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一章
5.初日
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相変わらず馬車の男は何も言わない。
あの老婆の家が私の働き先だったのではないか?違うなら私は今何処に向かっているのだろうか。
それに、御者も老婆も指輪を見た瞬間に態度が変わったような気がする。一体この指輪は何なんだろう?
指輪の内側の模様、なんだか文字みたいな感じがする。でも私は字は読めないから......。
馬車は狭い路地を抜け、広い道に出る。
下り坂から海に囲まれた街とその奥に大きな白い建物が見えた。
私は初めて見る景色に胸が高鳴るのを感じた。
スラムで生まれてスラムで死ぬだろうと思っていた自分がまさかこんな経験をするとは。
しばらくして、馬車が止まる。どうやらここが終点のようだ。
目の前にはさっき見た純白の大きな建物がそびえたっていた。その周りにはピンク色の花が咲いた木が囲むように植えられている。
(なんだこれ......城?ここが私の職場?)
面食らって呆然としていると、一人のメイド服を着た女が近づいてきた。
「あなたがフィオネね? ついてきて、時間無いから」
二十代くらいだろうか、そばかすの愛想のない淡々とした口調の女。ここの使用人だろうか?
正面玄関をぐるりと迂回して裏口から城に入る。
すぐ近くの部屋に入るとそこにはパーテーションと鏡があった。
メイドはすぐ近くにある椅子を指さした。
「私はヘリン。三十秒あげるからそれに着替えて。今日は庭の草むしりをやってもらうわ」
椅子の上にはヘリンが着ているものと同じ服が置いてある。
「何ぼーっとしてるの! 早く着替えて!」
「あっ......」
怒られたのでとりあえず急いで服を着替える。
ちゃんとした服を自分で着るのは初めてなので、袖に腕が上手く通らない。
「ちょっと、何やってるのよ」
目の前にいるつり目がさらにつりあがる。
この女は怒ることしか出来ないのか。
イライラと焦りで余計手元が狂うからやめて欲しい。
「袖はこう! ボタンは下から締めればかけ違わないわ」
テキパキとヘリンが手伝ってようやく私はメイド服を着ることができた。
「さあ、来て」
ヘリンに続くように部屋から出るとそこには四階まで天井をぶち抜いた吹き抜けのだだっ広い空間が存在していた。
床一面ツルツルした石で出来てるし、大きな噴水もあるし、天井には宝石が付いた豪華なシャンデリアが光り輝いてる。
金色の装飾を施された天使のオブジェが、天窓の日光に反射してこれでもかというくらい神々しいオーラを放っていた。
(なにこれ......。本当に現実?)
圧倒的財の暴力。その場で目が眩みそうになった。
あまりにも非日常すぎる光景に思考がストップしていたらヘリンに腕をつかまれてそのままぐいぐいひっぱられた。
長い渡り廊下を通ると、城壁から橋のようになって下に続く階段を降りる。
城の後ろは崖になっていて階段からは青い海が一望できた。下まで行くとそこには小さな中庭があった。
「ここの中庭あんまり使って無いのよね。あなたはここからあそこまでの草を全部刈るのよ。根元まで全部引っこ抜くこと、分かった?」
「ん」
「お昼になったら迎えにくるわ。サボったらご飯抜きだからね」
(ご飯......そうだご飯! 結局昨日も何も食べれなかったからお腹空いてたんだ)
カインが言うには使用人は無償で”まかない”というやつが食えると言っていたけど一体どういう食べ物なんだろう?
とにかくご飯抜きは嫌なので、私は頑張って草をむしり始めた。
あの老婆の家が私の働き先だったのではないか?違うなら私は今何処に向かっているのだろうか。
それに、御者も老婆も指輪を見た瞬間に態度が変わったような気がする。一体この指輪は何なんだろう?
指輪の内側の模様、なんだか文字みたいな感じがする。でも私は字は読めないから......。
馬車は狭い路地を抜け、広い道に出る。
下り坂から海に囲まれた街とその奥に大きな白い建物が見えた。
私は初めて見る景色に胸が高鳴るのを感じた。
スラムで生まれてスラムで死ぬだろうと思っていた自分がまさかこんな経験をするとは。
しばらくして、馬車が止まる。どうやらここが終点のようだ。
目の前にはさっき見た純白の大きな建物がそびえたっていた。その周りにはピンク色の花が咲いた木が囲むように植えられている。
(なんだこれ......城?ここが私の職場?)
面食らって呆然としていると、一人のメイド服を着た女が近づいてきた。
「あなたがフィオネね? ついてきて、時間無いから」
二十代くらいだろうか、そばかすの愛想のない淡々とした口調の女。ここの使用人だろうか?
正面玄関をぐるりと迂回して裏口から城に入る。
すぐ近くの部屋に入るとそこにはパーテーションと鏡があった。
メイドはすぐ近くにある椅子を指さした。
「私はヘリン。三十秒あげるからそれに着替えて。今日は庭の草むしりをやってもらうわ」
椅子の上にはヘリンが着ているものと同じ服が置いてある。
「何ぼーっとしてるの! 早く着替えて!」
「あっ......」
怒られたのでとりあえず急いで服を着替える。
ちゃんとした服を自分で着るのは初めてなので、袖に腕が上手く通らない。
「ちょっと、何やってるのよ」
目の前にいるつり目がさらにつりあがる。
この女は怒ることしか出来ないのか。
イライラと焦りで余計手元が狂うからやめて欲しい。
「袖はこう! ボタンは下から締めればかけ違わないわ」
テキパキとヘリンが手伝ってようやく私はメイド服を着ることができた。
「さあ、来て」
ヘリンに続くように部屋から出るとそこには四階まで天井をぶち抜いた吹き抜けのだだっ広い空間が存在していた。
床一面ツルツルした石で出来てるし、大きな噴水もあるし、天井には宝石が付いた豪華なシャンデリアが光り輝いてる。
金色の装飾を施された天使のオブジェが、天窓の日光に反射してこれでもかというくらい神々しいオーラを放っていた。
(なにこれ......。本当に現実?)
圧倒的財の暴力。その場で目が眩みそうになった。
あまりにも非日常すぎる光景に思考がストップしていたらヘリンに腕をつかまれてそのままぐいぐいひっぱられた。
長い渡り廊下を通ると、城壁から橋のようになって下に続く階段を降りる。
城の後ろは崖になっていて階段からは青い海が一望できた。下まで行くとそこには小さな中庭があった。
「ここの中庭あんまり使って無いのよね。あなたはここからあそこまでの草を全部刈るのよ。根元まで全部引っこ抜くこと、分かった?」
「ん」
「お昼になったら迎えにくるわ。サボったらご飯抜きだからね」
(ご飯......そうだご飯! 結局昨日も何も食べれなかったからお腹空いてたんだ)
カインが言うには使用人は無償で”まかない”というやつが食えると言っていたけど一体どういう食べ物なんだろう?
とにかくご飯抜きは嫌なので、私は頑張って草をむしり始めた。
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