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 屋敷の門をくぐり入り口の扉の前にたどり着くと屋敷の使用人が私達を待っていた。


「お嬢様お待ちしておりました。お客様もようこそいらっしゃいました。ご案内いたします」

「ええ、ありがとう」

「よろしく頼む」


 使用人に付いていくと案内されたのは応接室ではなくなぜか訓練場だった。なぜここにと思って訓練場に目をやるとど真ん中で父と兄が待ち構えている。


 (これは…)


 すると訓練場の入り口にいた母に声をかけられた。


「ルナよく来たわね!会えて嬉しいわ!あら、あなたがルナの言っていた方ね。初めましてルナの母です」

「初めまして。イシス・ロイガートと申します。こちらこそお会いできて嬉しいです」

「お母様、ご無沙汰しております。それでえーっと、あの二人は…?」

「ああ、私は止めたのよ?でもどうしてもって聞かなくってね。ルナのお相手は俺達と互角か倒せるくらいじゃないと認められないって言うのよ。だからイシスさん、悪いんだけどあの二人の相手をしてあげてくれないかしら?見たところあなた相当腕が立ちそうだしね」

「やっぱり…」


 手紙に書いてあった『待っている』とはこういうことだったのだろう。
 オーガスト辺境伯家は武家の名門だ。だからなのか代々脳筋が多い家系でもある。父は当主としての自覚がある分理性的な脳筋であるが兄は完全にそれだ。こうなってしまえば実力で黙らせるしか方法はない。それにこれも私を想ってのことだと分かってはいるので、余計な口出しはしないでおいた方がいいだろう。


「イシスさんどうされます?」

「もちろん受けて立ちます。そしてお二人に私のことを認めてもらいます」

「うふふ、決まり。彼女の家族だから~とかいう気遣いは不要よ。本気で相手してあげてちょうだいね」

「分かりました」

「じゃあ中に入りましょう」


 訓練場へと足を踏み入れ父と兄が待つ場所へと向かう。父と兄は訓練着に身を包み腰には模擬剣を下げている。真剣ではないことに多少安心はしたものの、父や兄のレベルなら模擬剣でも相手に致命傷を負わせることは可能だ。どちらにしても油断は禁物である。


「君がルナリアの…」

「お初にお目にかかります。ライージュ国ロイガート公爵家の」

「待て。名乗らなくて結構だ。勝負に名は不要!必要なのは己の力だけ!」

「ちょ、ちょっとお父様!」

「ルナリア、これは男同士の大切な会話なんだ。いくら可愛い娘の頼みでもこれは譲れない」

「そうだよ。俺達は彼がルナに相応しい男か見極めなければならないんだ」

「お兄様まで…」

「ルナちゃんここは黙って見守りましょう」


 さすが脳筋と言うべきなのか、これはお母様の言う通り黙って見守るしかないようだ。


「…分かりました」

「では早速始めるがいいか?」

「はい、構いません」

「よし。まずはラスターとだ。勝負はどちらかが動けなくなるか急所に剣を突きつけられるまでとする。剣のみの使用を認め、魔法の使用は禁止だ」

「分かりました」


 そう言ってイシス様は上着を脱いで動きやすい服装になった。そして母から模擬剣を渡された。


「頑張ってちょうだいね」

「ありがとうございます」

「イシス様。イシス様が強いことはもちろん知っていますが父も兄もかなりの手練れです。模擬剣ですが油断しないでくださいね」

「ああ、気をつける。ありがとうルナ」

「ゴホン。では始めようか」
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