君に嫌われるまで死ねない

月址さも

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第一章

3.準備

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 魔女まじょ
 それはこの国の異種族と呼ばれる人々のことを指す。
 生まれながらにして魔力という物を持っている彼らは自然の道理を無視した不思議な力が扱える存在だ。

 この自然豊かなミデリーもかの有名な大魔女、ナンシー・エバンナによって栄えた代物だった。

 魔女は神から特別な力を授かった者として様々な場所でランダムに生まれる。
 つまり親が魔女でも、子供が魔女として生まれるかは分からない。

 私はその典型的なタイプで母のような特別な力などは何も持っていなかった。
 魔女はとても貴重な存在なので、こうして毎朝集会場に行かなければならない。

 その瞬間バタン、と家の玄関の扉が閉まった音が聞こえた。

(行った、みたいね)

「はあ、うっっ......」

 ベッドから起き上がろうとしてズキリ、と身体の節々が痛む。
 ふとトレイに置かれた白い粉薬を見て、私は悲しくなった。

(――そういえば、一度目の私はこの母が用意した薬を健気にずっと飲んでいたっけ)

 それは病弱な私のために母が調合してくれた薬だった。
 最初は何も思わず飲んでいた薬も今ではとても恐ろしく感じる。だってこれはただの毒薬だから。

 この事実を受け止めるのはとても苦しかったが、母は私を虐待していた。
 この薬は致死量には至らないものの、毎日服毒することで身体を弱らせ、やがて命を落とすもの。

 その証拠に四度目の私はこの薬を長期的に服用して、病衰したのだった。

 私は朝食を無視して、震える身体でなんとかクローゼットに向かう。
 中を開けると、そこは母が選んだ可愛らしい服で埋め尽くされていた。

(この上着と......あとはもっと動きやすい服に着替えなきゃ)

 急いで動きやすい服に着替え、ピンク色のリボンで髪を一つにまとめる。
 そして母の部屋に入ると、私は鍵付きの金庫の前に立った。

(暗証番号は四桁......零、八、二、六――)

 その瞬間カチャリ、と鍵が開いた。
 中にあったのは液体の入った小さい試験管。その中から数本選びとってカバンの中に忍ばせる。

 きっと“これ”が今回の人生で一番役に立ってくれるだろう。

 この時点で私の目的は三つだ。
 一つ目はすぐにここを出て、母に気づかれないように行方をくらませること。
 二つ目は新しく住むところと、働く場所を見つけること。
そして、最後の一つは今までで一度も望まなかったことだった。

 そう、三つ目の目的は『ミシェル・フェーブルの敵になること』

 これがこの物語を終わらせる私の最後の“諦め”だ。
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