伯爵令嬢シェリア・ハジェットの夢~はじうま令嬢は、舞台の上で輝きたい~

Na20

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 学年は同じだけど、彼女とはこれまで特に接点はなく、遠くから姿を見かけたことがある程度。
 ルース様の件はあったけど、私にとっては悪女と呼ばれる彼女はある意味救世主で。
 だから私は彼女に恨みを抱いていないし、むしろ感謝しているくらいだ。

 そして今、そんな人が目の前で泣いている……余計なお世話だと言われるかもしれない。
 それでも泣いている人を放ってはおけない。
 それにあの涙は本物だ。決して演技ではない。
 彼女に言いたいこともあるし……よし。


「あの、大丈夫?」

「っ!」


 わっ。近くで見るのは初めてだけど、本当に綺麗な子だ。
 たしかにこんな綺麗な子から好意を寄せられたら、気持ちが靡いてしまうのは分からなくもない。
 まぁ彼女は自分の美貌を分かって、わざとやっているんだろうけど。


「な、何?……ってあなた」


 おお。一瞬で涙を隠したよ。すごい。
 目が少し赤いから泣いてたのは間違いないけど、こんな自然に隠せるなんて……。
 彼女は演技しなれている?


「あっ、ごめんなさい。急に話しかけて驚かせちゃったわね」

「……あなたも私に文句でも言いに来たの?」

「え?違うけど」

「えっ……嘘よ。だって私はあなたの婚約者を奪ったのよ」


 違うとハッキリ言ったけれど、信じてもらえなかったようだ。


「私はただあなたが泣いていたから気になって声をかけただけよ」

「っ!……だから?悪女が泣いていたって馬鹿にでもするつもり?」


 なんだか警戒しているみたい。
 彼女が悪女?むしろ威勢をはった子猫のように見える。


「馬鹿にするつもりはないわ。むしろ私はあなたに感謝しているの」

「は?感謝ですって?何をふざけたことを言って」

「私はずっと婚約解消したいと願っていたの。そうしたらその願いをあなたが叶えてくれた。だからね……」

「ちょ、ちょっと何」


 彼女の手を握り、目を見る。そして……


「本当にありがとう。あなたのおかげで毎日が輝いているわ」


 彼女のしたことはたしかに褒められることではない。
 彼女にも何か事情があったのかもしれないが、たくさんの人が傷ついたのも事実。
 でもそれは他人の話であって私の話ではない。
 私がこうして毎日夢に向かって進んでいけるのは、間違いなく彼女のおかげ。


「~~っ!」

「中にはこういう人間もいるからあまり思い詰めないでね。……まぁ私なんかに言われても嬉しくないだろうけど」


 きっと彼女だって、私がはじうま令嬢って呼ばれているのは知っているだろうし。
 そんな私がいつか国一番の役者になったら、彼女も驚くかな?
 ふふっ、きっと彼女は驚いた顔も美しいだろうね。

 涙の理由は聞かない。
 親しい間柄でもないし、私はそう思っていなくても、周りから見れば被害者と加害者だしね。

 でも実際に話してみたら、彼女は本当にみんなが言うような悪女には見えなかった。
 まるで自分を守るために必死な……。
 なんだか以前の自分と重なって見える。
 だからかな。何かしてあげたいと思うのは。

 ……そうだ。あの言葉を贈ろう。
 初めて主演した舞台での最後の台詞。
 この言葉が少しでも彼女に届きますように。


「『明けない夜はないわ』」

「!」

「『だから笑って』」

「あなた……」

「それじゃあ私は行くわね」


 これからは人様の恋路を邪魔なんてしていないで、自分の道を進んでいって欲しいものだ。


「あ、ちょっと……!今のって……」

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