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第一章
12.鬼執事
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馬車に揺られ、迷いの森を後にする。
そうして王都に着いた時、ベクターに「ここでいいのかい?」と聞かれて馬車を止めてもらった。ここは王都の中心にある広場、噴水公園だ。
「ありがとう、ベクター。お礼は......」
そこまで言って生憎、僕は手持ちがないのだと気づく。
しかしこんな時間のかかるとこまで運んでもらったのだ。今ここで彼をタダで返す訳にはいかない。
(あ。そうだ)
するとふいにマントから取り出した短剣をベクターは不思議そうな目で見つめる。
「生憎金貨がなくてね。これでどうかな?」
そう言って、僕は短剣の飾りとして付いてあった石を取り外した。
「おおっ、それは?」
「ルビーだよ。少し小さいかもしれないけど売ればそれなりになると思う」
(本当はもっとちゃんとお礼しないとだけど、今はそれどころじゃないから。ごめんよ)
心の中で申し訳なく思いながらも、僕はふろしき代わりにしていたマントを被る。
第二王子として顔はあまり知られていないけど、一応隠しておいた方が良いだろう。
「ま、待ってくれ。わしはここまでの物を受け取るほどのことは......む?」
その瞬間、御者が目を離した隙に青年は人混みの中に姿を消していた。
はやく、はやく。
王城まで続く石畳の階段を早足でかけ登る。
ここまで急いでここを登るのは十二歳の時、初めて城を抜け出した時くらいだ。
しばらく階段を登ると建物の隙間からふと、白い城壁が目に入る。
(やっぱ、下から見ると大きいんだな......)
首が痛くなるほど高いそれを見て、そんなふうに思う。
あれこそが僕が帰るべきミデリーの象徴、その名をクアデル城という宮殿だ。
さて、階段を登りきったら城にはどこから侵入しよう。まさか、堂々と正門から入るわけにもいかないだろうし......。
みゃあっ。
ぴょんぴょんと同じ速度で階段を登る三毛猫に癒されながらも僕はそんな風に思考を巡らせる。
正門は見張りが多い上に、死角になるところもほとんどないんだよね。
あ、それなら裏門の横にある城壁はどうだろう。
あそこなら伸びきった蔦から壁を登ることが出来るかもしれない。
「よし、裏門まで行くぞフユ!」
みゃあ。
僕の問いかけに相づちのような鳴き声を出すフユ。今日も相変わらず、賢い僕の相棒である。
そうして城壁までたどりついた僕たちがそこで目にしたのは運良く死角になる位置にいる見張りの兵士だった。
(ラッキー! 今だ!)
その瞬間、僕は隙を見て壁まで走る。
そして生い茂る太々とした蔦を掴むと、素早く上に駆け上がった。
ここまで来たら後はもう時間との勝負。
十五回ほど蔦を両手で交互に掴むと、ようやく僕の手は城壁のてっぺんに届いた。
「ふぅ......」
城壁に立つと白亜の城が間近で見える。
中まで入ってしまえば、いつも警備をかいくぐっている自分にはもう何も怖いことはないのだった。
よし、大丈夫。こっちの見張りにはバレてない。
このままこっち側の蔦を掴んで降り――ってうわっ!?
ズルッ
蔦を掴んで降りようとした時、僕は油断して足を踏み外してしまった。
やばっ......! 落ち――
みゃああっ!
「っ!」
その瞬間、フユの鳴き声にハッとした僕は間一髪の所で蔦を掴み直した。
下を見ると地面との距離はわずか数センチ。
あと数秒蔦を掴むのが遅かったら大怪我していたかもしれない。
「あ、危なかったあ」
そう言ってホッと胸をなでおろす。
しかし次の瞬間、背後から聞こえた声に僕は凍りつくことになった。
「おや、何がそんなに危なかったのです?」
(へ?)
