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それからすぐに第一皇妃が宰相の名前を口に出したので騎士団に捕縛命令を出した。父と母は無事解毒に成功したが絶対安静で休んでいる。お姉様も気絶したまま、双子はまだ幼いので私が指揮を執っている。ちなみに兄は十八歳になると同時に婚約者である侯爵令嬢と結婚し、さっさと臣籍に下っていったためすでにもう皇族の籍からは抜けている。だから動けるのは私しかいないのだ。
そして捕らえられた宰相はすでに正気ではなかった。
「あっはははは!皇帝と皇后は死んだっ!これで私の血を引く子が皇帝にっ、この国の頂点に立つのだっ!あとは息子とマリアンヌ皇女との間に子が生まれればっ!あぁそうだった!まだ邪魔な皇子と皇女がいたな!あいつらにも毒を…!な、なにをするっ!うー!うー!」
「申し訳ございません」
「いえ構わないわ」
宰相に猿ぐつわをして静かにさせた。騎士団長は申し訳なさそうに謝ってきたが正気ではない者が相手なのだ。仕方がない。
「とりあえず落ち着くまでは取り調べは難しいでしょうから、騎士団はロイガール公爵邸とバスピア侯爵家を捜索して。それとロイガール公爵子息とバスピア侯爵も見つけ次第捕縛しなさい」
「はっ!」
「あとマリアンヌお姉様の部屋には誰も通さないように騎士たちに通達して」
「かしこまりました」
そこからはあっという間だった。
すぐにロイガール公爵子息とバスピア侯爵は捕まった。どうやら皇帝と皇后に毒を盛った事件は宰相の独断だったようで、なぜ自分達まで捕まるのかと騒いでいた。だが今回のことだけではなく宰相の計画に荷担していたことは明らかで、そこを突けばボロボロと知っていることを話し始めた。おそらく素直にしゃべれば罪が軽くなると思ったのだろう。そんなはずないがあえてそのことには触れず取り調べを行っていった。
第一皇妃の取り調べでは、
「私はあの酒に毒が入っているなんて知らなかったのよ!宰相からは下剤が入っているだけとしか聞いてないもの!最近ちょっとイライラしてたから面白いものが見れると思っただけなの!だから私も宰相に騙された一人なのよ!分かったなら早くここから出してっ!」
知らなかったとしてもさすがに皇帝と皇后に毒を盛った張本人であるため貴族牢ではなく地下牢に収容されている。おそらく二度とここから出られることはないだろう。
それと娘であるマリアンヌお姉様も皇帝の後継の座を剥奪された。さらに今回のことは知らなかったにせよ宰相の計画自体は知っていたのに止めもせず、国の危機を招いたとして皇族の籍から抜かれ規律の厳しい修道院へと送られた。修道院があるのは痩せた土地で、そこでは毎年亡くなる人が後を断たないとか。
バスピア侯爵家は取り潰しとなり、バスピア侯爵自身は毒杯を賜った。
お兄様も取り調べに応じたがすでに臣籍降下して皇族の籍を抜けていること、宰相の計画に荷担していなかったことが証明され罰されることはなかった。お兄様は賢い人だったから幼い頃から宰相たちとの関わりを断ち、さっさと皇室から出ていったのだと私は思った。
そして元宰相であるロイガール公爵と公爵子息は反逆の罪で公開処刑される予定だ。敵国と密かに通じ、さらには皇帝と皇后を殺そうとしたのだ。最終的にはお姉様と公爵子息の子を皇帝にして実権は公爵が握るつもりだったようだ。実際には未遂であるがそのような企てをした時点で大罪だ。それもこの国の中心にいた宰相ともなればさらに罪は重い。ロイガール公爵家もバスピア侯爵家と同じく取り潰され、公爵家の血を引く者は幼いこどもを除き全員が毒杯を賜ったのであった。
その後無事に回復した父と母と話し合い、私の十八歳の誕生日に合わせて父は退位し私が新たに即位することが決まった。
レイとリーナはまだ七歳。どちらが皇帝になるにしても成人を迎える十八歳まではまだ十年以上ある。二人が無事に十八歳を迎えるまでこの国を今よりも平和で豊かな国にしていくのが私の中継ぎの皇帝としての務めだ。
ただ即位後最初の大きな仕事は公開処刑という重いものになるだろう。だけどこの仕事を全うした時、私のやり直しの人生は終わりを迎える。その後は私もまだ知らない世界が待っているのだ。
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「――これより刑を執行する!…執行せよ!」
皇帝の声に合わせ刃が罪人の首に落ちた。
――ウワァァァァ!
「…これで終わったわ」
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