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私の名前はミレイア・ノスタルク。
ノスタルク公爵家の養子だ。
元々私は孤児であった。
シスターの話によると私に両親はおらず、私を孤児院に預けてきたのは、通りすがりの商人だったそう。
親がどんな人間かすら分からない、卑しい存在……それが私だ。
それでも孤児院では誰もが平等だった。
誰かに虐げられることも、暴力を振られることもない。
贅沢はできないが、それでも日々を懸命に生きていた。
しかしその生活は、突然終わりを迎えることになる。
九歳の時、ノスタルク公爵に養子にと望まれたのだ。
孤児が貴族の養子になる。
それはまたとない幸運と言えるだろう。
十六歳の誕生日になったら、孤児院を出ていかなくてはならない。
一人立ちと言えば聞こえはいいだろう。
しかし現実は学のない子どもに、まともな仕事などあるわけがなく。
残飯を食らい、泥水をすする生活が待っているだけ。
だから悩む必要なんてない。けれど私は悩んだ。
なぜなら友達との約束があったから。
少し前に別れた、大切な友達との約束。
約束が果たされるかどうかは分からない。
でも指切りをし、約束したのだ。
だからその日まで、この地を離れたくはなかった。
しかし現実は、そう甘くはない。
養子にと望んだのは、貴族の頂点である公爵家。
たとえ公爵家ほどの家でなくとも、貴族の申し出を孤児なんかが拒否できるわけもない。
結局私は養子に出されてしまった。
そしてこの出来事が、長く続く不幸の始まりである。
◇
馬車に乗り、公爵家へと向かう。
この時の私は馬車に乗るのは人生初めてで、こんな立派な馬車に私なんかが乗っていいのかと、それはそれは戸惑った記憶がある。
馬車はお金持ちが乗る物。
そう思っていたのに、そんな馬車に自分が乗っている事実がなんだか落ち着かなかった。
でも今は知っている。
立派だと思っていた馬車が、実は公爵家ではゴミ同然に扱われていたということを。
あの時にこの事実に気づいていれば、自らの立ち位置を正確に理解できただろう。
しかし当時の私は何も知らなかった。
それも当然。ただの孤児だったのだから。
孤児である私が貴族社会で生きていけるのか……。
そんな不安を抱えつつも、どこかに期待もあった。
どうして私が選ばれたのかは分からない。
けれど公爵が、私を養子にと強く望んでくれた。
もしかしたら、こんな私にも家族ができるのかもしれない。
しかしそんな愚かな期待は、公爵家にたどり着いてすぐに砕け散ることになる。
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