振り返ると、そこには鬼のようなオーラを放つ燕尾服を着た老人が立っていた。
そうして王都に着いた時、ベクターに「ここでいいのかい?」と聞かれて馬車を止めてもらった。ここは王都の中心にある広場、噴水公園だ。
「ありがとう、ベクター。お礼は......」
そこまで言って生憎、僕は手持ちがないのだと気づく。
しかしこんな時間のかかるとこまで運んでもらったのだ。今ここで彼をタダで返す訳にはいかない。
(あ。そうだ)
するとふいにマントから取り出した短剣をベクターは不思議そうな目で見つめる。
「生憎金貨がなくてね。これでどうかな?」
そう言って、僕は短剣の飾りとして付いてあった石を取り外した。
「おおっ、それは?」
「ルビーだよ。少し小さいかもしれないけど売ればそれなりになると思う」
(本当はもっとちゃんとお礼しないとだけど、今はそれどころじゃないから。ごめんよ)
心の中で申し訳なく思いながらも、僕はふろしき代わりにしていたマントを被る。
第二王子として顔はあまり知られていないけど、一応隠しておいた方が良いだろう。
「ま、待ってくれ。わしはここまでの物を受け取るほどのことは......む?」
その瞬間、御者が目を離した隙に青年は人混みの中に姿を消していた。
はやく、はやく。
王城まで続く石畳の階段を早足でかけ登る。
ここまで急いでここを登るのは十二歳の時、初めて城を抜け出した時くらいだ。
しばらく階段を登ると建物の隙間からふと、白い城壁が目に入る。
(やっぱ、下から見ると大きいんだな......)
首が痛くなるほど高いそれを見て、そんなふうに思う。
あれこそが僕が帰るべきミデリーの象徴、その名をクアデル城という宮殿だ。
さて、階段を登りきったら城にはどこから侵入しよう。まさか、堂々と正門から入るわけにもいかないだろうし......。
みゃあっ。
ぴょんぴょんと同じ速度で階段を登る三毛猫に癒されながらも僕はそんな風に思考を巡らせる。
正門は見張りが多い上に、死角になるところもほとんどないんだよね。
あ、それなら裏門の横にある城壁はどうだろう。
あそこなら伸びきった蔦から壁を登ることが出来るかもしれない。
「よし、裏門まで行くぞフユ!」
みゃあ。
僕の問いかけに相づちのような鳴き声を出すフユ。今日も相変わらず、賢い僕の相棒である。
そうして城壁までたどりついた僕たちがそこで目にしたのは運良く死角になる位置にいる見張りの兵士だった。
(ラッキー! 今だ!)
その瞬間、僕は隙を見て壁まで走る。
そして生い茂る太々とした蔦を掴むと、素早く上に駆け上がった。
ここまで来たら後はもう時間との勝負。
十五回ほど蔦を両手で交互に掴むと、ようやく僕の手は城壁のてっぺんに届いた。
「ふぅ......」
城壁に立つと白亜の城が間近で見える。
中まで入ってしまえば、いつも警備をかいくぐっている自分にはもう何も怖いことはないのだった。
よし、大丈夫。こっちの見張りにはバレてない。
このままこっち側の蔦を掴んで降り――ってうわっ!?
ズルッ
蔦を掴んで降りようとした時、僕は油断して足を踏み外してしまった。
やばっ......! 落ち――
みゃああっ!
「っ!」
その瞬間、フユの鳴き声にハッとした僕は間一髪の所で蔦を掴み直した。
下を見ると地面との距離はわずか数センチ。
あと数秒蔦を掴むのが遅かったら大怪我していたかもしれない。
「あ、危なかったあ」
そう言ってホッと胸をなでおろす。
しかし次の瞬間、背後から聞こえた声に僕は凍りつくことになった。
「おや、何がそんなに危なかったのです?」
(へ?)
振り返ると、そこには鬼のようなオーラを放つ燕尾服を着た老人が立っていた。
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