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しおりを挟む(私とレイノが結婚?あり得ない!)
貴族令嬢として生まれたからには、望まぬ相手との結婚は覚悟していた。だから相手がデブでもハゲでも歳の離れたジジイでも受け入れるつもりだったが、この縁談だけはどうにかお断りしたい。ウィズバーテン公爵家に相応しい家門の令嬢はごまんといるのだ。必ずしも私である必要はないはずだ。
「お父様。喜んでいるところ申し訳ありませんが、この縁談は」
「そうそう。それにレイノ君と結婚すれば、お前はまだしばらく剣を持つことができるもんな!よかったな!」
「え?それはどういう……」
「ん?ほらレイノ君と結婚すればお前もウィズバーテン公爵家の一員になるだろう?そして王家にはもうすぐ学園に入学する王女殿下がいらっしゃるじゃないか」
「あ……」
王女はまもなく学園に入学し、そして学園卒業と同時に隣国の王太子である婚約者と結婚することが発表されている。王族は学園に入学する年齢になると、同性の専属護衛をつけるのが習わしで、学園内にその護衛を連れていくことが許されている。同性が選ばれるのはいついかなる場所でも対応できるようにするためだ。王女は卒業後に隣国に嫁ぐことが決まっているが、卒業までの間は当然護衛が必要になる。
「まさか……」
「お前に学園在学中の三年間、王女殿下の護衛をお願いしたいそうだ」
「そ、それは本当ですか?」
「ああ」
「っ!」
そろそろ剣を置かなければと覚悟していたのに、数年ではあるがまだ剣を持つことを許されるのだ。こんな魅力的な話はない。
(でもそれだとレイノと結婚するしかない……)
レイノとの結婚はお断りしたい。だけど護衛の話は受けたい。
「まぁ大変栄誉なことだが、その代わり王女殿下がご結婚されるまでは子を儲けることはできないがな」
「っ!それよ!」
どうしたものかと悩んでいた私は父の言葉で閃いた。
(そうよ。王女殿下の護衛は三年間。その間は間違っても子どもを作ることはできない。ということは白い結婚になるじゃない!)
白い結婚は三年経つと離婚することができる。ウィズバーテン公爵家には王女殿下の護衛となれる者がいない。だから私をレイノの結婚相手として選んだのだろう。
三年で離婚など不義理かもしれないが、 公爵家は名誉を、私は剣を持ち続ける資格を得ることができるのでお互い様だ。それにレイノも私とは結婚したくないはず。それなら三年後に離婚すればすべて丸く収まるのではないだろうか。
「三年。三年我慢すれば……」
「カレン?」
「……お父様!」
「な、なんだ!?」
「この縁談……、喜んでお受けします!」
カレン・アイラス、十九歳。
こうして私は期間限定の永遠の愛を誓い、カレン・ウィズバーテンとなったのだ。
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