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しおりを挟む『よかったら息子と勝負してやってくれないか?』
訓練場で待っていると父が客を連れてやって来て、いつもの言葉を口にした。
「カレン・アイラスと申します。よろしくお願いいたします」
今までの令嬢は全員同い年か歳上だったが、カレン・アイラスと名乗った令嬢は俺より一つか二つ歳下のように見える。この令嬢もただお遊びで剣を振り回しているだけだろう。
(こんな子ども相手じゃ……。さっさと終わりにしよう)
「はぁ。やるだけ無駄なのはわかってるから一人で剣を振ってた方がマシだな……」
俺は気だるげに剣を構えた。相手も剣を構える。
(ふぅん。構えはなかなか様になってるな。だけど……)
天才と呼ばれる俺に勝てるわけないのに、令嬢の青い瞳に闘志を感じた。
(あの目、生意気だな)
「それでは、始め!」
「仕方ないからすぐに終わらせてやる。さっさとかかってこい」
俺は令嬢に先攻を譲ってやった。先攻を譲られて負ければもうそんな目はできないはずだ。
「ではお言葉に甘えて。……いきます。はあっ!」
「っ!」
―――ガッ!カン!カン!カーン!
(なっ!)
勝負が始まった途端、目にも止まらぬ速さで攻撃を仕掛けてきた。なんとか攻撃を受け止めたものの完全に油断していた俺は続け様に攻撃され、剣を弾き飛ばされてしまった。そして気づけば首に剣を突き付けられてしまっていたのだ。
「そこまで!アイラス嬢の勝ち!」
「はぁ、はぁ……」
「……くそっ!」
(俺が負けただと……?)
いくら油断していたとはいえ、自分よりも歳下の女に負けたなんて信じられないし信じたくない。それに父は自分の息子が負けたというのに、信じられない言葉を口にした。
「アイラス嬢さえよければうちで訓練しないか?」
(うちで訓練だと?……まさかこいつが、俺の婚約者に?)
今すぐ婚約者になることはないだろうが、公爵家での訓練に参加させるということは、父はこの令嬢を認めたということ。
「はい!よろしくお願いいたします!」
これが俺のカレンとの出会いだった。
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