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しおりを挟む私は前世の記憶があるからか貴族や平民などの立場で人生を左右されるのは嫌だと思うのだ。婚約破棄されるまではこれは貴族として生まれた義務だと思って我慢していたが、今の私は自由なのだ。ただ私が自由だからと言って団長様が同じだというわけではない。貴族であり騎士団長なのだ。
自由な平民の私と貴族で騎士団長のイシス団長様。二人が一緒にいるためには乗り越えるべき壁があるのだ。
それにまだ私は自分の出自や過去など伝えなければならないことがある。隠すこともできるができれば隠したくはない。好きな人には誠実でいたいと思うのだ。
「…」
「どう、ですか?」
団長様からの反応が無いことに不安になるが、ここでダメなのならそれまでの関係だったと割り切るしかない。そう思って待っていると団長様が口を開いた。
「…自分が情けない」
「え?」
「ルナ殿は色々考えてくれているのに私はそこまで考えが及んでいなかった。ルナ殿に気持ちを伝えただけで満足してしまっていたんだ」
「団長様…」
「だけどそれではダメだと気づかされた。それに私ももっとルナ殿のことを知りたいんだ。…だからまずは私と友達になってくれ」
「!」
「たくさん話をしてお互いを知って、そしてこれから共に歩める道を一緒に探してくれないか?」
「っ!はい!」
団長様が私に近寄り手を差し出してきた。
私はその手に自身の手を重ねる。
「これからよろしく頼む」
「こちらこそよろしくお願いします!」
お互いに大人なのでこの流れなら抱きしめ合ったとしても何らおかしくないかもしれないがただの握手だけだ。だが恋愛初心者の私にはちょうどいい。それにもしかしたら団長様も同じなのかもしれないと、ふとそんな考えが過ったのだった。
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