしたミドルヘアが激しくなびく。
車も人も一切いない大通りの上空を、一瞬で1キロメートルほど進んでから一度減速する。
そのさらに1キロメートル先に、異形の存在が六体集まり蠢いていた。
中心には漆黒の鳥籠。最上級の美味そうな魂が入っている。
皆その鳥籠に夢中でこちらには気づいていない。
魔物の内容は先ほど確認してある。
体長3メートルの不完全な鵺、5メートルの蛆らしき多目蟲、そしていちばんマシなヒト型に近い鎧殻持ち、あとの三体は魔に落ちたばかりの新参者だ。余裕で終わるだろう。
「律装・冠」
礫苑がそう呟くと、黒い外筒の背中部分がシュルシュルと音を立ててほつれ、その右手に集まって銀色の日本刀の形状を為した。刀身には南国の鳥の羽のような紋が浮き出ている。
「懈怠律・礫苑。執行する」
カチャリと刀の柄を握ったその刹那、急激に距離をつめる。
加速したまま魔物たちの中心に脚から滑り込むと、その勢いのまま身体をグルンと回転させて刀身を振った。
六体全ての肉体を、冠の刃が一瞬で奔り抜ける。豆腐のようにもろく、儚い感触でさえあった。
トッ、と着地し左手に鳥籠を持った時には、魔物たちは身動き一つとれないまま、蒸発するように大気へ溶けていった。
「今日も怖い思いをさせてすまない……。行きましょう」
礫苑は呼吸ひとつ乱さず歩き出す。刀を握る右手を弛緩させると、銀の刀身は黒い糸へと分解されながら、外筒へ吸収されていった。
「はあ……。面倒ですね」
思わずため息をついてしまう。これは礫苑の癖だが、今日の案件は本当に面倒だ。
「……ああ、すみません。あなたのことではありませんよ」
誰に言うでもなく、礫苑は呟く。
鳥籠の中には、青い光がうっすらと揺れていた。
今が一番暗い。華やかさなど特にないし、見てても何も面白くない。
ただなんとなく、ここに立っていた方が仕事の効率がいい。
男は2キロメートルほど先の大通りの交差点に焦点を合わせると、重いため息をついた。
「都合よく……いいや都合悪く……集まってくれましたね。さて、仕事だ、仕事……」
漆黒の外筒をぴしっと体になじませると、スマートフォンを取り出し電話する。
「こちら礫苑。指定位置に六体。執行ののち、担当の魂の回収へ向かいます」
『はーい了解。気を付けてね』
聴こえてきたのは茶目っ気のある渋いおっさんの声だ。
礫苑は再びため息をつきながら通話をきると、今一度その街並みを……そのはるか遠くにいる魔物を気だるげに見据えた。
今日は重要な案件がある。さっさと終わらせて準備しよう。
すっと、音もなく屋上から落下すると、礫苑の身体は途中から重力に反するように滑空をはじめ、そのままさらに速度を上げて飛んだ。ゆるくカーブしたミドルヘアが激しくなびく。
車も人も一切いない大通りの上空を、一瞬で1キロメートルほど進んでから一度減速する。
そのさらに1キロメートル先に、異形の存在が六体集まり蠢いていた。
中心には漆黒の鳥籠。最上級の美味そうな魂が入っている。
皆その鳥籠に夢中でこちらには気づいていない。
魔物の内容は先ほど確認してある。
体長3メートルの不完全な鵺、5メートルの蛆らしき多目蟲、そしていちばんマシなヒト型に近い鎧殻持ち、あとの三体は魔に落ちたばかりの新参者だ。余裕で終わるだろう。
「律装・冠」
礫苑がそう呟くと、黒い外筒の背中部分がシュルシュルと音を立ててほつれ、その右手に集まって銀色の日本刀の形状を為した。刀身には南国の鳥の羽のような紋が浮き出ている。
「懈怠律・礫苑。執行する」
カチャリと刀の柄を握ったその刹那、急激に距離をつめる。
加速したまま魔物たちの中心に脚から滑り込むと、その勢いのまま身体をグルンと回転させて刀身を振った。
六体全ての肉体を、冠の刃が一瞬で奔り抜ける。豆腐のようにもろく、儚い感触でさえあった。
トッ、と着地し左手に鳥籠を持った時には、魔物たちは身動き一つとれないまま、蒸発するように大気へ溶けていった。
「今日も怖い思いをさせてすまない……。行きましょう」
礫苑は呼吸ひとつ乱さず歩き出す。刀を握る右手を弛緩させると、銀の刀身は黒い糸へと分解されながら、外筒へ吸収されていった。
「はあ……。面倒ですね」
思わずため息をついてしまう。これは礫苑の癖だが、今日の案件は本当に面倒だ。
「……ああ、すみません。あなたのことではありませんよ」
誰に言うでもなく、礫苑は呟く。
鳥籠の中には、青い光がうっすらと揺れていた。
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